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子宮頸がんワクチンの積極的勧奨が中止されているのはなぜ?~海外の現状を踏まえ、国や私たちができることとは~

子宮頸がんワクチンの積極的勧奨が中止されているのはなぜ?~海外の現状を踏まえ、国や私たちができることとは~
加藤 友康 先生

国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科 科長

加藤 友康 先生

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HPVワクチンは接種することで、子宮頸しきゅうけいがんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防する効果があるとされるワクチンです。日本においては、現在でもその接種の是非を巡りさまざまな情報が飛び交い、混沌とした状況が続いています。そこで本記事では、HPVワクチン問題の流れを振り返り、日本だけでなく諸外国の現状も踏まえつつ、今後の展開について現時点の正しい情報を解説します。

日本では2013年4月にHPVワクチンが定期接種化されました。しかし、その直後の6月にワクチン接種後のさまざまな症状の訴えが相次いだとして、厚生労働省による接種の積極的勧奨が中止されています。

このさまざまな症状の訴えは、各種メディアでも繰り返し取り上げられ強いインパクトを残し、結果として2021年4月現在でもこの積極的勧奨は中止されたまま、ワクチン接種率は1%未満に落ち込んでいます。

HPVワクチン接種後に起こりえる症状としては、主に接種した場所の赤みや腫れ、痛みなどが挙げられます。また、まれに重い症状として呼吸困難などのアレルギー症状や手足に力が入らなくなるなどの神経系の症状が起きることもあるとされています。ただし、2020年10月に厚生労働省が出した資料によると、HPVワクチン接種後に生じた症状の報告数は1万人あたり9人で、そのうち医師や関係者が重篤*であると判断したな症状の報告数は1万人あたり5人と記されています。

*重篤な症状とは、医師や関係者による判断であり、重篤ではない場合も報告されることがあります。

この状況は、2015年12月にWHO(世界保健機関)により「薄弱なエビデンスに基づく政策決定は安全で効果的なワクチンの接種を妨げ、真に有害な結果をもたらす可能性がある」と指摘されているのをはじめとして、たびたび批判を浴びています。

また、日本産科婦人科学会のホームページにも、「将来、先進国の中で我が国に於いてのみ多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり、命を落としたりするという不利益がこれ以上拡大しないよう、国に対して、一刻も早くHPVワクチン接種の積極的勧奨を再開することを強く求めます」という記述が見られます。このように、国際的批判・学術界からの強い要請を受けているという背景がありながらも、いまだに国としては動くことができていないというのが現状です。

WHOは2018年に“子宮頸がんの撲滅を目指す”という方針を打ち出しています。この世界的な流れにしたがって、HPVワクチンは100以上の国で承認されています。そして、多くの国で9価ワクチンの導入と男児への接種という、より積極的な政策も進んでいます。

9価ワクチンというのは、さまざまな型があるHPVの中の9つの型への感染を予防するワクチンのことです。現在日本で承認されているのは2価あるいは4価ワクチンですが、それらよりも子宮頸がんの予防効果が高いとされています。

また、実際の成果としてHPVワクチン接種を早期に取り入れたオーストラリア・イギリス・米国・北欧などの国々では、HPV感染や前がん病変(がんの手前の状態)の発生が低下していることが報告されています。特に政策が進んでいるとされるオーストラリアでは、2028年に子宮頸がんは撲滅できるという研究結果も示されています。このように、適切な介入により子宮頸がんを撲滅させるというのが世界的な流れになっています。

これまで述べてきたような日本、そして世界における現状を踏まえたうえで、日本は実際どのような方向にかじを切っていくのでしょうか。

国では実際に、2019年11月に開催された厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会で積極的勧奨再開を巡る意見が出され、同じ月には自民党内にHPVワクチンの積極的勧奨再開を目指す議員連盟も発足しています。また、地方自治体では独自にHPVワクチン接種に関する情報提供を行っているところもあります。

行政には国内外で積み重ねられた科学的根拠を基に、現時点で正しいとされる政策を国民に提供する責務があります。確かにHPVワクチン問題がこれだけ複雑化した現状を考えると、積極的勧奨を再開するのは容易なことではありません。しかし、このようにさまざまな情報が飛び交っているなかでは国民に対して丁寧に科学的根拠を検討したという過程を示したうえで、政策を打ち出すことが必要です。

国の政策に加え、メディアや私たち国民の姿勢も同様に大切です。HPVワクチン問題がここまで複雑化した要因の1つには、メディアによる、時に科学的根拠を軽んじたとも捉えられかねない報道があります。そして国民もそういった報道を全て鵜呑みにせず、自ら吟味する姿勢が必要です。メディアにも国民にもやはり科学的根拠に基づく姿勢が非常に重要といえるでしょう。

これまでに解説したように、日本は現時点では積極的な接種を勧奨していない状況ではありますが、一人ひとりが接種することで社会全体を守ることにもつながるといわれています。また、世界的に見ると子宮頸がんのワクチン接種がすすめられており、子宮頸がんによる死亡者を減らすことが期待されています。そのため、実際に接種する際にはワクチンの有用性とリスクを正しく理解したうえで判断することが大切です。国ではHPVワクチンを含む予防接種ついての情報の提供、または相談窓口を設置しているほか、各市町村でも予防接種に関する相談を受け付けています。そのため、ワクチン接種にあたり疑問や不安がある場合は、厚生労働省あるいはお住いの各市町村の相談窓口に相談するとよいでしょう。

厚生労働省 予防接種情報

厚生労働省 感染症・予防接種相談窓口

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