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NASH研究の最前線を解説――NASH・NAFLDと生活習慣病との関連や、原因遺伝子の解析は?

NASH研究の最前線を解説――NASH・NAFLDと生活習慣病との関連や、原因遺伝子の解析は?
[医師監修] メディカルノート編集部

[医師監修] メディカルノート編集部

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進行すると肝硬変や肝臓がんへと移行してしまう脂肪肝。そのなかでもアルコールが原因とならない病気は“非アルコール性”と呼ばれており、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)やNASH非アルコール性脂肪性肝炎)といった病態が知られています。これらはメタボリックシンドロームの患者さんが増加してきたことに伴い、それに併発する病気として注目されるようになり、その発症原因や原因遺伝子、治療法に関する研究が盛んに行われています。

本記事ではNAFLD・NASHの治療・研究について解説します。

いま研究が盛んに進んでいるテーマとして“NAFLD・NASH生活習慣病の関連について”が挙げられます。

NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓の表現型といわれており、生活習慣病を高率に合併します。「肝臓の病気だ」と捉え、生活習慣病との関連にあまり着目しない方もいらっしゃいますが、生活習慣病を合併している方では、NAFLD・NASHを発症している方が多いため注意が必要です。

NASH糖尿病は、非常に複雑に絡み合っている関係であると考えています。

過去に日本糖尿病学会から、糖尿病患者さんの死因に関する調査の発表がなされました。その結果を見てみると、いくつか挙げられたがんによる死因の中でも“肝臓がんによる死因”がトップになっていました。

一般的に日本人はがんで亡くなる方が多いとはいえ、死因の上位に挙げられるのは肺がん胃がん大腸がんであり、肝臓がんは4位か5位です。では、なぜ糖尿病患者さんの死因では肝臓がんが上位になるのでしょうか。その理由には、糖尿病患者さんにはメタボリックシンドロームの方が多く、NASHを含めた脂肪肝を合併している方もかなり多いということが大きく影響を及ぼしていると考えられます。

こうしたことから、糖尿病の患者さんのがん死因上位である肝臓がんでは、NASH肝臓がんが多数を占めていると推測できます。糖尿病患者さんでは肝機能障害を呈する患者さんが多くいらっしゃいます。そのことを踏まえ、厚生労働省NASH研究班によって、糖尿病であり肝機能異常を呈している患者さんにどういった肝炎が多いかを調べる研究が行われたところ、糖尿病患者さんはウイルス性肝炎の罹患率が高く、多量飲酒者はそこまで多くないことが分かりました。このことから、糖尿病の患者さんではアルコール性の肝障害の方はあまり多くなく、非アルコール性脂肪肝、つまりNAFLDのほうが多いのだと考えられます。

さらに肝障害、特に肝臓がんで死亡するケースはB型肝炎C型肝炎アルコール性肝障害が元となっている場合が中心ですが、糖尿病患者さんに限って見てみるとまた違った事実が見えてきます。約5,000人の糖尿病患者さんを対象とした研究では、対象患者さんのうち肝機能障害を持つ方の割合は約3割でしたが、その3割の患者さんのうちB型肝炎・C型肝炎・飲酒する方はほとんどいなかったことが明らかになったのです。つまり、糖尿病患者さんで肝機能障害を持つ方のほとんどはウイルス性でもなく、アルコール性でもない、非アルコール性の脂肪肝であった可能性が高いといえるでしょう。そう考えると、糖尿病の患者さんの中には確かにウイルス性肝炎の方も多数いらっしゃると考えられますが、主な原因としてNASHもしくはNAFLDがあるのではないかとも考えられます。

過去の研究では、糖尿病患者さんは心筋梗塞などの心疾患による死亡リスクが高いと考えられてきました。しかし、最近の研究により、心疾患による死亡リスクは低下しつつあることが分かってきています。

この研究では、2013年に『Journal of Gastroenterology』に登録された日本人2型糖尿病患者さんの5年間にわたる追跡調査中に、患者さんの総死亡リスクおよび原因別の死亡リスクを評価しました。ここでは、2019年1月に同誌に掲載された内容の概略をご説明します。

