子宮頸がんの治療はステージ分類に基づいて決定され、主に手術療法と放射線療法・化学療法(抗がん剤治療)が行われます。また、放射線と抗がん剤を同時に並行して行う(同時化学放射線療法)ことも多いです。このような治療法はステージ分類だけではなく、組織型や年齢、合併症や治療後の挙児希望の有無などさまざまな条件を考慮して総合的に判断されます。子宮頸がんに限りませんが、手術でがんを取り除いたとしても再発のリスクはあり、術後も自分の病状を十分に知って、定期的に通院して経過観察を行うことが大切です。
では、子宮頸がんの術後の経過観察ではどのようなことが行われるのでしょうか。また、再発の可能性はどの程度あるのでしょうか。
※本記事は一般医療ライターが執筆し、当該領域専門医の監修のもと掲載している情報です。
子宮頸がんの手術後は、がんの再発や転移を早期発見したり、術後の合併症や後遺症がないかどうかを確認したりする目的で経過観察が行われます。以下では、子宮頸がん手術後の経過観察の間隔や検査内容などについて解説します。
子宮頸がんの標準的な経過観察の間隔の目安は、1~2年目は1~3か月ごと、3年目は3~6か月ごと、4~5年目は6か月ごと、それ以降は1年ごととなります。
子宮頸がんの再発の多くは骨盤内で起こるため、経過観察中は内診や経腟エコー検査、腟の奥の細胞診が行われます。CTやMRI、PETといった画像検査は、再発が疑われる際に精密検査として行われます。
手術後の病理組織検査で再発のリスクが高い群に分類され、術後の補助治療(再発予防のための抗がん剤化学療法や放射線療法など)を行った場合は、治療終了後6か月目あるいは12か月目などに、必要に応じてCT検査を行って再発がないかを調べることもあります。 また、治療前の血液中の腫瘍マーカー検査(SCC、CEA、CA125など)で高い値がみられた場合には、治療後も血液検査で定期的に腫瘍マーカーを計測し経過をフォローしていきます。
ごく初期のがんや前がん病変で妊孕性温存を希望して子宮頸部の円錐切除術を受けられた場合は 、まれに残した子宮に再発する可能性があるので、子宮頸部の定期的な細胞診検査は必須です。円錐切除後、1年ぐらい再発がなければ、妊娠が許可されます。
なお、円錐切除後に妊娠をされた場合は早産の率が通常より高くなるといわれており、妊婦健診の際にも注意が必要になります。
規則正しい生活を送ることで、体調の維持や回復を図ることができます。禁煙、節度のある飲酒、適度な運動などを日常的に心がけることが大切です。ただし、術後の注意点は、治療内容や手術の種類、患者さんの状態によっても異なります。そのため、詳細については必ず医師に確認するようにしましょう。
以下では、術後に注意したい症状や行動を解説します。
子宮を広範囲に切除する広汎子宮全摘術などの手術を受けた場合は、排尿機能に関わる神経を傷めることがあるため、排尿障害が起こることがあります。
たとえば、尿意を感じにくくなったり、尿意があってもうまく排出することができなくなったり、尿もれが起こりやすくなったりすることもあります。ただし、通常は排尿の訓練や必要に応じて排尿をしやすくする薬の内服などにより、術後数週間から数か月程度でほとんどの方は尿意の感覚が回復しますが、まれに長期にわたって排尿がしにくいままの方もいます。
また、手術後に便意の調子が悪くなったり便通がスムーズでなくなったりすることも、まれに起こります。
50歳より前に子宮とともに卵巣を摘出した場合や卵巣を含む骨盤内に放射線療法を受けた場合は、卵巣欠落症状がみられることがあります。
卵巣欠落症状とは、のぼせや発汗、イライラなどを感じたり、不眠になったり、腟が萎縮して炎症を起こしたり、尿漏れが生じたり、骨粗しょう症などを引き起こすことをいいます。この場合は、必要に応じてホルモン剤(エストロゲン製剤の飲み薬や貼り薬)などの投与を受けることもあります。
骨盤のリンパ節を取る手術を受けた場合は、リンパの流れが停滞してしまうため、下肢のむくみ(リンパ浮腫)が起こることがあります。そのため、長く立ち続けることを避けたり、疲れたら自分で足のマッサージをしたりするなどを心がける必要があります。
また、専用の弾性ストッキングを着用することもあります。症状が重い場合は、リンパ浮腫を専門とする医師がいるリンパ浮腫外来などの受診がすすめられます。
