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子宮頸がんの治療の決め方〜治療による妊娠への影響と、治療後の後遺症とは〜

子宮頸がんの治療の決め方〜治療による妊娠への影響と、治療後の後遺症とは〜
坂本 育子 先生

地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院 婦人科 部長/ゲノム検査科 部長

坂本 育子 先生

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子宮頸がんとは、子宮の入り口部分を指す“子宮頸がん”にできるがんのことです。近年は発症年齢のピークが若年化しつつあり、20~30歳代の若い女性に多く見られるといわれています。

子宮頸がんは比較的治療予後のよいがんの1つであり、早期に適切な治療を行えば、良好な結果を期待することができます。一方で、妊娠・出産を望む女性に発症した場合は、病気の治療に加えて妊孕性(にんようせい)(妊娠するための力)をどれだけ維持するかも重要な要素となり、子宮頸がんの治療方針はがんの進行度や患者の希望など、さまざまなことを考慮しながら決めていくことになります。

子宮頸がんの治療は、大きく分けて手術、放射線療法、薬物療法の3つがあります。これらのうち、どの治療を行うかは病気の進行度によって異なります。進行度は病変の広がり方や転移の有無によって決められ、以下のとおり病期(ステージ)と呼ばれるカテゴリに分類されます。

I期

がんの範囲が子宮に限られており、子宮以外には病変が認められない状態です。がんの深さや範囲によって、さらにIA1期、IA2期、IB1期、IB2期に分けられます。

II期

がんが子宮に加え、腟や子宮周辺組織に広がっていますが、その程度は高度ではない状態です。広がりの範囲が腟に限られるか子宮周辺組織にまで及ぶかによって、IIA1期、IIA2期、IIB期に分けられます。

III期

がんが腟や子宮周辺組織にまで広がっており、かつその程度が高度である場合です。広がりの範囲が腟に限られるか子宮周辺組織(骨盤壁)に達するかによって、IIIA期、IIIB期に分けられます。

IV期

がんが膀胱や直腸にまで進行しているか、遠隔転移が認められている状態です。遠隔転移の有無によってIVA期、IVB期に分けられます。

手術はI~II期の子宮頸がんに対して選択され、子宮頸部のみを切除する円錐切除術や、子宮全摘手術があります。

子宮全摘手術では、子宮のみを切除する方法と子宮以外の卵巣や卵管、腟なども含めて広範囲に切除する方法(広汎子宮全摘術)があります。また、妊孕性を残すために子宮体部と卵巣を残す広汎子宮頸部摘出術と呼ばれる方法もあります。

がんに放射線を照射することでがん細胞を傷つける治療です。全てのステージで用いることができます。

IB2期以上の子宮頸がんでは、放射線療法と薬物療法(化学療法)を併用する化学放射線療法が行われることもあります。

抗がん剤を使用する治療です。全身のがんに効果があるため、遠隔転移がある場合や進行したがんに対して用いられます。薬物療法は治癒を目指すものではなく、生存期間を延長することを目標とします。

IB1期までの子宮頸がんであれば妊孕性を温存できる場合があり、妊娠を希望する場合は子宮を温存する手術(円錐切除術や広汎子宮頸部摘出術)が選択できることがあります。ただし、治療方法は個々の状況によって異なるため、全ての患者さんに当てはまるとは限りません。治療法は再発のリスクと患者さんの希望を考慮して、医師と相談しながら決められます。

子宮頸がん治療が妊孕性に与える影響には以下のものがあります。

子宮や両方の卵巣を摘出した場合は、妊娠することができなくなります。子宮頸部のみを切除した場合は、妊娠することはできるものの妊娠しにくくなったり、流産早産しやすくなったりするといわれています。

子宮頸がんの放射線療法と薬物療法は妊孕性を大きく低下させるため、妊孕性の温存を目的とする場合は原則として放射線療法・薬物療法は行われません。

子宮頸がんの治療によって妊孕性が失われる可能性が高い場合には、受精卵(胚)や未受精卵子、卵巣組織の凍結といった方法が検討できる場合があります。どの方法を選択するにせよ、希望や不安な点がある場合には納得するまで医師に相談することが大切です。

子宮頸がんの治療法別の後遺症には以下のものがあります。

手術の後遺症は切除範囲によって異なり、切除範囲が広いほど子宮以外の組織にもダメージを与えるため、さまざまな後遺症が見られるようになります。

代表的な後遺症には、足や下腹部のむくみ(リンパ浮腫(ふしゅ))、排尿障害、便秘、腸閉塞などがあります。また、切除範囲が卵巣にまで及んだ場合は女性ホルモンが減少するため、ほてり、発汗、動悸といった更年期障害に似た症状が現れやすくなります(卵巣欠落症状)。特に、若い患者さんほど症状が強くなる傾向があるといわれています。これを避けるため、卵巣を温存する方法が選ばれることもあります。

治療後早期に現れる急性反応と、治療からしばらく経ってから現れる晩期合併症があります。

急性症状には照射部位の炎症、だるさ、吐き気などがありますが、時間が経つと軽快していくことが多いでしょう。晩期合併症には消化管からの出血や閉塞や尿路障害などがあり、治療後数か月から数年経って現れることもあります。

また、卵巣にダメージがあった場合は、更年期障害に似た卵巣欠落症状が現れることもあります。

薬物療法の副作用は使用する薬剤によって異なります。細胞障害性抗がん剤と呼ばれるタイプの薬剤では吐き気や嘔吐、脱毛、手足のしびれといった副作用が見られることがあります。

一方、分子標的薬と呼ばれる薬のうち子宮頸がんに用いられるものでは、傷が治りにくい、高血圧、たんぱく尿、出血などが見られることがあります。

子宮頸がんの治療は、がんの進行度に加え妊孕性の温存も重要な要素となるため、患者によって多岐にわたります。そのため、患者本人も自身のステージや治療方針を理解することが重要です。分からないことや不安なことがある場合は医師に相談し、一つひとつ解消しながら、自分にとってもっともよい治療を受けられるようにしましょう。

参考文献

  1. 子宮頸癌治療ガイドライン.日本婦人科腫瘍学会.2017年(閲覧日:2020年10月26日)
  2. 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン.診療アルゴリズム がん患者に対する妊孕性温存のアセスメントと相談のアルゴリズム(閲覧日:2020年10月26日)
  3. がん情報サービスウェブサイト.子宮頸がん(閲覧日:2020年10月26日)
  4. がん情報サービスウェブサイト.妊よう性 女性患者とその関係者の方へ(閲覧日:2020年10月26日)
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