インタビュー

門脈圧亢進症の原因・症状

門脈圧亢進症の原因・症状
石川 剛 先生

山口大学 大学院医学系研究科消化器内科 講師

石川 剛 先生

この記事の最終更新は2018年03月04日です。

門脈圧亢進(もんみゃくあつこうしん)とは、肝臓に注ぐ“門脈”という血管の血圧が上昇した状態をさし、それによって引き起こされるさまざまな症状のことを門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)といいます。門脈圧亢進症の原因と症状について、山口大学医学部附属病院の石川 剛(いしかわ つよし)先生にお話を伺いました。

腸管からの血流と脾臓(ひぞう)からの血流が合わさって肝臓に流れ込む太い血管を“門脈”と呼びますが、門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)とは、何らかの原因で門脈の血流が滞り、その血圧が上昇することによって生じるさまざまな症状をさします。

門脈圧亢進症の主たる原因は肝硬変で、その約8割を占めます。残りの約2割は、特発性門脈圧亢進症、肝外門脈閉塞症、バッド・キアリ症候群などの比較的まれな疾患が原因とされます。

肝硬変

肝炎ウイルス、アルコール、脂肪肝などが原因で、文字通り“肝臓が硬く変わる”病気(それによって肝臓への血流が滞り、門脈圧が上昇する)

特発性門脈圧亢進症

肝硬変、肝外門脈閉塞、肝静脈閉塞、およびその他の原因となるべき疾患が認められないにも関わらず、門脈圧が上昇する原因不明の病気

肝外門脈閉塞症

肝臓外の門脈が閉塞することで肝臓への血流が滞り、門脈圧が上昇する病気

バッド・キアリ症候群

肝静脈(肝臓から出る静脈)や肝部下大静脈(肝静脈から心臓へつながる静脈)の狭窄あるいは閉塞によって肝臓への血流が滞り、門脈圧が上昇する病気

門脈圧亢進症の約8割は、肝硬変が原因であるとお話ししました。肝硬変のおもな成因は以下の通りです。

近年の治療薬の開発・進歩によって、ウイルス性肝炎による肝硬変の中には病気の進行を抑制できる症例も増えてきました。

一方で、アルコール関連の肝硬変は未だ減る兆しはありませんし、食生活の欧米化やライフスタイルの変化などによって、NASHを原因とする肝硬変は増加の一途を辿っています。

門脈圧亢進症では、種々の原因で上昇した門脈圧を分散させようとする“生体の適応”によって、以下の症状があらわれます。

腹水とは、タンパクを含む体液が腹腔内に貯留した状態です。腹水が大量に貯まると腹満感が強くなり、呼吸困難や体動困難を訴えることがあります。

静脈瘤とは、こぶ状に腫れた血管が食道や胃の中に膨れ出したものです。

もともと門脈系の血管(門脈・脾静脈)と食道や胃の周りの血管は細々とつながっていますが、門脈圧が高まることによって本来肝臓に流れ込むべき大量の血液が食道や胃の血管に迂回することで、もともと細い血管がこぶ状に膨らみます。

食道静脈瘤と胃静脈瘤は似て非なるものです。胃静脈瘤は食道静脈瘤に比べて出血率が低いと言われていますが、血流量が多いため一旦出血すると止血が難しく命にかかわるケースもあります。

門脈圧の上昇によって、脾臓から肝臓に流れ込む血流が滞ると、脾腫(ひしゅ:脾臓の腫れ)や脾機能亢進(ひきのうこうしん:脾臓が過剰に働く)が起こります。すると、血球成分を溜め込んで壊すという脾臓の働きが過剰になり、血球(おもに血小板、そのほかに白血球など)が減少します。

血球減少は、全身の倦怠感や出血傾向(血が止まりにくくなる)、貧血などの症状を引き起こすことがあります。

体内で生成された毒素の多くは、肝臓で解毒されます。たとえば腸内細菌から発生した有毒なアンモニアは、門脈血流にのって肝臓に流れ込み、尿素という無毒な成分に変化します。

ところが、門脈圧が上昇すると、その圧を逃がすために肝臓を経由しない血流が発生し、アンモニアなどの毒素が解毒されないまま全身に流れ出します。すると、初期なら判断力や思考力の低下を、重症化すると意識障害や昏睡などを引き起こします。この症状を肝性脳症といいます。

門脈圧亢進症は、軽症の場合自覚症状はほとんどありませんが、いずれの症状もある程度進行してから明らかになってきます。たとえば腹水に関しては、見た目でわかるくらいお腹が膨らんでくれば、本人だけでなく周囲もその異変に気付きます。一方、静脈瘤では、その膨らみが大きくなっても食べ物の通過障害をきたさず、破裂した時にのみ吐血(口からの出血)や下血(肛門からの出血)として症状を呈します。

このように、門脈圧亢進症のほとんどは自覚症状がないまま進行していくため、定期的に検査・検診を行い、早期に発見することが重要です。

門脈圧亢進症の検査や治療については、記事2『門脈圧亢進症の検査・治療』をご覧ください。

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