基準値・基準範囲(出典元:エスアールエル詳細)
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ヘモグロビンとは、血液中に含まれるタンパク質の一種です。鉄とタンパク質が結びついたもので、赤血球に含まれる赤色素のタンパク質のことを指します。鉄が赤色素を持っているため、血液は赤く見えます。
ヘモグロビンは、肺で酸素と結びつき全身に酸素を運ぶとともに、不要になった二酸化炭素を肺に運びます。血液中のヘモグロビンが少ないと全身の酸素量が減り、貧血症状(疲れやすい、立ちくらみ、息切れ、動悸など)が出るようになります。
ヘモグロビン不足の主な原因は鉄不足です。鉄がないとヘモグロビンを作り出すことができません。鉄不足による貧血を“鉄欠乏性貧血”といい、鉄供給の低下(鉄の摂取不足・吸収不良)、鉄需要の増加(思春期・妊娠)、鉄喪失(生理・婦人科疾患・消化管疾患など)が主な原因として挙げられます。反対にヘモグロビン濃度が高いと脱水症や多血症(赤血球増加症)の可能性があります。特に多血症では血液が濃くなるために血栓(血液の塊)ができやすく、放置すると脳梗塞や心筋梗塞といった重大な病気の原因に発展する場合があります。
ヘモグロビンの値は、一般的な健康診断でも実施される血液検査で赤血球数とヘマトクリット値(赤血球の割合)と一緒に測定されることが一般的です。
動悸や息切れ、立ちくらみ、頭痛、疲労感などの貧血症状がある場合、頭痛やめまい、赤ら顔などの症状から多血症が疑われる場合、脱水症が疑われる場合にも測定されます。そのほかにも、さまざまな血液疾患の診断で調べることがあります。
採血をしてヘモグロビン値を調べるため、半袖の服か、ひじ上までまくりやすいゆるめの長袖を着ていくようにしましょう。
検査は採血のみのため短時間で終了します。採血では注射針を刺して血液を採取することから、チクっとした軽い痛みを感じる場合があります。
医療機関によって基準値は異なりますが、一般的にヘモグロビン値の基準値は男性で13.5~17.6(g/dL)、女性で11.3~15.2 (g/dL)の範囲内です。これよりも小さい場合には貧血、大きい場合には脱水症や多血症が疑われます。
ヘモグロビン値が低い場合、鉄欠乏性貧血が疑われます。さらに貧血の原因を調べるため、女性では子宮筋腫や子宮がんなどの婦人科疾患の有無、閉経後の女性や男性では消化性潰瘍、痔、大腸ポリープ、がんなどの消化管疾患の有無を調べるために精密検査を行うことがあります。
婦人科疾患では視診や内診、経腟超音波検査、消化管疾患では便潜血検査などが行われます。再検査あるいは要精密検査となった場合には再受診することがすすめられます。
多血症が疑われる場合には、血液検査のほか、精密検査として血液中のエリスロポエチン(骨髄を刺激して赤血球を作り出すホルモン)の量を測定したり、遺伝子検査を行ったりすることがあります。
鉄欠乏性貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直すことが大切です。
鉄は体の代謝によって1日あたり成人男性で約1mg、成人女性で約0.8mg喪失し、生理の時にはさらに約0.5mg喪失します。鉄は体内で合成されないため、食事から摂取する必要があります。
また、食品中の鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄のほうが体内での吸収率が高いため、効率的に鉄を摂取するならレバーや赤肉、赤身魚(かつお・まぐろなど)などに多く含まれるヘム鉄を積極的に摂取するのがよいでしょう。
タンパク質は鉄とともにヘモグロビンの材料になり、ビタミンCは鉄の吸収を高める作用があることから、鉄と一緒にタンパク質やビタミンCを意識的に摂取することも大切です。近年、ベジタリアンやビーガンの方の鉄欠乏性貧血が増えているため、これらの方はかかりつけ医と鉄剤の補充について相談しましょう。
多血症には主にストレスが関係していて、肥満かつ喫煙している男性に多いといわれています。そのため、ストレスを減らす取り組みや、生活習慣の改善によって予防することが期待できます。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。