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今、何が問題となっているのか? HPVワクチン接種勧奨中止の現状
子宮頸がん予防は、1次予防である「HPVワクチン」の接種と2次予防である「検診(細胞診)」の二つが揃って初めて成り立つものです。しかし、日本では「HPVワクチンに重篤な副作用があるのではないか」...
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今、何が問題となっているのか? HPVワクチン接種勧奨中止の現状

公開日 2016 年 05 月 25 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

今、何が問題となっているのか?  HPVワクチン接種勧奨中止の現状
井箟 一彦 先生

和歌山県立医科大学産科婦人科 教授

井箟 一彦 先生

子宮頸がん予防は、1次予防である「HPVワクチン」の接種と2次予防である「検診(細胞診)」の二つが揃って初めて成り立つものです。しかし、日本では「HPVワクチンに重篤な副作用があるのではないか」と、安全性を問題視する声が上がって以来3年近くにわたり、国による接種の推奨が差し控えされています。HPVワクチン接種勧奨中止が現在の日本にどのような現象をもたらしているのか、和歌山県立医科大学産科婦人科教授の井箟一彦先生にお伺いしました。

HPVワクチン定期接種化とその後の接種勧奨中止による接種率の激減

日本では2010年からの公費助成による接種促進に引き続き、2013年4月よりHPVワクチンが定期接種化されました。しかし、接種後に原因のはっきりしない長引く痛みや運動障害などの様々な症状が報告されたこと、さらにはメディアが重篤な『副反応』『副作用』として大々的に報道したことから社会問題となり、定期接種化後わずか2か月の2013年6月に、厚生労働省は原因や病態が明らかになるまで接種の勧奨(積極的な推奨)を中止しました。

※HPVワクチン問題と報道の問題については記事7「子宮頸がん予防ワクチンに関する報道の問題点とWHOからの勧告」をご覧ください。

これにより、定期接種は継続しているにもかかわらず接種率は激減し、2016年現在、接種率はゼロに近い状態となっています。つまり、子宮頸がん予防という視点からみると、少し上の世代の女性が受けることができた利益を受けられずにいる若い世代の方が現在進行形で存在しているということです。

日本だけが、グローバルエビデンスから離れたところにいる

ワクチン接種後の有害事象に関しては、世界各国で繰り返し検討され、それらの膨大なデータを基に、WHO(世界保健機関)は、ワクチンを中止する必要があるような懸念される有害事象は認められないと結論を出しました。WHOは、HPVワクチンの安全性と有効性を繰り返し世界に向けて声明として発表し、HPVに起因するがん予防を目的とする国家プログラムによるワクチン接種を強く推奨しています。

また、脆弱な根拠に基づくワクチンの危険性を示唆するような主張は、安全で有効なワクチンの不使用という真の健康被害をもたらすという警告をも発信しています。

同機関のワクチンの安全性に関する諮問委員会(GACVS)は、2015年12月17日に、本ワクチン接種の積極的勧奨が差し控えられている現在の日本の状況に対して、「若い女性たちは、本来予防可能であるHPV関連がんの危険にさらされたままになっている。不十分なエビデンスに基づく政策決定は、安全かつ効果的なワクチン使用の欠如につながり、真の被害をもたらす可能性がある」と改めて意見を述べています

一方、国内では、厚生労働省の専門部会による慎重な追跡調査と詳細な検討が継続していますが、2年半以上を経過しても未だ問題の解決には至らず、ワクチンの接種勧奨再開にも至っていません。このままでは、先進国の中で、日本だけが将来的に子宮頸がんの罹患率・死亡率が高い国となるのではないかと懸念されています。

国によるワクチンの「勧奨中止」は「接種禁止」と同じ結果をもたらす

現在でも各家庭の判断によりワクチンを接種することはできるため、「厚労省は接種を禁止したわけではなく、勧奨を中止しただけである」と主張される方もいますが、これは日本の現状と照らし合わせると正論であるとはいえません。というのも、勧奨中止以前には70%前後であったワクチン接種率は、現在はほぼ0%にまで低下しており、結果として接種を禁止したこととほとんど同じ数値になってしまっているのです。

公的機関の決定は国民に対して甚大な影響を与える

国内のある地域における最近の調査研究の論文では、現在、自分のお子さんにHPVワクチン接種をさせたくないと考えている保護者の方に対して、その理由をたずねると『厚労省が推奨を中止しているから』という理由が多くを占め、その中には、「厚労省が接種勧奨を再開したら、お子さんにHPVワクチン接種を受けさせたいと思いますか」という問いに「はい」と回答している保護者の方もみられます。それほどまでに、国の機関が、あるワクチンに関する決定や見解を出すことは国民に大きな影響を与えます。

現在、日本は中途半端ともとれる『定期接種は継続しているが勧奨はしない』状態を続けており、世界からも批判を浴びています。

子宮頸がんによる死亡率を減らすためにワクチンを多くの方に打ってほしいと考えるならば速やかに勧奨再開宣言をすべきですし、健康被害といわれる症状に関する検討を重ねた結果、科学的証拠をもって「危険である」との判断をしたならば、ワクチンの接種を禁止すべきでしょう。

次の記事「HPVワクチンと接種後の多様な症状-科学的な因果関係の検証が必須」では、厚生労働省の副反応検討部会がこれまで行ってきた検討結果とHPVワクチン接種後症状の見解と対応、ワクチン接種との因果関係の検証の必要性についてお話しします。

和歌山県立医科大学では、全ての婦人科がん患者さんに医学的根拠に基づいた説明・診療を徹底しており、患者さんとの強い信頼関係を築いている。また絨毛性疾患の取扱い規約や治療ガイドラインの確立に尽力し、全国の患者さんの相談・診療を行っている。
日本産科婦人科学会「HPVワクチンの効果と安全性に関する調査小委員会」委員長を務め、子宮頸がん予防のためのワクチンと検診に関するエビデンスに基づく医療情報の提供と啓発活動に尽力している。

「子宮頸がん」についての相談が8件あります

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