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編集部記事

がん患者や家族の新型コロナウイルス感染症への不安〜不安を抱えたがん患者に対して家族ができることは?〜

がん患者や家族の新型コロナウイルス感染症への不安〜不安を抱えたがん患者に対して家族ができることは?〜
清水 研 先生

がん研究会付属有明病院 腫瘍精神科 部長

清水 研 先生

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特性についてはいまだ研究段階のため明らかではないことが多く、特別な治療法も確立されていません。しかし、がんなどの基礎疾患を持っていると重症化しやすいことは明らかとなっており、がん患者本人はもちろんその家族や周りの人は不安な日々を過ごしています。このような状況のなかでがん患者本人や家族はどのようにして不安な気持ちを取り扱うことが望ましいのでしょうか。

今回は新型コロナウイルス感染症の流行によって不安を抱えるがん患者に対し家族や周りの人ができることや、がん患者自身がどのようなことに注意して生活すればよいかについて、国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科科長の清水 研(しみず けん)先生にお話を伺いました。

新型コロナウイルス感染症を正しく恐れることが大切だと考えます。新型コロナウイルス感染症の流行に関しては、がん患者さんやそのご家族だけでなく国民全体が不安な気持ちを抱えています。連日報道される海外の医療崩壊の様子などから、“日本でも同様のことが起きて治療が受けられなくなるのではないか”と心配している方も多いのではないでしょうか。また、がん患者さんの場合、乳がんの治療を受けていた岡江 久美子(おかえ くみこ)さんが新型コロナウイルス感染症にかかり亡くなったという報道から“自分も感染したら重症化するのではないか”という恐怖を感じた方も多いでしょう。

確かに新型コロナウイルス感染症は軽視できない感染症です。しかし、今一度感染者の割合やがん患者の感染・重症化リスクについて正しい知識を知っておいていただきたいと思います。

日本の感染者の割合

まず、日本の感染者の割合は、感染者数のもっとも多い東京でも累計患者数が5月30日現在で5,231人ですから、1万人に5人程度と考えられます。過小評価せずに感染防御策を行うことは大切ですが、そう簡単に感染するともいえない割合ではあります。現段階では感染者数も減少傾向にあるため、引き続き国民全員が感染防御策を行えば、医療崩壊に至るような爆発的な感染拡大は防げるといえるでしょう。

がん患者さんの新型コロナウイルスの感染リスク・重症化リスク

次に、がん患者さんの新型コロナウイルスの感染リスク・重症化リスクに関しては、日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会の3団体が合同で情報発信を行っています。この情報によれば、過去14日以内に化学療法などの全身状態に影響がある抗がん治療を行っている場合、免疫の機能が低下しているため新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいと考えられています。

一方で、治療から一定の期間が経過している人の場合、がん患者であっても感染・重症化のリスクはそこまで高くないと予想されます。このような正しい情報を取り入れて過度に恐れすぎないことを意識していただきたいと考えています。

がん患者さんは自分の心に蓋をせず、不安なことがあれば周囲の人に相談しましょう。不安な気持ちを心のうちにとどめておくと不安が増幅して、いっそうつらくなることもあるからです。相談先はもっとも身近なご家族でも構いませんし、“家族に心配をかけたくない”などの理由で家族に相談しにくい場合は、担当医などの医療従事者でも構いません。

またご家族には、がん患者さんが何に困っているかを理解し、どのようなサポートができるかを考えて行動していただきたいです。ご家族は感染を心配する気持ちから、患者さんに執拗に「感染しないように気をつけてね」などと声をかけてしまいがちです。もちろん、このような声がけは場合によっては大切です。しかし、感染への大きな不安を抱えている患者さんに対しては、気持ちを不安定にさせ不安を強めてしまう原因になることもあります。また、執拗な声がけはおせっかいにつながり、家族間のコミュニケーションがうまくいかなくなることも考えられます。

新型コロナウイルス感染症の流行に対する不安は、それぞれのがん患者さんによって感じ方が異なります。感染を過度に心配している方もいれば、あまり気にしていない方もいます。また、ご自身のがん治療への影響を懸念されている方もいます。そのため、まずは患者さんの気持ちに耳を傾け、今どんな不安を持っているのかを知ったうえで、できるサポートをしていきましょう。

“治療を後回しにされた”“本当に延期をして大丈夫なのだろうか”という不安や疑問を抱えている患者さんは、あらためて手術や治療の延期理由について担当医の説明を受けていただきたいです。担当医は患者さんの状態や治療の効果、感染リスクなどをもとに、その患者さんにとってベストと考えられる判断をしています。ご自身が納得するためにも、まずは担当医としっかり話をすることを検討しましょう。

またご家族でも、がん患者さんの手術や治療の延期を受けて不安に感じることがあるでしょう。そのようなときに、患者さんに「手術を延期して大丈夫なの?」などと聞いてしまうと、患者さんも不安な気持ちになってしまいます。自分の気持ちを伝える前に、まずは患者さんの様子を見守るようにしましょう。もし患者さんが手術や治療の延期に不安や疑問を抱えている場合には、担当医から説明を受けることを促し、場合によっては一緒に説明を聞くことも検討しましょう。

治療の方針については担当医と話し合って決めていくことが大切です。患者さんが不安を抱えている場合は、なるべく安心して病院を受診できるようにサポートしましょう。たとえば、新型コロナウイルスへの感染を過度に怖がり、外に出られない、病院を受診できないなどの状態に陥っている患者さんに対しては、適切な治療が受けられるよう病院の受診に付き添うなど、ご家族のサポートが必要なケースもあります。

