できすい

溺水

最終更新日:
2024年01月26日
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2024/01/26
更新しました
2020/08/31
更新しました
2017/04/25
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概要

溺水とは、水に溺れることで窒息をきたした状態です。

水に溺れると肺に水が入るなどして肺呼吸ができなくなり、体内の酸素が欠乏して窒息状態に陥ります。窒息状態が続くと最終的には命に関わりますが、救命できた場合でも酸素欠乏によって脳や肺に後遺症が生じることもあり、酸素欠乏の程度が予後を大きく左右します。

厚生労働省の人口動態調査によると、日本における不慮の溺死・溺水者は毎年7,000~8,000人前後といわれています。幼児では自力で水から脱出できないため、海や川、プールだけでなく、浴槽や洗濯機、水槽、水洗トイレなど、家庭内にも危険が潜んでいることから十分な見守りが欠かせません。

溺れた人を救助する際の注意点

溺れた人を救助する際、巻き込まれて二重事故につながる恐れがあるため、救助者側の安全を第一に考えて行動することが大切です。

具体的には、陸から救助用具(ロープのついた輪・ブイなど)や服・カバンなどを投げ、要救助者が掴んだのを確認してから陸に引き寄せます。引き寄せる際には重心を低くしたり、周囲の人に協力してもらったりして救助する側の安全確保を心がけましょう。

やむを得ず水に入って救助する場合も1人で行わず、周囲の人の協力を得て複数人が手をつないで1列になったり(ヒューマンチェーン)、浮き輪や板、手足などを使ったりして、自分自身の安全を考えて救助しましょう。

なお、水に浮く物として浮き輪のほかにも空のペットボトルやランドセル、ボール、クーラーボックスなどが挙げられます。こういった身の回りにある水に浮く物を知っておくことは有事の助けになります。

原因

溺水の病態の本質は低酸素血症で、水に溺れると肺に水が入る、あるいは一時的に声帯がけいれん収縮して呼吸が妨げられるため、肺が酸素を血液中に送ることができなくなります。その結果、血液中の酸素濃度が低下して心臓への酸素供給が途絶えてしまうため、最悪の場合は命に関わる可能性があります。また、心臓だけでなく肺や脳などさまざまな臓器への酸素供給が途絶えることで各臓器も障害されるため、救命できても後遺症が生じることがあります。

なお、溺水を引き起こしやすい主な要因として以下が挙げられます。

  • 子どもである
  • 飲酒、意識レベルや判断力に影響を与える薬の服用
  • てんかん発作など、一時的に体が不自由になる病気がある
  • 水中で意図的に長時間息を止める行為

症状

水が肺に入ると肺呼吸ができなくなって呼吸が停止し、次第に意識が消失します。脳の酸素欠乏によって、けいれんや皮膚が青紫色に変色するチアノーゼを伴うこともあります。

また、溺水した場合は肺感染症や頭部外傷・脊椎損傷(せきついそんしょう)低体温症などを合併することがあります。肺感染症は細菌に汚染された水が肺に入ることで生じ、頭部外傷・脊椎損傷は浅い水辺に飛び込んだ際に起こる場合があります。低体温症とは深部体温が35℃以下になった状態を指し、冷水で溺水した場合にしばしば陥ります。

また、細菌や砂、泥、藻類、化学物質などで汚染された水を飲んだ場合は、肺が損傷して誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)や急性呼吸切迫症候群が生じ、溺れてから数時間後に呼吸困難が現れる場合もあります(二次性溺水)。

検査・診断

酸素欠乏の状態などを調べるため、パルスオキシメーターを使って動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定し、異常があれば血液ガス検査や胸部X線検査を行います。

頭部外傷脊椎損傷にはX線検査やCT検査、低体温症に対して深部体温の測定、そのほか心電図検査など、病態に応じてさまざまな検査を行います。

治療

まずは声かけをして意識の有無を確認します(一次救命処置)。要救助者の反応に応じて次のような手当てをすると同時に、なるべく早く救急車を要請しましょう。

声かけに反応がない場合

声かけに反応がないときは、すぐに気道を確保します。片手で要救助者の額を抑え、もう片方の手で顎先を持ち上げて喉の奥を広げます。

呼吸がない場合は心肺蘇生を行います。心肺蘇生は胸骨圧迫を30回、人工呼吸2回のペースで行います。冷水に長時間水没していた人が蘇生した例もあるため、あきらめず心肺蘇生を続けましょう。

AEDが使用できる場合は、乾いたタオルなどで胸部の水を拭き取ってから、AEDの電極パットを胸部に貼り付けます。胸部が濡れていると体表でショートし、心臓に十分な電流が届かない場合があるため、必ず胸部の水を拭き取ってください。

なお、要救助者が低体温症に陥っている可能性もあることから、毛布やタオルなどで体を覆って保温することも大切です。

声かけに反応がある場合

意識がはっきりしている場合は自発呼吸が再開するため、水の吐き出しに備えて体を横向きにして寝かせます。腹部を圧迫して水を吐き出させる行為は、水が逆流して気管に入る恐れがあり危険です。無理に水を吐き出させないようにしてください。

病院での二次救命処置

心肺蘇生で要救助者が意識を取り戻したとしても、後から肺炎や呼吸障害を起こすこともあるため、救命後も病院の受診が必要です。

病院での治療としては、一次救命処置に引き続き、換気*や循環**の確保、蘇生後の管理などの二次救命処置が行われます。

*換気:空気を吸ったり吐いたりして、外気を取り入れ肺の空気を体外に出すこと。

**循環:心臓のはたらきによって、血液に含まれる酸素を体内へ送り届ける仕組み。

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