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インタビュー

劇症肝炎の診断と治療-肝移植など治療の選択肢とは?

劇症肝炎の診断と治療-肝移植など治療の選択肢とは?
高木 章乃夫 先生

岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 消化器・肝臓内科学 准教授

高木 章乃夫 先生

劇症肝炎とは、肝臓に起こった炎症によって肝臓の機能が急速に失われる疾患です。劇症肝炎になると、肝臓の機能が低下することによって、初期には全身性のだるさや発熱など風邪のような症状が現れます。さらに進行すると、肝性脳症と呼ばれる意識障害がみられるそうです。

岡山大学病院の高木 章乃夫先生は、早期発見・早期治療が重症化を防ぐことにつながるとおっしゃいます。では、劇症肝炎の治療には、どのような選択肢があるのでしょうか。

今回は、岡山大学病院の高木 章乃夫先生に、劇症肝炎の診断から治療にいたるまでお話しいただきました。

劇症肝炎の原因や症状に関しては、記事1『劇症肝炎の原因や症状とは?』をご覧ください。

診断

劇症肝炎の診断には、厳密な診断基準が設けられています。

まず、肝性昏睡(かんせいこんすい:肝臓の機能低下に伴う意識障害)のレベルがⅡ度以上であることが必須です。この肝性昏睡Ⅱ度以上になると、手の震えや羽ばたき振戦(腕や手に、羽ばたくような震えが現れる症状)が現れます。

さらに、血液を固めるたんぱく質であるプロトロンビンが、正常の40%以下であることも必須の診断基準です。

以上の2つを満たした方を劇症肝炎と診断します。たとえば、脳症状が現れず、プロトロビンの値が40%以下のみの場合には、急性肝不全と診断されます。

劇症肝炎になると、肝細胞が壊されてしまうことで肝臓が萎縮します。肝臓が縮むことは、予後の悪化の一つの目安となります。たとえば、最重症のLOHFになると、90%に肝臓の萎縮が認められます。そのため、肝臓が萎縮していないか確認することは、疾患の重症化を知る一つの判断基準となります。

劇症肝炎の治療には、原因に関わらず、ステロイドと呼ばれる副腎皮質ホルモンの大量静注(点滴や注射によって静脈内にステロイドを投与すること)が適応されるケースが多いです。炎症を止めなければ疾患が進行してしまうので、炎症を早期に抑える目的で、特に初期においてはステロイドを大量に投与することが少なくありません。

たとえば、ステロイドで早期に炎症を抑えてあげることができれば、肝性脳症が悪化する前に急性肝不全の状態で止めることができるケースもあります。

このステロイドは、初期において大量に使用しても問題がないケースがほとんどですが、副作用などを考慮し、薬の量や適応期間などは慎重に調整していく必要があります。

点滴

劇症肝炎のなかでもB型肝炎ウイルスが原因である場合には、B型肝炎ウイルスを抑えるような薬が適応されます。エンテカビルなど抗酸アナログ製剤を用いた薬剤治療やインターフェロンを用いた抗ウイルス療法が有効であるといわれています。

このうち、抗酸アナログ製剤は重篤な副作用はあまりないという特徴があるため、早期より適応されるケースが多いです。一方、インターフェロンは炎症を悪化させるケースもあるので慎重に適応されるべき薬剤であるといわれています。

さらに疾患が進行した場合には、肝臓のはたらきを補うため、人工肝補助療法を適応します。人工肝補助療法では、血液から血球成分以外の成分である血漿(けっしょう)を取り除き、健康な方の血漿と交換します。さらに、血液に含まれる毒物を血液透析(とうせき:血液中の老廃物や不要な水分を除去する治療法)の機械で除去します。

この人工肝補助療法によって肝臓の機能が低下している期間を乗り切り、肝臓が再生すれば改善が可能になります。

2017年現在、劇症肝炎の治療法として直接的に肝臓を再生させる治療は存在していません。この人工肝補助療法も、あくまで周辺の環境を整えて肝臓の再生を待つような治療になります。

お話しした薬物療法や人工肝補助療法によって肝臓の再生が見込めない場合には、肝移植が適応されるケースがあります。肝移植には、近親者から肝臓の一部を移植する生体部分肝移植と、脳死ドナーから提供を受けた肝臓を移植する方法があります。移植の救命率はほかの治療法と比較しても高いことがわかっています。

生体部分肝移植は日本では昔から広く行われていましたが、脳死ドナーからの肝移植も2010年の臓器移植法の改正に伴い、増加傾向にあります。この法律の改正によって、本人が生前に拒否をしていない場合に限り、家族の承諾さえあれば臓器の提供が可能になりました。ドナーの増加に伴い、劇症肝炎の患者さんに肝移植を適応されるケースも増えています。

手術室

移植に対応している医療機関は限られており、移植を実施している医療施設を選ぶ必要があります。また、移植を受けられる年齢は施設によって異なりますが、65歳前後を上限としているケースが多いです。

しかし、年齢制限をクリアしていれば、どなたでも移植可能なわけではありません。たとえば、ステロイド治療に伴い血液中に細菌が検出されているような状態であると移植の適応は難しくなります。また、肝臓以外の臓器に障害がみられる場合にも移植は困難になることがわかっており、移植適応のためには、肝臓のみならず全身の状態がある程度良好であることが重要になります。

劇症肝炎の患者さんの予後は、肝移植を受けられなければ悪いといわれています。比較的予後がよいといわれている急性型でも内科治療による救命率は20%ほどであり、肝移植を受けたほうが予後は良好になるといえるでしょう。

治療の結果、状態が改善された方であっても、定期的な検査を継続的に受けるケースが多いのではないでしょうか。たとえば、原因不明の場合であれば、1年程度は経過観察をします。また、B型肝炎ウイルスが原因である場合には、ウイルスが消えることはありません。そのため、肝臓がんを発症する可能性もありますので、年に一度など定期的な検査が重要になるでしょう。

高木先生

全身性のだるさや食欲不振など、何か異常を感じることがあれば早めに病院を受診してほしいと思っています。特に、多臓器が弱っているケースが多い高齢者や肥満糖尿病の方は重症化しやすいことが考えられるため、特に注意が必要でしょう。

劇症肝炎は、肝臓だけを良好に保てば防げる疾患ではなく、全身に関わる疾患です。全身状態に注意し、普段とは違う状態が現れたら、なるべく早く病院を受診していただくことが重症化を防ぐことにつながると思っています。

 

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  • 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 消化器・肝臓内科学 准教授

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