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原因はウイルス? C型肝炎やB型肝炎など肝炎の種類・症状・治療方法概論

原因はウイルス? C型肝炎やB型肝炎など肝炎の種類・症状・治療方法概論
池田 隆明 先生

横須賀市立うわまち病院 副病院長 消化器病センター長 消化器内科部長

池田 隆明 先生

この記事の最終更新は2017年02月07日です。

肝炎とはその名の通り肝臓に炎症が起こる疾患です。感染経路は様々ですが、自覚症状がほとんどないため気がつかないうちに肝硬変肝がんに移行することも多い危険な疾患です。今回は横須賀市立うわまち病院 副病院長 消化器内科部長 消化器病センター長の池田隆明先生にウイルス性肝炎のお話を中心に、肝炎についてお伺いしました。

肝臓というと皆さんはまずアルコールとの関連を思い浮かべるかもしれません。しかし、肝臓に炎症が起こる原因はアルコールだけではありません。

ウイルス

・アルコ―ルの過剰摂取

・中性脂肪の蓄積

・免疫反応異常

このなかで最も多い原因がウイルス(ウイルス性肝炎)です。肝炎は飲酒が原因だと連想される方も多いですが、アルコールが原因で引き起こされる肝炎は、一般の方がイメージされているほど多くありません。

ウイルス性肝炎は、ウイルスの種類によって「A型・B型・C型・D型・E型・非A~E型・その他」の7つのタイプに分けられます。そして、これらのタイプは「症状が急性になりやすいもの」「症状が慢性化しやすいもの」の2つに大別されます。

主なウイルス性肝炎の種類と感染経路

ウイルス型

感染経路

急性肝炎になりやすい

 

A型

糞口(ふんこう)感染

 

E型

慢性肝炎になりやすい

 

 B型

血液・体液からの感染(母子感染)

 

C型

血液・体液からの感染

※幼少期に感染した場合には慢性化することがある

 

急性肝炎は一時的に症状が現れるものの、その後自然治癒しやすい疾患なのでそれほど心配は要りません。一方、B型・C型などの慢性肝炎は自覚症状がないまま徐々に進行し、罹患に気づかずに生活を続けるとやがて肝硬変・肝臓がんといった重篤な疾患に移行してしまうため注意が必要です。

この慢性肝炎の患者さんのうち、C型肝炎が70%と最も多く、次いでB型肝炎と報告されています。

 

慢性肝炎の割合

前述のとおり、肝炎には自覚症状がなく、罹患してもなかなか自覚症状が現れないことが多いです。それは肝臓が持つ特性に起因します。

肝臓には、ダメージを受けても自然に再生する「代償性」という機能があります。たとえば、腎臓の場合は一度ダメージを受けると二度と再生しませんが、肝臓の場合は再生が可能です。しかし、この再生能力をもつ故に、肝臓に疾患などの異常があっても、それが症状として現れにくくなってしまいます。これは「肝臓の予備能」と呼ばれており、慢性肝炎が見逃されてしまう理由です。また、肝臓は罹患しても症状が現れにくいことから「沈黙の臓器」と別称されることも多いです。

「肝臓の予備能」によって、C型肝炎B型肝炎の初期にみられる症状は、体がだるい、微熱がでる、といった症状だけです。これらの症状は肝炎が原因でなくても日常的に見られるものなので、一般の方はこの状況だけではなかなか慢性肝炎だと気づくことはできません。

肝炎が進行すると、お腹が膨れる(腹水がたまる)・黄疸(おうだん)がでるといった症状が出てくるのですが、このような症状は疾患がかなり進行した時点で現れます。つまり、その時にはすでに肝硬変・肝臓がんといった疾患に移行してしまっているケースが多いのです。

このように自覚症状が現れないまま進行してしまうC型肝炎B型肝炎ですが、どのようにすれば早期に発見できるのでしょうか。よくあるパターンが、定期検診での発見です。たとえば、入社時の健康診断で偶然見つかることも多くあります。

また、近年はマスコミの報道や、国・製薬会社の疾患啓発活動などによって、C型肝炎・B型肝炎の認知は広まっています。このおかげで自主的に検査を受けにこられる方も多くなりました。慢性肝炎など自覚症状で気づくことが難しい疾患には、こうした定期検査の実施が非常に有効でしょう。

かつては治療が困難だったC型肝炎ですが、治療薬の進歩によって治癒する確率は大幅に上がり、肝炎治療は大きく変わりました。治らなかった肝炎が「治る時代」になった今、今後どのようなことが肝炎治療の課題になるのでしょうか。

近年、ウイルス性以外の肝炎(非アルコール性脂肪性肝炎など)が悪化して、肝硬変・肝臓がんになるケースが以前よりも目立ってきたように感じます。非アルコール性脂肪性肝炎が進行して肝硬変・肝臓がんになることは以前から頻繁に報告されていましたが、ウイルス性肝炎が治る時代になったこともあり、より浮き彫りになってきているのでしょう。また、日本が飽食の時代になったことで中性脂肪の蓄積が顕著になり、非アルコール性脂肪性肝炎患者さんが増えてきているとも思います。

今後はこういったウイルス性以外の肝炎の治療に注力していかなければならないと考えています。

 

池田隆明先生

強調しておきたいことは「ウイルスが排除できた=肝臓がん罹患リスクがなくなった」ではないということです。

近年、インターフェロン治療が主体であった時代にC型肝炎を治した方のなかの一部の患者さんに、肝臓がんを発症されるケースが見受けられます。これは、その時代に「肝炎が治った後も定期的に医療機関を受診してください」と患者さんにきちんと指導する方針がとられていなかったことが原因になっていると考えられます。

この事態をうけて、近年ではC形肝炎を完治した患者さんへ「年に1回程度は検査をうけてください」とお伝えするように変わってきました。

治療の進歩によりC型肝炎が治る時代になってきましたが「ウイルスが消えたのでもう大丈夫」ではなく「ウイルスは消えたけどまだ発がんリスクがある」いうことを、しっかりと患者さんにお伝えしていかなくてはいけないと考えています。

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