糖尿病患者さんにおける心疾患・肝臓がんの死亡リスクの変化

上図は、一般の方における心疾患・肝臓がんによる死亡リスクを1としたとき、糖尿病の患者さんの死亡リスクが何倍であるかをグラフ化し、2000年頃と2010年頃のそれぞれの死亡リスクを比較したものです。図からも明らかなように、2010年では心疾患による死亡リスクは男女ともに低下しています。

糖尿病の患者さんの心疾患による死亡リスクが低下した理由は2つ考えられます。第一に、心疾患に対する治療法の進歩です。次に、糖尿病による心疾患の発症リスクが広く認知されたことにより、糖尿病専門医が患者さんの心臓の状態に注意を払っているため、見逃しが少ないことが挙げられます。このため、糖尿病の患者さんにおける心疾患の死亡リスクは、一般の方とほとんど変わらなくなってきているのです。

これに対して、糖尿病の患者さんの肝臓がんによる死亡リスクは、依然として高いままです。

糖尿病患者さんの死亡リスク

上図は、約4,000人の糖尿病患者さんを対象に行った5年間の追跡調査で、一般の方のがんによる死亡リスクを1.0としたときの糖尿病患者さんの死亡リスクを、標準化死亡率比(SMR)を計算して比較した結果です。

この結果、糖尿病の患者さんでは、5大がん(胃がん大腸がん、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、肺がん)のうち、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんの死亡リスクが一般の方に比べて明らかに高いことが分かりました。また、そのうち、肝臓がんの死亡リスクは3.6倍と、5大がんの中でもっとも上昇することが明らかにされました。ここから、肝炎ウイルス感染による肝障害の可能性を除外するために、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎ウイルス抗体が陽性のケースを補正してさらに分析を行いましたが、死亡リスクは2.5倍とやはり高い結果になりました。

本研究で調査を行った集団にはアルコール性肝障害の患者さんが含まれていますが少数の患者さんのみです。また、先ほどご説明したとおり、肝炎ウイルス感染の可能性を調整した分析でも死亡リスクが有意に高くなりました。アルコールとウイルスの要因を除外しているにもかかわらず、なぜ糖尿病の患者さんは、肝臓がんによる死亡リスクが高いのでしょうか。

それは、糖尿病の患者さんにはNASHによる肝臓がんが多いためであると考えられます。つまり、今回調査を行った集団に、NASHが進行して肝硬変をきたしている方が含まれていたということです。

血小板数による死亡リスク

前項で、糖尿病患者さん全体の肝臓がんの死亡リスクは3.6倍であったとご説明しました。ここから、患者さんの血小板数によって、さらに死亡リスクが高い方を抽出することが可能です。

本研究では、糖尿病患者さんを、血小板数が20万以下のグループと20万より高いグループに分類し、さらにグループごとに死亡リスクを調べました。この結果、血小板数が20万以下のグループは、肝臓がんによる死亡リスクが6.6倍(ウイルス感染の可能性を補正した場合は4.5倍)になることが分かりました。

今回の研究で調査を行った4,000人の糖尿病患者さんのうち、約40%が血小板数20万以下のグループに分類されました。つまり、糖尿病患者さんのうち約4割の方は、一般の方の6.5倍ほど肝臓がんによる死亡リスクが高いということができます。

このような結果から、血小板数が20万以下の糖尿病患者さんには、腹部超音波検査を定期的に行い、肝臓の状態をしっかりと観察する必要があると考えます。

一方、血小板数が20万よりも高い糖尿病患者さんのグループでは、肝臓がんの死亡リスクは一般の方とほとんど同じという結果が出ました。これは、血小板数が20万よりも高い場合は肝臓の線維化が進行していないため、肝硬変をきたしている可能性が低いからだと考えられます。

