概要
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)とは、重篤(非常に重い)な呼吸不全が現れる病気のひとつです。重症肺炎や敗血症、急性膵炎、多発外傷などさまざまな原因により発症する呼吸障害です。非常に重い呼吸障害が生じるため、酸素投与や人工呼吸器の利用、膜型人工肺の利用なども行われます。命にかかわることも少なくないため、今後新たなる治療方法が開発されることが望まれる病気といえます。
原因
急性呼吸窮迫症候群は、何かしらの先行疾患を誘因として発症する病気です。先行疾患として挙げられるものとしては、肺炎や敗血症、多発外傷や高度の熱傷などが頻度として多いです。また、急性膵炎、有毒ガスの吸入、薬物中毒、溺水、肺挫傷、放射線肺障害、輸血なども原因となります。
健康な肺では、血液の中にある血液成分は隔離されています。しかし、急性呼吸窮迫症候群では血管の透過性が高くなるため、血液成分が血管の外に漏れ出てしまいます。それにより、本来は空気で満たされるべき空間が血液成分に置き換わってしまい、肺が持つガス交換機能が障害されてしまいます。
血管の透過性が高くなることを主体として発症する急性呼吸窮迫症候群は、専門的には「透過性亢進型肺水腫」と呼ばれることもあります。広範囲に肺が障害を受けることになるため、重篤な呼吸障害を起こします。
症状
肺のガス交換機能が障害されるため、息苦しさを感じるようになります。肺がうまくはたらかなくなるため、呼吸回数を増やすことで代償的に酸素の取込みを補おうとします。そのほかにも、肩で呼吸をする、喘鳴(呼吸時にゼーゼーと音がする)が聴こえる、肋骨の間が呼吸のたびにへこむ、などといった症状もみられます。呼吸窮迫症候群は、上記のような呼吸障害が1週間ほどの経過で急速に進行することが特徴です。
検査・診断
急性呼吸窮迫症候群を明確に診断することができる検査は現在(2018年)のところありません。診断のためには、うっ血性心不全や肺梗塞など呼吸不全を起こすような疾患を除外することが重要となります。そのため、詳細な病歴(これまでかかった病気など)聴取、重点的な身体診察などを行うことが必要です。ワンポイントの診察のみで判断するのではなく、時間経過も加味しつつ評価を繰り返すことも大切です。
また、胸部レントゲン写真や胸部CTといった画像検査も行われます。画像検査を通して、本来空気で満たされるべき空間が液体成分で置き換わっていることを確認します。そのほか、誘因となっている疾患の状態を評価することも切です。具体的には、肺炎や敗血症であれば、血液検査による炎症評価や痰・血液の培養による起炎菌の特定、急性膵炎であれば腹部CTや超音波検査、血液検査(膵臓の酵素を測定したりします)などを検討します。
治療
急性呼吸窮迫症候群による呼吸不全は重篤であり、命にかかわることもあります。そのため、積極的に治療を行うことが大切です。呼吸不全の症状に対しては酸素投与や非侵襲的陽圧換気、挿管を行ったうえでの人工呼吸管理などが行われます。
また、血管透過性が高くなったことで滲み出てきた細胞成分に対応するために、薬剤を投与することも検討されます。加えて、呼吸不全を引き起こした疾患に対しての治療をおこなうことも大切です。
肺炎や敗血症などがきっかけとなっている場合には、治療効果の期待できる抗生物質の投与を行います。熱傷が原因となっている場合には、適切な輸液療法、皮膚に対しての局所療法などが必要です。
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関連の医療相談が3件あります
肺の炎症のため加療中
2019.10に心臓大動脈弁、僧帽弁の置換手術後 溶血となり12に再手術し弁置換しました。のち徐脈頻脈症候群と診断され1.23にアブレーションをおこなう。直ぐに肺炎となり1.31にARDSといわれ現在人工呼吸器、人工心肺、透析加療中です。このままで本人の回復を待つと言われたが、他に治療法はないですか。死なせたくないです。よろしくお願いします。
重度の肺炎によりHCU?に。
1月15日に胸が苦しいと病院に行きましたところ、spo2が60で、即ICUにいれられました。nppvを使用し強い抗生剤をいれましたが、16日になっても肺の状態は悪く、酸素濃度100で、spo2が90前後で、医者に呼ばれ持病の重い肝硬変もあり、抗生剤をいれれば、普通1日でよくなるが、わるくなってるため、もって数日といきなり言われました。家族等あつめてくださいと。。それから意識はあり苦しいというので鎮静を8から10にして、一進一退が続き、23日まできました。調子がいい時は帰りたいとか喉がかわくといいます。本日23日は少しよくなり、酸素濃度75でspo2が90前後、鎮静剤10にして、麻酔剤1をいれられバイタル安定して眠っています。麻酔剤は暴れるため使用していますが、、今日先生に再度ききましたが、肺は若干よくなってるが、相変わらず白く、重い肝硬変もあり、手足はむくんできているし、やはり急変もあるし、体力勝負ですといわれました。。かわらず退院はできないみたいなことを言われました。この病院はでかいですが、人工肺などの機械はありません。 質問ですが、 このような状態の患者は助からないのが自然でしょうか?先生いわく運ばれた時点でかなり悪く数日の命が、いま9日もってるほうがラッキーみたいに言われ、1か月はないといわれまして、あとは鎮静をあげて楽に見送るのが自然の流れと。。。やたら消極的な先生でして、、、、 本人もまさか胸が苦しくきたら、いきなり死ぬのか?と驚いているとおもいますが、、、 やはり医学的に見込みはないものでしょうか? よろしくお願いします。
ドセタキセル後の胸や脇のチクチク痛み
H29年12月12日に乳がんと診断され、腫瘍が右乳房に6センチ、リンパ節転移あり、多発性肺転移、腸骨転移疑い、ステージ4、トリプルネガティヴの為抗がん剤治療による全身治療で延命治療しかないと病院の医師の診断。 12月26日より3週間に一度の抗がん剤治療(FEC)をして、2月27日に4回目の点滴を終え、3/20にCTで評価と同時にドセタキセルに薬を変えて治療を継続とのこと。CTの評価は胸の腫瘍は大して変わり無し。肺転移は大きくなったものもあれば、小さくなったものもあり。リンパ転移は縮小傾向とのこと。 3/20にドセタキセルを点滴、3/22白血球をあげるジーラスタを注射。 点滴のあとから、たまに肺、胸のあたりや脇、子宮のあたりにチクチクした痛みを感じます。これは薬の副作用と考えられますか?それとも、がん細胞が増えているものであれば不安です。
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