概要
中毒とは、アルコールや麻薬などを摂取することでもたらされる有害反応のことです。中毒をもたらす物質はこれら以外にも、一酸化炭素や農薬などさまざまです。日常生活において暴露される可能性があるものもあれば、事故などに関連して中毒性物質との接触に至るものもあります。
中毒では、その原因物質によって症状は大きく異なり、障害される臓器に応じて、意識障害や呼吸障害、動悸などの循環器障害が出現する可能性があります。中毒が疑われる際には、早い段階で医療機関を受診することが大切です。
原因
中毒は、さまざまな物質が原因となります。身近な例としては、アルコールの大量摂取による急性アルコール中毒が挙げられます。適量のアルコール摂取では中毒をもたらすことは基本的にはありませんが、大量のアルコールを短期間の間に摂取すると、急性アルコール中毒を生じる危険性があります。
火災現場や練炭自殺などでは、一酸化炭素中毒で死に至ることもあります。さらに、クレゾールやカドミウム、水銀、有機リン剤、サリンなど、さまざま物質で中毒が発症し、死に至ることがあります。
中毒をもたらす物質は、経口摂取や注射によって体内に入ることがありますし、皮膚や呼吸器官などを介して吸収されることもあります。
症状
中毒による症状は、原因物質によって大きく異なります。
急性アルコール中毒の場合
意識がもうろうとする、ろれつが回らない、吐き気や嘔吐などの症状がみられます。重度の場合には呼吸ができなくなったり、嘔吐物による窒息を起こしたりして、死に至ることもあります。
麻薬に関連した中毒の場合
吐き気や便秘、呼吸障害、脈拍数の低下、身体依存、精神依存などの症状が見られる可能性があります。意識状態が低下して死に至ることもあります。
その他にも、中毒の原因となる物質によっては、動悸や咳、息苦しさ、けいれん、腎障害、肝障害など、さまざまな病態・症状が引き起こされることがあります。
検査・診断
中毒では、さまざまな症状が出現する可能性があり、どのような経緯からそうした症状が引き起されるようになったのか、状況を詳細に確認する必要があります。
たとえば、宴席で大量のお酒を一気飲みしてから意識障害が出現した、火災や練炭による自殺企図などの現場で発見された、などの状況を明らかにします。さらに、中毒が疑われる場合には、詳細な身体診察が重要です。
加えて、血液検査や尿検査などを行い原因物質を特定します。原因物質の特定のために髪の毛を用いることもあります。
その他、臓器障害を評価するための血液検査、頭部CTやMRI、脳波検査など、さまざまな検査が行われることがあります。
治療
中毒を起こした場合、対症療法を行いながら、原因検索を行います。原因が特定されたら、原因に対応した治療も検討されます。
対症療法
まずは、原因物質が判明する前に、患者さんの状態に対して必要な治療を行います。意識状態が悪く、気道が保てなかったり、呼吸状態が悪かったりする場合には酸素投与や気管挿管を行って人工呼吸管理を行います。血圧の低下や脱水状態である場合には輸液などの循環サポートを行います。低血糖を起こしている場合は糖分の補充を行います。
急性期における症状に対してのみならず、たとえば腎障害が生じた際には、血液透析も必要に応じて行われます。
原因に対応した治療
原因が判明した場合は、その原因物質に対する拮抗薬や症状の治療薬を使用します。たとえば、麻薬中毒の際には、ナロキソンと呼ばれる治療薬が使用されます。また、サリンによる中毒が疑われる際には、プラリドキシムが使用されることがあります。しかし、すべての原因物質に拮抗薬や治療薬があるとも限りません。
中毒は、日常生活において注意することで避けることができるものもありますが、事故や事件に関連して引き起こされることもあります。なんらかの中毒の発症が疑われる際には、早期に医療機関を受診することが重要です。
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