つまり、肝臓がんの死亡リスクがより高い糖尿病患者さんをスクリーニングするためには、血小板数が20万以下であるかどうかを見ることが重要になるのです。

FIB-4 indexによる死亡リスク

さらに、FIB-4 indexが2.67以上の糖尿病患者さんは、肝臓がんの死亡リスクが14倍にまで上昇することが明らかにされました。

【FIB-4 indexの計算式】

FIB-4 index=(年齢×AST)/(血小板数×ALT^1/2)

FIB-4 indexは、AST・ALT・血小板・年齢によって計算することができる数値で、肝臓の線維化の程度を予測することができます。一般的にはFIB-4 indexが2.67を超えると、肝臓の線維化がかなり進行していると判断されます。

今回の研究で調査を行った患者さんのうち、FIB-4 indexが2.67を超える糖尿病患者さんは、全体の11%でした。FIB-4 indexを活用することで、早急に肝臓を検査するべき患者さんを全体の1割程度にまで絞り込むことができるといえます。

糖尿病の患者さんは肝臓がんでの死亡リスクが非常に高いことが明らかにされました。患者さんを守るために、まずは糖尿病専門医が、糖尿病と肝臓がんの関係について関心を持ち、肝臓の状態が悪化していないか、意識的に観察することが大事だと考えます。

また、患者さんのFIB-4 indexが2.67以上だった場合や血小板数が20万以下だった場合は、早急に肝臓専門医のもとで診察を受ける必要があるので、肝臓専門医に連絡していただきたいと考えます。

またNASHは心血管疾患との関連も大きいと考えられています。

欧米の脂肪肝の患者さんのデータでは、NASH患者さんはNAFL(単純性脂肪肝)患者さんに比べて肝関連死のリスクが高いとされています。肝線維化の程度(どれだけ肝臓の線維化が進行しているか)による死亡率の違いに関して、肝疾患で死亡する割合に明らかな差は認めませんが、心血管病変で死亡する割合は、肝臓の線維化が進んだ方のほうが多いと報告されています。

また、欧米の別の報告では脂肪肝のステージ4(肝硬変)にあたる方は線維化が軽度であるステージ1~3の方よりも死亡率が高いとされており、その死因の1位は肝臓がんなどの肝臓の病気ではなく心血管病変です。つまり欧米では、NASHの進行している方は死亡率が高く、また、その主な原因は肝臓の病気ではなく、心血管の病気で亡くなっているようです。

脂肪肝と遺伝の関係はすでに報告がされており、脂肪肝の感受性遺伝子(脂肪肝になりやすい遺伝子)として、現在もっとも定説となりつつあるのは22番染色体の近傍にあるPNPLA3という遺伝子です。

外国ではPNPLA3がもっとも脂肪肝に関連している遺伝子だと発表されており、日本人にもこの遺伝子が関係しているということが分かってきています。

また、Matteoni分類におけるタイプ3(線維化のないNASH)と通常の脂肪肝の方には健常な方と遺伝子的な差が見られない一方、タイプ4(線維化のあるNASH)の方には遺伝子的に差が出ることも判明しています。つまりPNPLA3は通常の脂肪肝の感受性遺伝子であると同時に、NASHの発症や肝臓の線維化、肝臓がんのリスク遺伝子でもあるということです。

さらに最近ではPNPLA3以外の原因遺伝子もいくつか明らかになってきました。これからはそうした複数の原因遺伝子の有無をスコア化していき、それらがいくつ組み合わさっているかで表される点数(スコア)によって、NASHの発症リスクを定量化していこうという取り組みが進められています。まだほかにも原因となる遺伝子が存在すると考えられているため、そうしたマイナーな遺伝子を同定していくことで、NASHの肝臓がんの抽出を目指しています。

第一には、やはりダイエット・運動による体重コントロールが重要です。また、薬物療法を行う場合、合併する生活習慣病をしっかりコントロールすることが必要です。効果があるとされているのはピオグリタゾン、ビタミンEなどの投与ですが、数ある薬の中で群を抜いて有効というわけではなく、また、NASHの治療薬として保険適用された薬剤もありません。

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