※本記事は、HPVワクチン接種の積極的勧奨が中止されていた当時にその問題点を指摘する意図で2016年に制作しました。現在では積極的勧奨は再開されています。現在の最新情報は、HPVワクチンの基礎情報や、厚生労働省の発表情報をご確認ください。
これまでの記事に記したように、増加する子宮頸がんの罹患率・死亡率を抑えるため、厚生労働省によるHPVワクチンの接種勧奨再開が待たれています。10代の若い女性やその保護者が安心してワクチン接種に臨めるよう、各県における相談窓口や協力医療機関の設置、さらには日本医師会・日本医学会が主導となり作成した「接種後症状に対する診療の手引き」の発刊などがおこなわれてきました。和歌山県立医科大学産科婦人科教授の井箟一彦先生に、HPVワクチン接種に対する支援体制についてお話しいただきました。
国が勧奨をいったん中止してしまったHPVワクチンの接種を、再び不安なく受けていただくには、国民の安心と信頼を取り戻す取り組みが必要です。そのために私たち医師が特に注力すべきは、下記の3点であると考えます。
(1)HPVワクチン接種のベネフィットとリスク(有効性と有害事象)について、十分に接種希望者とその保護者に説明し、インフォームドコンセントをとる体制作り
(具体的なベネフィットや世界の考え方、リスク(接種後の症状の頻度など)についてはこれまでの記事で述べてきたとおりです。)
(2)接種後に現れるどのような症状であっても、地域や専門医療機関で診療できる体制を担保し、接種希望者が安心してワクチンを接種できる環境を整えること。
(3)HPVワクチンについての正しい知識を国民に知ってもらうため、私たち医療者や学術団体から、あるいは科学的に正しい報道をするメディアを通して情報を発信していくこと。
※(3)に関しては、記事7「子宮頸がん予防ワクチンに関する報道の問題点とWHOからの勧告」をご覧ください。
厚生労働省は、ワクチンの接種後に何らかの症状が現れたときに、各地域ですぐに相談できる「窓口」となる医療施設の選定を行いました。各都道府県に少なくとも1か所以上の協力医療機関が選定され(2016年3月8日現在全国で85施設が選定済み)、その中で関連する各科が協力して、接種後の症状に対応する医療体制が整備されています。さらに必要が有れば、全国27か所(24大学)の厚労省研究班の専門医療機関に紹介するシステムもあり、安心して接種を受けられる体制が整ってきたと いえます(図参照)。
(参考:「ヒトパピローマウイルス感染症の予防接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関について」厚生労働省(外部サイト))
また、日本医師会と日本医学会が主導となり、「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」が作成され、既に実用化されています。
(外部サイト:「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」)
この手引きは、痛みの専門家・神経内科・小児科・産婦人科・精神神経科など各専門家が多角的に連携して作成した非常に画期的な手引きです。
接種後症状を訴える方に対して、接種医や地域の医療機関においての、問診・診察・治療を含む初期対応のポイントやリハビリテーションを含めた日常生活の支援、家族・学校との連携の重要性についても明記されました。
これらの診療体制および手引きの両者が整備されたことで、接種希望者がより安心してワクチン接種を受けられる環境が整ってきたといえます。
和歌山県立医科大学 産科婦人科 教授
和歌山県立医科大学 産科婦人科 教授
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医・代議員日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医・婦人科腫瘍指導医・代議員日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本臨床細胞学会 会員
和歌山県立医科大学では、全ての婦人科がん患者さんに医学的根拠に基づいた説明・診療を徹底しており、患者さんとの強い信頼関係を築いている。また絨毛性疾患の取扱い規約や治療ガイドラインの確立に尽力し、全国の患者さんの相談・診療を行っている。日本産科婦人科学会のHPVワクチンに関する委員会の委員を務め、子宮頸がん予防のためのワクチンと検診に関するエビデンスに基づく医療情報の提供と啓発活動に尽力している。
井箟 一彦 先生の所属医療機関
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