子宮摘出の手術を受けた後であっても性行為をすることは可能です。ただし、手術直後は性行為により出血しやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりすることが懸念されるため、いつ頃から性行為をしてよいか、主治医もしくは看護師に確認するようにしましょう。
子宮頸がんが再発する場合、再発のタイミングはおよそ75%が治療から2~3年以内です。ただし、治療から5年以上経過してから再発する方もまれにいるため、治療後は前述のとおり定期的に外来通院し、経過観察を継続して行うことが大切です。
また、一般に子宮頸がんのI期まででリンパ節転移がなければ、90%程度またはそれ以上の生存率であり再発はまれですが、はじめからリンパ節転移があるケースやがんのサイズが大きいケース、あるいは子宮の外までがんが広がっているII期以上になると、進行とともに再発率も高くなります。
手術を行った後の摘出した子宮やリンパ節の病理組織検査の結果で、がんの広がり具合やその後の再発の可能性のリスクも分かるので、主治医から自分の術後の診断をしっかり聞いて、術後の再発予防のための追加治療の必要性の有無やその後の経過観察の頻度についてもよく相談をして決めることが大切です。
子宮頸がんの手術で子宮を全摘した場合でも、目に見えない小さながんが残っている可能性があります。そのため、子宮があった場所やその周辺の骨盤内に再発するケースもあるほか、子宮より遠い位置にある臓器にがんが転移して再発するケースもあります。
遠隔再発する部位としては、肺や傍大動脈リンパ節、胸部や鎖骨周囲のリンパ節、骨などがあります。症状がなくても、前述したような定期的なCT検査や血中腫瘍マーカーの上昇などで再発が見つかることもあります。
自分が手術を受ける際に、それがどのような手術なのか、またその先の治療計画を知らないままだと手術に際して不安になりがちです。医師は患者さんの年齢や希望、がんの状態などを考慮したうえで適切な治療を選択しますが、これから受ける手術や術後の治療計画は医師だけではなく、患者さん本人も十分に理解することが非常に大切です。そのため、手術や術後の生活や治療について疑問点や不安がある場合には、医療者に相談し説明を受けるようにしましょう。
和歌山県立医科大学 産科婦人科 教授
和歌山県立医科大学 産科婦人科 教授
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医・代議員日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医・婦人科腫瘍指導医・代議員日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員日本臨床細胞学会 会員
和歌山県立医科大学では、全ての婦人科がん患者さんに医学的根拠に基づいた説明・診療を徹底しており、患者さんとの強い信頼関係を築いている。また絨毛性疾患の取扱い規約や治療ガイドラインの確立に尽力し、全国の患者さんの相談・診療を行っている。日本産科婦人科学会のHPVワクチンに関する委員会の委員を務め、子宮頸がん予防のためのワクチンと検診に関するエビデンスに基づく医療情報の提供と啓発活動に尽力している。
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子宮頸がん
はじめまして。7月中旬くらいに子宮頸がん検診を受け、細胞診の結果が、軽度異形成となりました。そのあと、精密検査を受け今検査結果待ちです。細胞診で軽度異形成でしたが、精密検査で中度や高度異形成やガンがみつかることはありますか? 不安な日々を送っています。一応、病院の先生にはそんなに深刻なことではないからって言われましたが、凄く不安です。
子宮頚がんでも出産可能でしょうか。
大変お世話になっております。 子宮頚がんのクラス3aです。 まだ月一回の検診に行っておりません。 もし、今妊娠していたら出産は可能なのでしょうか。 万が一を考えて不安になっております。 次回の検診日が先なので、 至急回答をお願い申し上げます。
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