概要
非アルコール性脂肪性肝炎とは、アルコールや肝炎ウイルスへの感染といった原因がないにもかかわらず、肝臓に脂肪沈着、炎症、線維化といった変化を生じる病気です。NASHと呼称される場合もあります。
従来までは、アルコール摂取や肝炎ウイルスに関係した肝障害に注目が集まることが多かったのですが、近年では日本においても非アルコール性脂肪性肝炎に対する認識が高まってきました。
原因
非アルコール性脂肪性肝炎は、アルコール摂取や肝炎ウイルス感染などの、従来からいわれていた肝障害の原因とは関係がありません。非アルコール性脂肪性肝炎は、肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病と密接に関連しています。
生活習慣病が背景にあると、インスリン抵抗性と呼ばれる状態が引き起こされます。インスリンは、血中の糖分を細胞がエネルギーとして活用するためには必須のホルモンですが、特に生活習慣病においてはその効きが悪くなってしまうことがあり、このことをインスリン抵抗性と呼びます。
インスリン抵抗性があると血液中の糖分が高くなり、糖分は脂肪として肝臓に蓄積されるようになります。その後、徐々に脂肪肝、肝臓の炎症、線維化などといった変化が進行し、非アルコール性脂肪性肝炎が発症すると考えられています。
その他のまれな原因としては、急激な体重減少、薬剤(たとえばステロイドなど)なども挙げられます。
症状
非アルコール性脂肪性肝炎は、自覚症状に乏しいことが特徴的です。特に病初期の段階では全くといってよいほど症状はなく、健康診断やその他の理由で診察を受けるなかで指摘されることもあります。
進行すると、肝炎、肝硬変、肝がんなどを発症する可能性があります。病状の進行とともに、疲れやすい、だるい、といった症状や、右上腹部の痛み、腹部膨満、黄疸などが出現することがあります。
その他にもホルモンバランスの影響から、くも状血管腫と呼ばれる皮膚病変が生じたり、男性であれば乳房が腫れたりすることもあります。また、肝硬変に関連して食道静脈瘤が形成されることがあり、吐血を来すこともあります。
検査・診断
非アルコール性脂肪性肝炎は無症状のまま進行する病気であるため、検査を通して早期発見につなげることが期待されます。具体的に行われる検査としては、血液検査(肝機能を評価します)、超音波検査・CT・MRIなどの画像検査があります。また、正確に診断するために、肝臓の細胞を一部採取(肝生検)して顕微鏡で確認します。
治療
非アルコール性脂肪性肝炎は生活習慣病と深く関連した病気であるため、生活習慣病に対してアプローチすることが重要です。具体的には適度な運動、食生活の改善、適切な体重コントロールなどを行います。糖尿病や高脂血症、高血圧などに対して、それぞれ薬物を用いてコントロールを図ることもあります。
症状がほとんどないまま進行する非アルコール性脂肪性肝炎ですが、早期に治療介入を行うことがとても重要です。
医師の方へ
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