概要
SARSとは、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)に感染することで発症する“重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)”のことを指します。SARSは2002年11月に中国広東省で生じた発症例を発端とし、2003年8月までの9か月の間に全世界32か国において、死亡者774例を含む8,096例の発症例(致死率9.6%)がありました。高齢者や基礎疾患の存在が高致死率のリスク因子となっています。
経過中、日本における発症例はなく、2003年7月5日にWHO(世界保健機関)にて流行の終息宣言がなされています。終息宣言後、特殊な状況下(実験室での感染例)などでの感染者報告例はありますが、現在までにおいて大きな流行の再燃はみられません(2021年3月時点)。
当時を振り返ると、急速に増悪する呼吸障害を示す症例が全世界各国で多数認めたことから、流行地域への渡航自粛勧告がなされるなど、とても慎重な対応がとられた病気です。SARSは全数報告対象(2類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出る必要があります。
原因
SARSは、一部のコロナウイルスに感染することで発症する病気です。
コロナウイルスとは通常の風邪を引き起こす原因ウイルスの1つですが、SARSの原因となるコロナウイルスは、これとは区別され“SARSコロナウイルス(SARS-CoV)”と呼ばれています。コロナウイルスは、電子顕微鏡で見たときの見た目が太陽の“コロナ”と似ていることから名付けられています。見た目の類似性はありながらも、風邪の原因ウイルスとしてのコロナウイルスと比べて遺伝子的な特徴は大きく異なります。SARSコロナウイルスでは、呼吸器や消化管などに発現しているアンジオテンシン変換酵素のACE2が感染のレセプターたんぱくとなります。
SARSコロナウイルスは咳や痰などに含まれたウイルスを介して感染が成立する、飛沫感染が主流であると考えられています。さらに、ウイルスがエアロゾル感染によって広い範囲に広がった例も報告されています。しかしながら、もっとも感染リスクが高いのは“濃厚接触”をすることであると考えられています。SARSの患者さんの病状介護や食器の共有、近くで会話をするなど、密接な接触によってSARS患者さんの気道分泌物や体液を介してウイルス感染が拡大する可能性がより高くなります。
症状
SARS-CoVに感染すると、2〜10日程度の潜伏期間を経て症状が出現します。SARSの典型的な経過は、突然の発熱、震え、筋肉痛などのインフルエンザのような症状から発症します。
その後2〜7日ほど経過すると咳(乾性咳)を呈するようになります。中には、消化器症状として下痢がみられることもあります。発症者のおよそ80%において症状は改善しますが、急速に呼吸症状が増悪する方もいます。呼吸状態の増悪は肺炎やARDS(急性呼吸窮迫症候群)に伴うものであり、進行し死亡する例もあります。
検査・診断
SARSを引き起こしたウイルスを検出する方法として、ウイルス分離、RT-PCR法、LAMP法、血清抗体測定などが挙げられます。症状や病歴からSARSが疑われた場合には関係各所と連携を取りながら、これらの検査を実施します。安全上の問題から、特殊な施設でのみ検体の使用が許可されています。
また、SARSでは肺炎や急性呼吸窮迫症候群を発症することがあります。特に急性呼吸窮迫症候群は急速に呼吸状態が悪くなるため、画像上で病気がみられるようになってからでは救命が間に合わないこともあり得ます。急性呼吸窮迫症候群は、X線画像、CTの結果によって診断されます。急性呼吸窮迫症候群の可能性があれば早急に呼吸管理の治療に入ることが重要です。
治療
SARSにおいては有効な根治療法はまだ確立されていません。肺病変が進行する場合は、酸素投与や人工呼吸器などによる集学的な治療管理が必要となります。SARS患者さんは隔離病棟に入院させる必要がありますが、この際部屋を陰圧にし、看護する側も完璧な防護をしたうえで患者さんとの不必要な接触を避けることが肝要です。抗ウイルス剤の静脈内注射、ステロイド剤の併用療法、インターフェロン療法などに効果が期待できるとの報告もありますが、確定的な結論は得られていません。
急性呼吸窮迫症候群を発症した際には、シベレスタットナトリウムという薬の使用が検討される可能性もあります。また、人工呼吸管理の仕方にもさまざまな工夫が施されます。
