概要
くも状血管腫とは皮膚にできる赤い皮疹で、中心部から毛細血管が放射状に広がる様子が“クモの脚”のように見えることが特徴です。皮疹は顔や首などにできやすく、中心部に触れると拍動を感じられることがあります。
くも状血管腫は、肝硬変を発症している人や妊娠中の人、経口避妊薬を内服中の人などに多発することから、女性ホルモンが関連していると考えられています。しかし子どもや健康な成人に発症することもあり、こうした場合の原因は不明です。
子どもや健康な成人に現れる皮疹は1個〜少数に留まるのに対し、肝硬変や妊娠中の人、経口避妊薬を内服中の人では多発する傾向にあります。
くも状血管腫を発症しても、多くの場合自然に治癒することから特別な治療は行われません。しかし、見た目が気になるなどの理由で治療を希望する場合には、レーザー治療などが考慮されます。
原因
くも状血管腫が生じるはっきりとした原因は分かっていません。
しかし、くも状血管腫はしばしば皮膚の薄い人にみられるほか、肝硬変などの肝障害を発症している人や経口避妊薬を内服中の人、妊娠中の人では多発することがあります。肝臓は女性ホルモンを代謝(分解)する働きがあるため、肝臓機能が障害されると血液中の女性ホルモン濃度が高くなるといわれています。そのため、くも状血管腫の発生には女性ホルモンの1つである“エストロゲン”の上昇が関連しているとも考えられています。
一方、子どもや健康な成人でもくも状血管腫がみられることがありますが、この場合の原因については分かっていません。
症状
くも状血管腫では、赤く盛り上がった1〜3mm程度の皮疹が現れ、これを中心に毛細血管が放射状に広がる様子がみられます。皮疹の中央部は動脈のため、触れると拍動を感じることもあります。なお、皮疹は特に顔や首など上半身にできやすいことも特徴です。
皮疹は子どもや健康な成人の場合には1個〜少数で、肝硬変を発症している人や経口避妊薬を内服中の人、妊娠中の人では数多くみられることがあります。さらに、肝硬変や妊娠に伴ってくも状血管腫を認める場合には、手のひらが赤くなる“手掌紅斑”を合併することもあります。
検査・診断
くも状血管腫は、見た目が特徴的なため視診のみで診断できますが、原因となる病気があるか確認するために、成人で皮疹が多発している場合は血液検査を行って肝機能の数値を調べたり、女性では妊娠検査を行ったりすることがあります。通常、子どもで皮疹の数が少ない場合には特別な検査は行われません。
最近では、放射状に配列する血管をより詳細に観察するために、ダーモスコピーという拡大鏡のような診療器具が用いられることがあります。
治療
くも状血管腫では、症状や患者の希望によって治療方法が異なります。
子どもや年齢が若い人、妊婦では多くの場合は自然に消失するため、通常特別な治療は行われません。しかし、見た目が気になるといった理由から治療を希望する場合には、皮疹の中心に細い針を刺して電気で焼く治療やレーザー治療などが行われます。レーザーは数種類ありますが、一般的には色素レーザーが用いられます。新しい種類のレーザーが利用可能となることもあるため、医師と相談のうえ治療方針を決めるとよいでしょう。
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