がんポータルサイトはこちら
編集部記事

性交渉の回数が多いと子宮頸がんのリスクも高まるの?〜予防にはワクチンと検診の両方を受けることが大切〜

性交渉の回数が多いと子宮頸がんのリスクも高まるの?〜予防にはワクチンと検診の両方を受けることが大切〜
加藤 友康 先生

国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科 医師

加藤 友康 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

子宮頸(しきゅうけい)がんとは、子宮の入り口である子宮頸部と呼ばれる部分にできるがんのことで、主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の子宮頸部への感染です。HPVは主に性交渉によって感染することから、性交渉の回数やパートナーの数が多い女性のほうが子宮頸がんの罹患リスクが高いと考える方も少なくありません。では、性交渉の回数やパートナーの数によって、子宮頸がんの罹患リスクは異なるのでしょうか。

本記事では子宮頸がんの原因や性交渉との関係について詳しく解説します。

子宮頸がんの主な原因は、性交渉によるHPV感染で発症することです。しかし、HPVに感染してすぐに子宮頸がんを発症するわけではなく、数年以上の長い年月をかけて“異形成”と呼ばれる状態になり、そこからさらに数年以上かけて子宮頸がんに進行します。

すなわち、子宮頸がんの発症には、HPVウイルスへの感染に加えて感染が持続することが条件です。そのため、性交渉の回数やパートナーの数が多い場合はHPVの感染機会も多くなるため、HPV感染を持続させる原因の1つとなり、子宮頸がん発症のリスクを高めることになります。

前述のとおり、性交渉の回数やパートナーの数が多いほどHPVの感染機会が増え、子宮頸がんのリスクが増加する可能性は否定できません。

その一方で、経験人数が少なければHPVに感染しないというわけではありません。また、まれですが子宮頸がん、特に腺がんの中には、HPVが検出されずHPV感染以外の原因が疑われるものも報告されています。このことからも、性交渉の経験がなくても子宮頸がんを発症する可能性がまったくないと言い切ることはできません。つまり、子宮頸がんは性活動が活発でなければ発症しないわけではないことを知っておくことが大切です。

子宮頸がんはさまざまながんの中でも予防方法とその効果がはっきり示されているがんだといわれています。子宮頸がんの予防策には、“ワクチン接種”と“子宮頸がん検診”の2つがあります。

HPVはおよそ100種類ありますが、子宮頸がんの発症リスクが高い型は約14種類あります。この中で、子宮頸がんの原因となるHPV16と18型の感染を予防するワクチン(HPVワクチン)が開発されていました。国内の研究では、ワクチンを接種した90%以上の方で子宮頸がんの発症リスクが高い“HPV-16、18型”の90%以上の感染を予防したという報告が示されています。

しかし、発症リスクが高いHPVの全ての型に有効なわけではなく、接種したとしても全ての方に予防効果がみられるわけではありません。そのため、ワクチン接種に加えて定期的な子宮頸がん検診を受けることが非常に大切です。

子宮頸がんはがんの中でも進行がゆっくりであるといわれており、“異形成”と呼ばれる段階を経て子宮頸がんに移行します。子宮頸がん検診は子宮頸がんに進行した状態だけではなく、がんの前段階も発見でき、子宮頸部の細胞を少量こすり取るだけで検査が可能です。子宮頸がん検診は、2年に一度検査を受けることで子宮頸がんによる死亡率を減らすことが証明されており、多くの自治体で公費助成による検査が受けられます。

HPVワクチンは、2013年から安全性に懸念があるとして“積極的勧奨”が中止されていました。しかし、世界的にも安全性が認められたことで、2021年11月にHPVワクチンの積極的勧奨の再開が決まりました。厚生労働省は「HPVワクチンを1万人が受けることで、受けなければ 子宮頸がんにかかっていた約70人のがんを防ぐことができ、 約20人の命が助かる」と試算しています。HPVワクチンを接種することに際して不安や疑問がある場合は、かかりつけ医や看護師に相談するとよいでしょう。また各都道府県などには相談窓口が設置されているため“HPVワクチンに関する相談先一覧”を参考に確認するのも1つの方法です。

