インタビュー

アルコール性肝障害の症状は? アルコール性肝炎や脂肪肝の症状を解説

アルコール性肝障害の症状は? アルコール性肝炎や脂肪肝の症状を解説
堀江 義則 先生

国際医療福祉大学 臨床医学研究センター 教授、慶應義塾大学 医学部消化器内科・客員教授

堀江 義則 先生

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この記事の最終更新は2015年09月02日です。

アルコール性肝障害はアルコールが原因で起こる様々な疾病の総称です。具体的には、アルコール性肝炎、アルコール性脂肪肝、アルコール性肝硬変などがあります。これらの病気はどのような症状をあらわすのでしょうか? アルコール性肝障害の代表的な病気の症状について、山王メディカルセンター内科部長の堀江義則先生にお話をお聞きしました。

脂肪肝は、肝臓に脂肪が異常なほど(肝細胞の30%以上)蓄積されてしまっている状態のことを指します。ヒトの肝臓がフォアグラのような状態になっていると考えればわかりやすいでしょう。脂肪肝は可逆的(原因を除外すれば元に戻ること)な病態のため、「様々な疾病の前駆状態」に分類されます。そのため、飲酒をやめれば脂肪肝は元に戻ります。しかし、脂肪肝を放っておくとその後で肝線維症(全体の30~40%)やアルコール性肝炎(全体の10~20%)に進行し、やがて肝硬変肝がんなどの重い病気を引き起こすリスクがぐっと高くなります。

原因は主に暴飲暴食などによるエネルギー・糖分・脂肪・アルコールの過剰摂取で、生活習慣病のひとつとも言われています。一方、過激なダイエットが原因となる場合もあります。
アルコール性脂肪肝は症状がほとんどないため、健康診断などで初めて気づいたという方もいます。また、肥満気味の方や糖尿病を患っている方は特に脂肪肝になりやすいので注意が必要です。

飲酒が原因となって起こるアルコール性肝炎を「AH(alcoholic hepatitis)」と呼びます。
アルコール性肝炎は、アルコールの過剰摂取によって肝臓が炎症を起こしている状態で、肝細胞の急速な腫大(腫れあがって大きくなること)と壊死・肝細胞の線維化による肝機能障害を引き起こし、肝線維症から肝硬変の前段階ともなりうる病気です。脂肪肝になっている方がそれでも大量飲酒を続けると、約10~20%の方がアルコール性肝炎を引き起こすと言われています。

アルコール性肝炎の症状は、多くの場合食欲不振・倦怠感・発熱などが見られます。また、右上腹部の鈍痛や黄疸などもあらわれることがあります。悪化すると腹水(腹腔内に水がたまること)やむくみも出てきます。また、アルコール性肝炎の方に血液検査を行うと白血球・AST・ALT・ALP・γ-GTPの増加、貧血、血小板・アルブミンの減少などが発覚します。他の肝炎にも(B型肝炎など)同じような症状があり、同じような検査結果があらわれますが、飲酒歴がはっきりしており、飲酒をやめることで検査値が改善すればアルコール性肝炎と診断できます。

また、「重症アルコール性肝炎」というアルコール性肝炎の重症型もあります。これはたとえ禁酒をしても100日以内の生存率が約50%という非常に重い病気です。

アルコール性肝硬変はアルコールが原因となって起こる病気の最終段階と言えるでしょう。日本酒で約5合を毎日20年以上(女性の場合は12~13年)飲み続けた場合、アルコール性肝線維症を経て約10~30%の方が肝硬変に至ります。
肝硬変の症状は腹水・黄疸を中心として、ひどくなると吐血をしたり昏睡状態に陥ったりすることもあります。

肝硬変になってしまうと治すのは困難と思われている患者さんもいるかもしれませんが、全く回復の余地がないというわけではありません。ただし、飲酒を続けると悪化の一途をたどるのみなので、この時点まで病気が進行した場合は直ちに断酒する必要があります。

肝がんの原因の7割前後は肝炎ウイルス(B型・C型)ですが、飲酒が肝硬変を引き起こし、肝硬変が肝がんへ進行するケースも最近は増えているため、肝がんはアルコール性肝障害を患った患者さんが決して無視できない病気です。

アルコールそのものが肝がんを引き起こす可能性も否定できません。国立がん研究センターの調査によると、男性では多量飲酒者、女性だと中程度以上の飲酒者に肝がんリスクの上昇が見られるという研究結果も出ており、飲酒と肝がんの関係性が明らかになりました。
また、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドは発がん性を持っていると言われています。アセトアルデヒドは危険物取扱法に定められているほど危険な物質です。当然ながらお酒を多く飲む方ほどそれらの物質が多く発生することになります。

  • 国際医療福祉大学 臨床医学研究センター 教授、慶應義塾大学 医学部消化器内科・客員教授

    日本内科学会 内科指導医・認定内科医日本消化器病学会 消化器病専門医日本肝臓学会 肝臓専門医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医日本医師会 認定産業医

    堀江 義則 先生

    慶應義塾大学医学部卒。同大学消化器内科講師・永寿総合病院内科副部長・部長を経て、国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授・慶應義塾大学医学部客員教授。日本アルコール・薬物医学会理事や内閣府アルコール健康障害対策関係者会議委員を務めるなど、消化器分野の豊富な知識と経験をもとに、アルコール性の病変に対して幅広く活躍している。

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