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HPVワクチンは男性も接種する必要があるの?〜自分やパートナーを守るためにもHPVワクチンを接種することが大切~

HPVワクチンは男性も接種する必要があるの?〜自分やパートナーを守るためにもHPVワクチンを接種することが大切~
坂本 昌彦 先生

佐久総合病院佐久医療センター 小児科 医長

坂本 昌彦 先生【執筆・監修】

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HPVワクチン子宮頸(しきゅうけい)がんを予防するワクチンだから男性には関係ない、と思う方もいらっしゃるかもしれません。実はそうではなく、男性にも大いに関係のあるワクチンなのです。これは、どういうことなのでしょうか。今回はHPVが原因となるがんについてお話しします。

HPV(ヒトパピローマウイルス)が関係しているがん子宮頸がん以外にも、中咽頭(ちゅういんとう)がん、肛門(こうもん)がんなどが報告されています。具体的に陰茎がんの36%、中咽頭がんの50%、肛門がんに至っては93%がHPV感染によるものとされています 1 

このことからも分かるようにHPVは実は身近なウイルスで、がんとも大いに関係しているのです。またHPVは主に性行為で感染するため、女性だけの問題ではなく、男性にも関係のあるウイルスです。

HPVが関係しているがんの中で、男性が特に知っておきたいがんは“中咽頭がん”です。これは(のど)の奥にできるがんで、男性に多いという特徴があります。

アメリカでは1年に約14,000人がHPVに関係して中咽頭がんに罹患しますが、これは女性の子宮頸がん(約11,000人)よりも多い数です 2 。そして、この約14,000人のうち約12,000人は男性です。日本でも中咽頭がんは年々増えており、私たちにも決して無関係の話ではありません。

HPVワクチンを接種する人が増えると、接種していない人のHPV感染症の発症も予防できることが報告されています 3 。これを集団免疫効果といい、多くの人がワクチンを接種することで集団全体のHPV感染率が下がっていくという仕組みです。

HPVは性交渉を通して感染することがほとんどです。そのため接種する男性が増えることは、パートナーの女性を守ることにもつながります。

ここまでがんの話をしましたが、HPVワクチンはがん以外にも、尖圭(せんけい)コンジローマという性感染症を予防できます。これは主にHPVが原因(約90%)で陰茎に「できもの」ができる性感染症で、かゆみが出たり、痛くなったりする病気です 4 。自然に治ることもありますが、レーザー治療や外科的な切除が必要になることもあります。

日本では年間約6,000人(男性約4,000人、女性約2,000人)の患者数が報告されています 5 。HPVワクチンの接種でこうした感染症を防ぐこともできます。

ここまで読まれて、HPVが男性にも関係あるウイルスであること、ワクチン接種で予防できることがお分かりいただけたかと思います。では、男性のHPVに関する理解度はどうでしょうか。

日本の男子大学生約1,000人を対象にしたアンケート調査では、子宮頸がんが女性の妊娠・出産に影響すると知っている人は約75%だったのに対し、男性の陰茎がんなどの原因にHPVが関係していることを知っていたのはわずか約17%でした 6 。多くの男性にHPVが「自分のこと」として捉えられていないことが分かります。この結果からも、正確な情報が広く行きわたることが望まれます。

HPV感染症は女性だけでなく男性にも関係があり、ワクチン接種により自身のがん性感染症を防ぐこともできます。そして、男性が感染しないことで女性にHPVをうつすことがなくなれば、女性を子宮頸がんから守ることにもつながります。

こうした理由から、海外では男性もHPVワクチンの接種対象となっている国が増えています。定期接種となっているオーストラリアでは、近いうちに子宮頸がんは撲滅される見通しです。日本でも2020年末に男性に対するHPVワクチンの承認が下りました。近い将来男子生徒にも定期接種ができるようになればと願っています。

参考文献

  1. 川名敬:ウイルス62(1),79-86,2012
  2. CDC:https://www.cdc.gov/cancer/hpv/statistics/cases.htm
  3. BMJ ;365:l1161,2019
  4. 国立感染症研究所ホームページ「尖圭コンジローマとは」:https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/428-condyloma-intro.html
  5. 厚生労働省.性感染症報告数:https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html
  6. 濵㟢祐実:川崎医療福祉学会誌30(1),139-146,2020

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