新型コロナウイルス感染症の流行により、日本でも一時はがん患者さんが必要な治療を受けられなくなるなどの医療崩壊が懸念されました。しかし、医療従事者の取り組みや学会のはたらき、国民全員の感染防御策が功を奏し、現段階では医療崩壊に陥るような危機は回避できています。

がん研有明病院では医療に制約があった場合でも、ゴールデン・ウィークなどの休日にも手術を実施するなど、急を要する治療は優先的に行いました。ただし、治療によっては今実施すると免疫の機能が低下し、感染・重症化のリスクが高まるものもあります。そのため、先送りにしても治療成績に影響がないと判断された場合のみ、患者さんにご納得いただいたうえで治療の延期をしています。

一般の人と同じように、がん患者さんにおいても自宅にこもり一切外出をしないことは心身に悪影響があると予想されます。気持ちが塞ぎやすくなったり、運動不足などから体調を崩したりする可能性もあります。一般的な感染防御策をしたうえで散歩をするなど、気分転換になる外出を促してもよいでしょう。ご家族が「がん患者なんだから家にいなさい」と外出を強く禁じるようなことは患者さんにとっても負担になるため、控えましょう。

ただし前述のとおり、過去14日以内に化学療法・免疫療法・放射線療法などの抗がん治療を行っている人は、免疫の機能が低下しやすくなります。それによって、新型コロナウイルスに感染・重症化しやすくなる場合があるため、外出を控えるようにしましょう。また、治療から1か月程度経過している方でも、体調が思わしくないときは外出を控えたほうがよいでしょう。

テレワークなどの措置が可能な場合には、勤め先に相談してもよいと思います。しかし、退職に関してはその後の生活などを考えると簡単にできる決断ではないと思います。新型コロナウイルス感染症は、感染防御策を行うことでその多くが予防できる一方、どれだけ対策をしても感染リスクをゼロにすることは難しいといえます。感染のリスクを考えることも大切ですが、そのリスクを避けることで生じるデメリットもバランスよく考える必要があると思います。

そのため、仕事を休職・退職したからといって感染リスクが大きく下がらない可能性もあります。また、仕事をやめてしまうと、経済的なデメリットが生じることもあるでしょう。がん患者さんが新型コロナウイルス感染症の流行を理由に退職を希望する場合、感染に関して過度な不安を感じている可能性が高いため、一度しっかり気持ちを聞くようにしましょう。場合によっては担当医などに相談してみてもよいでしょう。

面会が禁止・制限されている以上、がん患者さんの孤独を完全になくすことは難しいと考えます。しかし、電話やスマートフォン、パソコンなどのデバイスを活用し、オンラインのコミュニケーションを小まめに取るなどの工夫をすることで、患者さんの孤独感を和らげることができるでしょう。また、手紙や寄せ書きで気持ちを伝えることも効果的です。

患者団体によっては、オンラインで患者会を実施しているところもありますので、ぜひ活用してみてください。また、以下の団体ではがん患者さん向けの電話・メール相談を実施しています。家族に打ち明けられない悩みなどがある方は、これらの相談を利用することもご検討ください。

各相談先

【日本対がん協会】 がん相談ホットライン ※新型コロナウイルス感染防止対策のため、当面の間、相談受付日時を縮小中

【日本精神保健福祉士協会】 子どもと家族の相談窓口(Eメール対応)

【全国がん患者団体連合会】 講演会のお知らせ 

【キャンサーネットジャパン】 COVID-19に関するがん患者と家族のためのQ&A

【グループ・ネクサス】 オンライン支部

【がんの子どもを守る会】 小児がん患者・家族ができること・知っておきたいこと

【日本対がん協会】 サバイバーネット ※会員登録必要

【 特定非営利活動法人5years】 5years ※会員登録必要

まずは、ワイドショーなどの報道に惑わされないことを心がけていただきたいです。これらの報道のなかには1人の患者さんの例をセンセーショナルに取り上げ、過剰に不安を煽るものもあります。そのため、ワイドショーを見るとしても時間は1日1時間にとどめるなど、鵜呑みにしすぎない工夫をしてみてください。

そのうえで新型コロナウイルス感染症について知りたいことがあれば、少し難しい内容かもしれませんが、厚生労働省のデータや学会の公開した情報などを活用していただきたいです。がん患者さんやそのご家族の場合、以下のサイトを参考にされるとよいでしょう。また、情報を見て分からないことや不安なことがあれば、担当医に相談することも検討しましょう。

【日本癌学会】新型コロナウイルス感染症とがん診療について(患者さん向け)Q&A

がんの治療中は特に不安を抱えやすい状態です。そのような中で新しいウイルス感染症が流行してしまうと、患者さんは気持ちが動揺し、なかなか明るい気持ちになれないものと思います。

そのため、患者さんにはぜひ自分の合格点のハードルを下げて、担当医の指示さえしっかり守っていれば落ち込んでもよい、弱音を吐いてもよいという気持ちで過ごしていただきたいです。気持ちに蓋をして無理やり前向きになろうとすると、余計に心がつらくなることもあります。ご家族や担当医、周囲の人に気持ちを伝えることを怖がらず、どんなことでも相談してみてください。

私の著書『がんで不安なあなたに読んでほしい。自分らしく生きるためのQ&A』では、がん治療にまつわるさまざまな不安・悩みについてのお答えしています。今不安を抱えているがん患者さんやそのご家族は、ぜひ参考にしてみてください。

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  • がん研究会付属有明病院 腫瘍精神科 部長

    清水 研 先生

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