世界的な流行となり、日本では2020年4月7日に緊急事態宣言まで出されたCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)。一人ひとりの感染予防行動の重要性が叫ばれていますが、子どもは私たち大人のように適切な対策を取ることが難しい場合もあります。
この記事では長野県佐久医師会「教えて!ドクター」プロジェクトのご協力を受け、学校などで子ども自身がどのような行動を取るべきか、また感染予防を行わない場合はどのようなことが起こるのかを、保護者向け解説を交えながら分かりやすくお伝えしていきます。
新型コロナウイルスは人から人へうつります。うつった人は、ふつうの“かぜ”のようにすぐなおることもありますが、中には“肺炎”という病気をおこして死んでしまう人もいます。
みんながしっかり予防をすることで、大事なおとうさんおかあさん、おじいちゃんおばあちゃんやお友だちにつらい思いをさせずにすみます。
私たちは日々報道に触れて新型コロナウイルスの危険性を十分感じていますが、年齢の低い子どもではその危機感や当事者意識を持つことが難しい場合もあります。不必要に怖がらせすぎる必要はありませんが、身近な人の生命に関わる問題であることを、具体例を挙げて話すと伝わりやすい場面もあるでしょう。
きちんと手を洗うことは、新型コロナウイルスの予防でいちばん大切です。きちんと石けんをつけて、20秒かぞえて手を洗いましょう。
は、きちんと手を洗うようにしましょう。手を洗ったあとはしっかり手を乾かしましょう。
提供元:佐久医師会「教えて !ドクター」プロジェクト
手洗いをするべき場面は多岐にわたりますが、子どもでは“具体的にいつするべきか?”ということが理解しづらい場合があります。具体例を挙げて、最低限手洗いをすべきタイミングを指定したほうが分かりやすいでしょう。
手の傷は細菌などの温床になりやすいため、皮膚が弱い・手が荒れやすい子どもは保湿クリームで手荒れ対策を行うことも大切です。大人を対象とした研究では手荒れがひどくなると、(痒みや痛みがひどくなるため)手洗いをより敬遠するという報告もあります。手荒れ対策は手洗いとセットで考え、夜寝る前に手を保湿する習慣をつけましょう。
また、手洗いの代わりにアルコール製剤による消毒が行われることもありますが、これも体質によってはかぶれたり赤くなったりすることがあります。手の皮膚トラブルには注意して観察するようにするとよいでしょう。アトピー性皮膚炎の子どもで、手洗いやアルコール消毒によって湿疹が悪くなった例も増えています。普段より軟膏を塗る回数を増やしたり、寝るときにはプロペト軟膏などを塗ったあと手袋で保護したりする対策が有効なケースもあります。
マスクはキレイなものを使わないと、かえってよくないことがあります。紙のマスクは毎日新しいものにとりかえ、布のマスクは毎日洗いましょう。
マスクをつけるときは、きちんと鼻と口が全部かくれるようにし、なるべくスキマができないようにしましょう。マスクをしていても、“せき”や“くしゃみ”をするときは注意しましょう。ひじで口をかくすようにして、ばい菌やウイルスがとびちらないようにします。
また、マスクはさわらないようにし、もしさわってしまったらすぐに手を洗いましょう。マスクで遊んだり、お友だちのマスクにさわったり、お友だちのマスクをもらったりしてはいけません。
提供元:佐久医師会「教えて !ドクター」プロジェクト
日本小児科学会では、「感染している人のくしゃみや咳に含まれる飛まつを直接浴びないという観点からは、マスクをすることの利点はあるが、小さなお子さんでは現実的ではない」としています。マスクを着用していること自体が困難な小さな子どもでは、外出自粛や“3密(密集・密閉・密接)”を避けるなどを徹底することのほうが大切でしょう。現在、子どもの患者さんのほとんどは保護者から感染しているという報告もあります(2020年4月8日時点)。まずは保護者が感染しないことに重きを置くほうが大切です。
マスクを着用することが可能な年齢の子どもでは、正しいマスクの装着方法を指導することが大切です。以下のような重要なポイントに絞って伝えるのが分かりやすいでしょう。
保護者が配慮できることとして、1回はずしたマスクを再度装着するときに裏と表を間違えないように目印をつけることや、なるべくサイズのあったマスクを使用することなどが挙げられます。
また、“咳エチケット”の理解が可能な年齢の子どもであれば、指導や練習を家庭で行うことも大切です。
学校では先生の、おうちではおとうさんおかあさんの言う事をよく聞いて守りましょう。遊んでもよいときは、
ようにしましょう。
子どもにとって遊びとは、心身の発達のために大切な要素のひとつです。一般的に屋外のほうが人と人との距離が保たれやすく、空気の入れ替わりもあることから感染リスクは低いと考えられます。体調が悪いときや何らかの症状がある場合には外遊びは控える、帰宅時や飲食前の手洗いを徹底するなどの指導に努めましょう。
また、屋内での遊びは屋外よりリスクが高いため注意が必要です。少人数にとどめ、何かしらの症状のある子どもがいないことを十分に確認しましょう。屋内であっても屋外での遊び同様、手洗いを徹底することは大切です。おもちゃなども不潔になりやすいため、拭く・洗うなどの対策を定期的に行ってもよいでしょう。
「何かいつもとちがうな?」と感じたら、おとうさんおかあさん、先生に言うようにしましょう。特に注意するのは、このようなときです。
こういうときは、がまんしないでかならず言うようにしましょう。
子どもの感染者数は大人と比べると少なく、当初はSARS同様、子どもには感染しにくいのではないかと考えられていました。しかし感染者数が増えるにつれ、感染しやすさ自体は大人も子ども変わらないのではないかとも言われ始めています。
原因を判断するうえで、いつから症状が始まったのか? どういう経過をたどったのか? ということはとても大切な手がかりになります。子どもはもともと体温が大人よりも高い場合が多く、微熱程度であれば本人は気付かないことも少なくありません。普段と変わったところがないかよく観察し、必要に応じて一日一回検温などを行ってもよいでしょう。異変があった場合にはメモなどに残しておくことがすすめられます。
また、小児喘息などの病気をもともと持っている子どもの場合では重症化のリスクが高い可能性があります。あらかじめ主治医に対策や予防について相談しておくほか、保護者や周囲の人が感染しないよう、より注意を払うことが大切です。
目に見えないウイルスとの戦いは、どれだけやっても不十分なのではないか、安心できないという気持ちを呼び起こしがちですが、今私たちにできることは、正しい知識を持って実行可能な対策を確実に行うこと以外にありません。
子どもはなかなか思うように感染予防行動を取ってくれず焦れることもあるかもしれませんが、根気強く一つずつできることを増やす心構えで取り組むとよいでしょう。
坂本 昌彦 先生の所属医療機関
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