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子宮頸がんを予防するHPVワクチンの有用性-若年層のがんを高い確率で防ぐ
現在、日本では子宮頸がんの罹患率・死亡率が増加しています。特に、20代・30代の女性の罹患率が増加していることは、若い女性の健康を守るという視点からも、少子化対策という視点からも、我が国にとって...
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子宮頸がんを予防するHPVワクチンの有用性-若年層のがんを高い確率で防ぐ

公開日 2016 年 05 月 24 日 | 更新日 2017 年 12 月 25 日

子宮頸がんを予防するHPVワクチンの有用性-若年層のがんを高い確率で防ぐ
井箟 一彦 先生

和歌山県立医科大学産科婦人科 教授

井箟 一彦 先生

現在、日本では子宮頸がんの罹患率・死亡率が増加しています。特に、20代・30代の女性の罹患率が増加していることは、若い女性の健康を守るという視点からも、少子化対策という視点からも、我が国にとって大変深刻な問題となっています。

子宮頸がんを予防するためには、定期検診を受けるだけでなく、10代のうちに「HPVワクチン」を接種することが有効です。実際に欧米諸国では、国が接種プログラムを実施してから7〜8年が経過しており、子宮頸がんの前がん病変が大きく減っています。本記事ではエビデンス(科学的な根拠)に基づくHPVワクチンの有用性について、和歌山県立医科大学産科婦人科教授の井箟一彦先生にお話しいただきました。

HPVワクチンは16型・18型(ハイリスク型)のHPVを遮断する

子宮頸がんの原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染であり、根本的な1次予防として、イギリス、アメリカ、オーストラリアなど、世界各国で10代前半の女性に対しHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種が国のプログラムとして実施されています。

HPVには多くの種類がありますが、HPVワクチンはハイリスク型で特に発がん性の高いHPVである16型・18型の感染を、未感染者においてほぼ100%予防することができます。16型・18型のHPVが原因の子宮頸がんは、「全子宮頸がん」のうち約60〜70%を占めています(日本における2009年のOnukiらのデータでは64.9%、混合感染を含めると67.1%)。この60%という数値にとらわれてしまい、「40%近くの子宮頸がんを予防できないワクチンは有用とはいえない」と反論する方もいます。

しかしながら、第一に過半数の子宮頸がんを予防できる意義は非常に大きいことです。また、第二にこの数値の母体となっている「全子宮頸がん」とは、高齢の方までを含めた「全年齢の子宮頸がん」を指していることを考えることも大切です。

このデータを年齢別に解析すると、我が国の20歳代の子宮頸がんの90%、30歳代の子宮頸がんの76%は16型・18型のHPVが原因となっています(図参照)。

つまり、検診受診率が低く、また進行が早い症例も比較的多いとされる若年世代に発症する子宮頸がんの多くは、ワクチンで予防可能な16型・18型が原因なのです。HPVワクチンによる一次予防効果は、これらの若年世代の子宮頸がん発症予防に、より大きな効果があるといえます。ただし、これら2つの型以外のHPVを原因とする子宮頸がんは、現在国内で発売されているワクチンでは予防できないため、二次予防としての検診(細胞診)も同時に必要であることは、いうまでもありません。

(スライド提供:井箟一彦先生、データはOnukiら Cancer Sci 100:1312, 2009より引用)
(スライド提供:井箟一彦先生、データはOnukiら Cancer Sci 100:1312, 2009より引用)

子宮頸がんを予防するためには10代でのワクチン接種が望ましい

HPVはごくありふれたウイルスであり、一度の性交渉で感染する可能性もあります。ですから、可能な限り多くの方の子宮頸がんを予防するためには、HPV未感染の割合が高い(Sexualデビュー前の)10代前半にワクチンを接種する必要があります。

ただし、現にHPV16/18型に感染してしまっている人には、それを排除するような効果はワクチンにはありません。

つまり、仮にある1学年の女性全員がHPV未感染だとし、ワクチン接種率100%を達成できたとすれば、その方たちの中から20代に発症する子宮頸がんの90%は回避され、一生涯でみても60%強の発症が回避されることが理論上は期待できることになります

HPVワクチン接種に関する日本の現状と先進諸国の取り組み

日本では2010年から2012年にかけて、中学1年生から高校1年生までの若い女性を対象に、公費でワクチン接種を助成する「ワクチン接種緊急促進事業」(厚生労働省による)を実施していました。この時期、ワクチン接種率が70%台を達成した自治体もありました。この女性たちが20代、30代になったときに、この世代からの子宮頸がんは激減することが推測されます。実際に、HPVワクチン接種プログラムを国家が主導となり実施し、接種率が70%を超える国では、プログラム開始から7〜8年が経過し、HPV感染率の減少と同時に、接種世代における子宮頸がんの前がん病変であるCIN2(中等度異形成)やCIN3(高度異形成)の有意な減少が示されています(図参照)。また最近のイギリスやオーストラリアにおける研究では、同世代のワクチンを接種していない人々においてもHPV16型・18型の感染率が低下する(これを“集団免疫効果”と呼びます)という報告もされています。子宮頸がんは前がん病変を経て浸潤がんへと進展していくことから、数年後〜十余年後には、これらの国々においては、子宮頸がんそのものが減少すると推測されています。近い将来、ワクチン接種による子宮頸がんの罹患率・死亡率減少という結果が、世界から発信されると考えられます。

(スライド提供:井箟一彦先生、CIN2:中等度異形成、CIN3:高度異形成)
(スライド提供:井箟一彦先生、CIN2:中等度異形成、CIN3:高度異形成、CIN2+: CIN2およびCIN3)

 

和歌山県立医科大学では、全ての婦人科がん患者さんに医学的根拠に基づいた説明・診療を徹底しており、患者さんとの強い信頼関係を築いている。また絨毛性疾患の取扱い規約や治療ガイドラインの確立に尽力し、全国の患者さんの相談・診療を行っている。
日本産科婦人科学会「HPVワクチンの効果と安全性に関する調査小委員会」委員長を務め、子宮頸がん予防のためのワクチンと検診に関するエビデンスに基づく医療情報の提供と啓発活動に尽力している。

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