とくはつせいさいきんせいふくまくえん

特発性細菌性腹膜炎

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

特発性細菌性腹膜炎とは、明らかな外科的な疾患がない状態でも発症する腹膜炎です。代表的には肝硬変をベースに発症する腹膜炎であり、免疫機能が衰えることで腹腔内に細菌が侵入することから発症します。

肝硬変の経過中に特発性細菌性腹膜炎が発症すると、生命予後が著しく低下することが知られています。肝硬変では感染症に対しての予備能力は高くなく、特発性細菌性腹膜炎を発症することで1年後の死亡率は70パーセント近くにまで昇るとの報告もあります。

特発性細菌性腹膜炎では発熱や腹痛、黄疸などの症状がみられます。大腸菌を代表とする腸管内常在菌が原因になることが多いため、原因菌に対して効果のある抗生物質投与を行うことが治療の中心になります。生命予後にかかわる疾患であることから、早期に病気を発見し、適切な治療につなげることが必要不可欠です。
 

原因

特発性細菌性腹膜炎は、主には肝硬変をベースに持つ状況で発症する腹膜炎です。

肝機能が著しく低下した肝硬変が存在すると、腹水が貯留しやすい状態となり、さらに、腸内細菌叢が健康時と比べて変化していたり、免疫機能も変化したりしています。
通常であれば腸管壁を通して細菌が血液中に侵入したとしても、免疫機能が適切にはたらくことで大事に至ることはありません。しかし、肝機能が著しく低下した状態では、うまく血液中の細菌を排除することができなくなり、腹水へと細菌が移り込むきっかけが増えます。特に肝硬変に伴う腹水は、細菌を排除できるような免疫能もないため、一度細菌が入り込むと、細菌の増殖を容易に許してしまい、腹膜炎の発症に至ります。

特発性細菌性腹膜炎の原因は、大腸菌を筆頭としてクレブシエラ、連鎖球菌など多岐にわたります。なお、肝硬変のなかでも、ウイルス性肝硬変よりもアルコール性肝硬変において特発性細菌性腹膜炎の合併率が高いことが知られています。
 

症状

特発性細菌性腹膜炎では、発熱や腹部症状が出現します。腹部症状としては腹痛や下痢、お腹の圧痛などがみられます。もともと肝機能が大きく低下している状況において発症することが多い病気なので、もとの肝機能状況を反映して黄疸を認めることもあります。

また、潜在的にゆっくりと病状が進行することもあれば、急激な経過から病気の発症に至ることもあります。突然の低体温や低血圧肝性脳症(見当識障害や昼夜逆転の症状など)の増悪などがみられることもあるため注意が必要です。
 

検査・診断

特発性細菌性腹膜炎の診断に際しては、腹水検査を行います。腹水を用いて細胞数、総タンパク質、アルブミン、LDH、などの測定および細菌培養検査を行いますが、なかでも細胞数(特に好中球数)の検討は特発性細菌性腹膜炎の診断では重要です。

特発性細菌性腹膜炎は腹水における細菌感染が原因となって発症する病気ですので、培養検査を行うことで原因菌を同定します。しかし実際には原因となる菌が必ずしも同定できるわけではありません。

なお、同じく腹膜炎を来たす疾患として、消化管穿孔などの外科的疾患もあります。そのなかには、胃潰瘍の穿孔、急性虫垂炎の破裂、憩室炎、腸管の悪性腫瘍、腸捻転や腸間膜動脈血栓症などによる腸管壊死、急性膵炎などの腹腔内感染巣(消化管穿孔など)により生じる腹膜炎(二次性細菌性腹膜炎)があります。
画像検査を駆使しながら、こうした外科疾患である可能性を除外することも大切です。
 

治療

特発性細菌性腹膜炎は、細菌感染を原因として発症する病気であるため、抗生物質の投与により治療を行います。なかでもセフェム系と呼ばれる抗生物質を点滴にて投与することで、急性期の感染コントロールを図ります。腎機能の程度や肝障害の程度によっては、アルブミン製剤を投与することも検討されます。

肝硬変の病状が重篤な場合には、上部消化管出血等を契機にして特発性細菌性腹膜炎が発症することもあります。そのため、特発性細菌性腹膜炎の発症を予防することを目的としてニューキノロン系抗生物質の予防投与が行われます。

また、特発性細菌性腹膜炎は、一度発症すると死亡率が著しく高いことが知られています。そのため普段からの肝硬変に対してのコントロールを良好にすることで、特発性細菌性腹膜炎の発症リスクを低くするという視点も重要です。また、病気の発症を早期に察知し、早期の段階から適切な治療介入を行うことも、予後をよくするためには重要でしょう。
 

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