現在(2021年3月時点)までのところ、予防に有効なワクチンは存在しておらず、確実な治療方法も確立されていません。そのため、疑わしい症例がある際には迅速に対応を行い、さらなる感染流行を抑制しなければいけません。また、手洗いやマスクなどの一般的に行われるような感染予防策も確実に行う必要があります。
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今朝から顔や手足のむくみや全身じんましん
こころあたりがあるのは、乳アレルギーです。 血液検査では、アレルギーと呼べるほどひどい数値ではないとのことでしたが、一応、粉ミルクでじんましんがでるため、ミルクはアレルギー用ミルクを普段飲んでいます。 最近、少しずつ牛乳やヨーグルト、チーズを与えていましたが、昨日、牛乳を3口くらい飲んだせいか今日じんましんがすごいです。 今朝、起きたときから顔や手のひら、足のうら、お腹と背中がじんましんでポツポツと赤くなって腫れていました。 顔は普段はならないのに二重顎、目が一重になっていますが、首は腫れていません。 足にはあまりじんましんが出ていないのですが、胴体部分がほとんど真っ赤です。 足首から下が腫れてぱんぱんになっています。 本人もかゆいのか朝からずっと機嫌が悪いです。 今のところ皮膚症状だけな気がしますが、アナフィラキシーとか怖いです。 病院は日曜日なので休みですが、明日の朝、受診するのがよいか、今日、これから夜間救急に行くべきか迷っています。 朝に抗ヒスタミン薬の入った風邪薬を飲んでおり、昼に皮膚科でもらったアレルギーの抗ヒスタミン薬を飲んで様子を見ていましたが、全然よくなりません。
左乳房上部の痛み
ここ1年ほど、左乳房の上部にのみじんわりとした痛みがあります。鋭い痛みではありません。少し筋肉痛にも似た痛みです。常にあるわけではありませんが、ふとかになる瞬間がたびたびあります。 心配になって昨年の秋に婦人科を受診し、マンモグラフィーで調べて頂きましたが、何も症状はなく、「若いためホルモンの関係で痛むのだろう」と診断がありました。 心配はないのかもしれませんが、乳房の痛みは女性として通常あるものなのでしょうか?20代半ばのため、まだ胸が育っているとは思えず…。 触ったところしこりはないように思えますが、乳がん等が心配です。下着のサイズなども合っているため、外部の要因ではないと思います。
定期的な口まわりの腫れ
【症状】 唇の一部が痒い(少しヒリヒリする感じ)となってから、30分から1時間くらい経つと小指の爪くらいのサイズで腫れる。また、最初の腫れた箇所はその後3時間程度で収まるが、上唇から鼻先にかけて腫れ始め、右頬、左頬、口の中(左下の唇の裏側が口内炎のような腫れ)が出てくる。今回は、8月10日15時ごろから、唇がすこし痒いと思ったら、腫れはじめ、同日20時ごろには上唇から鼻(一部鼻の中も腫れ、鼻の両サイドを押すと固い)にかけて全体的な腫れ(河童みたいな口になった)。さらに、同じく左右の頬(唇の左右)、口の中も腫れるという症状が出ました。今までより少し治りが遅く、翌日のお昼過ぎまで上唇から鼻にかけては腫れていました。8月12日には、腫れはほとんどなくなりましたが、頬と顎の間くらいに少し違和感がありました。8月13日にはそれもなくなり、元通りになりました。(今回も前回も飲み薬など薬は使用はしておらず、自然に腫れがひきました)。なお、腫れについては、食べ物も、飲み物をとるときは不便ですが、痛みはなく、ちょっと痒いときがあるくらいです。 【頻度】 初めて症状が出たのは、今年3月下旬。それ以降、月1回程度でこうした症状が出ます。特に何か共通のものを食べたとか飲んだとかは覚えが無いのですが、直近2回(8月10日、7月12日)の発症時の共通点は、前日(発症時の24時間~28時間前)に成分献血(血漿)を行ったことです。直前に激しい運動、過労などはありません。 【その他】 唇をかむ癖があり、最初はそれをしていたことから発症したのかと思っておりました。時々、口の中を誤って噛んでしまったりすることもあります。しかし、最近は唇を噛んだりするのは気を付けています。直近の発症3日前に、ブラジリアンワックスで鼻毛の脱毛を行いました(過去に行った際には発症無し) いつも発症するときは、土日祝日か夜ばかりで、発症しているときに病院に行けません。 まず、何科の病院にかかればよいのかわからず、また、発症していないときに病院に行っても理解いただけるのでしょうか?(直近は腫れが酷かったので、写真撮影しておきました) 教えていただければ幸いです。 よろしくお願いいたします。
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