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アフェレシス療法とは? 病気の原因を除去し、体内のバランスを整える血液浄化療法

アフェレシス療法とは? 病気の原因を除去し、体内のバランスを整える血液浄化療法
片桐 大輔 先生

国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 血液浄化療法室統括医

片桐 大輔 先生

目次
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アフェレシス療法は、古代ギリシャ時代に行われていた瀉血(しゃけつ)療法につながる歴史の長い治療法です。近年はさまざまな方法が開発され、難病や希少疾患を含む、多様な病気に対して用いることができるようになり、新たな治療の選択肢として注目を集めています。

そこで今回は、国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 血液浄化療法室統括医 片桐 大輔(かたぎり だいすけ)先生に、アフェレシス療法の特徴や、治療対象となる病気、アフェレシス療法を受ける際の注意点などについてお話を伺いました。

アフェレシス療法は、専用の医療機器を使って血液などの体液を体外へ取り出し、そこに含まれる病気の原因物質を分離して除去するとともに、不足している物質を補うことにより、体内のバランスを整える“血液浄化療法”の一種です。病気の原因物質を取り除くことによって症状を軽減し、薬物治療などが効きやすい状態をつくることができます。

たとえば、ウイルスの感染、薬物アレルギーなどに伴って急激に肝機能が低下する“劇症肝炎”という病気では、体にとって有害な物質を分解して無毒化する肝臓がはたらかなくなるため、体内に有害物質が蓄積して脳に障害を起こすことがあります。このような中分子量物質(有害物質)の除去と、肝臓の機能低下から体内で不足してくる凝固因子やタンパクを補充するために力を発揮するのが血漿(けっしょう)交換療法です。

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劇症肝炎に対するアフェレシス療法(血漿交換)のしくみ

血漿交換療法はアフェレシス療法の中でも代表的な治療法です。患者さんの血液を体外に取り出し、血球(赤血球や白血球など)と血漿(液性成分)に分離します。劇症肝炎により肝臓が分解できなかった有害物質の多くは、血漿部分に存在するため、分離した血漿を捨てることにより体内の有害物質を除去することができます。

また、劇症肝炎になると、血液を固める際に必要な凝固因子を肝臓でつくることができないため出血しやすくなります。そこで、血漿交換療法によって分離された血球に、必要な凝固因子を含む新しい血漿を補充して体内に戻すことで、肝臓のはたらきも補うことができます。

アフェレシス療法では、有害物質を含む血漿を取り除く方法以外にも、血液中に含まれる特定の物質のみを取り除くこともできます。末期腎不全の治療に用いられる血液透析に比べると、より大きな分子を除去することが可能です。代表的なものとして、さまざまな病気の原因となる自己抗体や、体内で炎症を引き起こすサイトカイン、体に有害な代謝物や中毒を引き起こす薬剤が除去可能ですが、さらにサイズが大きな血球成分が対象となる治療モードもあります。

さまざまな物質を除去することのできるアフェレシス療法は、すでに30種類以上の病気の治療に用いられています。先ほど説明した劇症肝炎や、急性肝不全以外にも、炎症性腸疾患などの消化器疾患、自己抗体が原因となる膠原病(こうげんびょう)・リウマチ性疾患、神経疾患、腎疾患、皮膚疾患のほか、感染症に伴う重症敗血症や、家族性高コレステロール血症といった循環器疾患など、その適応の範囲は多岐にわたります。中には、治療法が確立されていない難病や希少疾患もあり、アフェレシス療法による病状の改善が重要な役割を担っています。

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アフェレシス療法が適応となる病気(2021年12月31日時点)
最新の適応条件などは日本アフェレシス学会ホームページをご参照ください。

また、幅広いアフェレシス療法の治療モードの中で、血液以外の体液の調節にも用いることがあります。たとえば、がんの治療中に腹水と呼ばれる水分が大量にたまって、お腹の張りや腹痛、吐き気、食欲不振などを引き起こすことがあります。これは患者さんにとって大きな負担となるため、大量の腹水を抜く処置を行うことがありますが、アルブミンなどの体にとって必要なタンパク質も一緒に失われてしまうという問題がありました。

ここで用いられるのが“腹水ろ過濃縮再静注法(CART)”と呼ばれるアフェレシス療法です。この方法では、患者さんから腹水を取り出した後に、水分などを除去したうえでアルブミンなどの有用な物質を回収・濃縮し、それを点滴で体内に戻します。この方法を使えば、患者さんのアルブミンを無駄にすることなく、腹水による症状を改善することが期待できます。

アフェレシス療法の頻度や回数は、対象とする病気により異なります。ただし、末期腎不全に対する血液透析のように、定期的に一生続けていくというよりは、病気の種類・病状などに合わせてある程度の回数の範囲内で実施されることの多い治療法です。

また、アフェレシス療法によって一度は症状が改善したものの、その後、悪化が認められた場合には再度治療を行うこともできます。

アフェレシス療法は、対象疾患によっては健康保険も適用される有用性の明らかな治療法です。しかし、血液を体の外に取り出したり、輸血からつくられる血液製剤を用いたりすることから、出血や血圧低下、アレルギー症状などのリスクを伴う可能性があることや、治療のために数時間にわたって安静にしなければならない点などは理解しておく必要があります(当院の血液浄化療法室にはテレビも完備しています)。

さらに、アフェレシス療法の診療は現在進行形で発展しています。適応疾患も広がりつつあること、また、十分な効果を得るためには患者さんの全身状態を見極め、適切なタイミングで治療を実施しなければならないことなどを考えると、アフェレシス療法を専門とする医師や治療に詳しい医療スタッフが在籍している医療機関で治療を受けることが望ましいと思います。日本アフェレシス学会の認定施設の一覧も、医療機関を選択するうえで目安の1つになるでしょう(日本アフェレシス学会認定施設一覧)。

当院は、日本アフェレシス学会の認定施設として、ほぼ全ての種類のアフェレシス療法を実施できる体制を整えています。また、それぞれの患者さんにとって、適切なタイミングでアフェレシス療法を導入できるよう、関連する膠原病科、脳神経内科、血液内科、消化器内科、総合感染症科、救命救急センターなどのほかの診療科と協力しながら治療を進めてきました。

アフェレシス療法を実施する血液浄化療法室では、日本アフェレシス学会の認定血漿交換療法専門医に加え、治療に詳しい看護師や臨床工学技士が担当し、安全に実施できるような体制を整えています。末梢(まっしょう)血管からアフェレシスを行えるように、ハンディタイプの超音波検査機器を使って確認する(エコーガイド下穿刺)など、安全面にも配慮しています。さらに、先進医療を提供する医療機関として、新たな治療法の開発にも取り組んでおり、最近では新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に対する血液浄化療法についても、国内外から高い評価を得ることができました1)

アフェレシス療法は、従来の治療で十分な効果が得られていない患者さんにとって、大きな福音となる治療法です。私たちは日々、最新の情報を収集しながら安全面に配慮し、そして効果の感じられるアフェレシス療法の実践を通じて、患者さんの治療に貢献していきたいと考えています。

参考文献

  1. Katagiri D. Glob Health Med. 2022 Apr 30;4(2):94-100. PMID: 35586758
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  • 国立国際医療研究センター病院 腎臓内科 血液浄化療法室統括医

    片桐 大輔 先生

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