子宮頸がんは、HPVの持続感染によって引き起こされる病気です。HPVは1回でも性交渉の経験がある女性であれば誰もが感染する可能性がありますが、性交渉の経験が少なければ無関係な病気というわけではありません。しかし、子宮頸がんはHPVワクチンの接種や子宮頸がん検診によって予防できる病気でもあります。そのため、子宮頸がんの原因とリスクを知ったうえで、対策を心がけることが大切です。

日本では子宮頸がんの発症の若年化が顕著です。実際に2019年に子宮頸がんで亡くなった方のうち49歳以下は573人で、全体の約2割を占めていることが明らかになっています。このようなデータはがん情報サービスセンターのサイトで死亡率や罹患率、生存率などの数値をデータ化して一般向けに提供しているため、こういった情報も参考にするとよいでしょう。

【がん情報サービスセンター】 グラフデータベース

受診について相談する
  • 国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科 医師

    加藤 友康 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。
この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

    実績のある医師

    周辺で子宮頸がんの実績がある医師

    順天堂大学医学部附属練馬病院 産科・婦人科教授/診療科長

    おぎしま だいき

    順天堂大学医学部附属練馬病院―“ワンチーム”で充実した医療を地域に届ける

    練馬区の医療を支える順天堂大学医学部附属練馬病院によるを不整脈・子宮頸がん・大腸がん・前立腺がんテーマにした特集です。

    内科、アレルギー科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科、総合診療科、病理診断科

    東京都練馬区高野台3丁目1-10

    西武池袋線「練馬高野台」 徒歩3分

    独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 産婦人科 科長

    やました ひろし

    国立病院機構 東京医療センターー低侵襲な医療を患者さんに提供することで地域医療に貢献する

    区西南部医療圏の医療を支える東京医療センターによる、前立腺がん・子宮体がん・胃がん.大腸がん・慢性中耳炎.真珠腫性中耳炎の治療をテーマにした特集です。

    内科、アレルギー科、血液内科、リウマチ科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、緩和ケア内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科、放射線診断科、放射線治療科

    東京都目黒区東が丘2丁目5-1

    東急田園都市線「駒沢大学」 徒歩15分

    国際医療福祉大学三田病院 婦人科部長、国際医療福祉大学 産婦人科学教授

    うえだ かず
    上田先生の医療記事

    6

    内科、血液内科、外科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、糖尿病内科、内分泌内科、脳神経内科、血管外科、脊椎脊髄外科、放射線診断科、放射線治療科、頭頸部外科、病理診断科

    東京都港区三田1丁目4-3

    都営大江戸線「赤羽橋」赤羽橋口出口または中之橋出口 徒歩5分、東京メトロ南北線「麻布十番」3番出口 徒歩8分、都営三田線「芝公園」A2番出口 徒歩10分、JR山手線「田町」三田口出口  車5分 徒歩20分

    がん研究会有明病院 放射線治療部 部長

    よしおか やすお

    内科、血液内科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、歯科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、腫瘍内科、感染症内科、消化器内科、肝胆膵内科、肝胆膵外科、放射線診断科、放射線治療科、頭頸部外科

    東京都江東区有明3丁目8-31

    ゆりかもめ「有明」 徒歩2分、りんかい線「国際展示場」 徒歩4分

    国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科 医師

    かとう ともやす
    加藤先生の医療記事

    7

    内科、血液内科、精神科、脳神経外科、呼吸器外科、消化器外科、小児科、小児外科、脳脊髄腫瘍科、骨軟部腫瘍科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、歯科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、緩和ケア内科、消化器内科、肝胆膵内科、肝胆膵外科、放射線診断科、放射線治療科、頭頸部外科、病理診断科

    東京都中央区築地5丁目1-1

    都営大江戸線「築地市場」A1番出口 徒歩3分、東京メトロ日比谷線「築地」2番出口 徒歩5分、東京メトロ日比谷線「東銀座」6番出口 徒歩6分

    関連記事

  • もっと見る

    「子宮頸がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。

    メディカルノートをアプリで使おう

    iPhone版

    App Storeからダウンロード"
    Qr iphone

    Android版

    Google PLayで手に入れよう
    Qr android
    Img app