
子宮体がんは子宮体部にできるがんのことを指し、子宮内膜がんとも呼ばれます。子宮体がんではピルの服用により発症リスクが低下するといわれる一方で、乳がんなど、ほかのがんの発症リスクが高まるといった報告もあります。そのため、ピルの服用に際してピルのことを十分に理解しておくことが非常に重要です。
本記事では子宮体がんをテーマに、ピルの服用によって子宮外がんの発症リスクが低下する理由や、ピル服用に際する対策について詳しく解説します。
ピルの服用は子宮体がんの発症リスクの低下につながると考えられています。
子宮体がんの発症には、エストロゲンという卵胞ホルモンが深く関わっており、エストロゲンの値が高いと子宮内膜増殖症を経て子宮体がんや子宮内膜がんを発症することが分かっています。そのため、以下に当てはまる人はエストロゲンの値が高くなることがあり、子宮体がんの発症リスクがあるといえるでしょう。
しかし、このようなメカニズムで発症する子宮体がんの場合、ピルの服用によって発症リスクを低下させることができるといわれています。これはピルに含まれるプロゲステロンはエストロゲンによる内膜腺細胞の増殖を抑制するはたらきがあることから、ピルの服用が子宮体がんの発症リスク低下につながるのです。また、ピルの服用期間が長ければ長いほど子宮体がん発症のリスクは低下し、服用中止後も20年以上効果があると報告されています。
ピルの服用は卵巣がんの発症リスクも低下させるといわれています。
卵巣がんの発症要因には排卵回数(卵巣上皮の損傷と修復の繰り返し)が関係しているとされるため、ピルを服用することにより、ホルモンバランスをコントロールして生涯にわたる排卵回数が減少します。すると排卵による卵巣上皮の損傷が軽減されるため、結果的に卵巣がんの発症リスク低下につながるのです。
さらに、服用期間が長ければ長いほど卵巣がん発症リスクは低下し、服用中止後も15年以上効果があるとされています。
一方で、ピルの服用により乳がんの発症リスクが高まるという報告があります。これは、ピルに含まれるエストロゲンという成分に、がんの発症を促すはたらきがあると考えられているためです。ピルの服用によって発症リスクが高まるがんは以下のとおりです。
ピルの服用経験がある人は、服用経験がない人よりも子宮頸がんの発症リスクが2倍ほどに上昇するというデータがあります。ただし、子宮頸がんの主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した状態でピルを内服するとウイルスの宿主免疫系の抑制をもたらし、ウイルス排除率が低下する傾向にあるため、ピルの服用によって子宮頸がんの発症リスクが高まるとされています。
そのほかも、喫煙や免疫力の低下もがん発生のリスクを上昇させると考えられています。
乳がんの発生要因として、ピルに含まれるエストロゲンという成分が体内に多く存在することが挙げられるため、ピルの服用によってエストロゲンが増えると発症リスクが高まるとされています。しかし、最近ではピルの中でもエストロゲンの含有量が少ないタイプは乳がんの発症リスクを増大させないという報告もあります。そのため、リスク対処としてエストロゲンのエチニルエストラジオールの含有量が少ない(20μg)ピル製剤の使用が望ましいと考えられます。また、このタイプの製剤は血栓という副作用の発現率も低下します。
ただし、乳がんの原因はピルの服用に限らず、生理の回数が多い、出産の経験がない、過剰な飲酒、運動不足なども関係するとされています。
ピルを服用することで頭痛や吐き気、体重の増加などが起こることもあります。しかし、健康的な方であれば、基本的には問題ないといわれています。また、ピルに含まれる成分に血液成分を固まらせるはたらきがあるため、血栓症や心血管障害のような血管に関わる病気のリスクが高まるという報告もあります。
ピルの服用は子宮体がんの発症リスクを低下させるなどのメリットがある一方で、発症リスクが高まるがんもあります。そのため、子宮体がんを予防するためにピルを服用する際はピルの服用によるほかのがんの発症リスクをできる限り抑え、たとえがんが発症したとしても早期発見につなげる対策を心がけるとよいでしょう。
子宮体がんにかかわらず全てのがん予防策として、禁煙、適度な運動、栄養バランスを心がけた食事、適正な体重の維持などが挙げられます。適正な体重は肥満の指標であるBMI(体重/身長)が以下の数値の場合、がんのリスクが低下するといわれています。
ピルの服用は、前述の通り子宮頸がんや乳がんなどの発症リスクを高めます。必ずしも発症するわけではありませんが、たとえがんを発症したとしても早期に発見できるよう、定期的に検診を受けるようにしましょう。
また、子宮がんの検査は一般的には子宮頸がんのみの検査であり、子宮体がんの検査が行われているのは一部の自治体に限られます。子宮体がんの検査を行いたい場合には、別途医師に相談するとよいでしょう。
ピルの服用は子宮体がんや卵巣がんのリスクは低下する一方で、乳がんや子宮頸がんのリスクは高まるという報告があります。そのため、ピルを服用する場合はそれらのリスクをしっかりと理解し、少しでも不安がある場合には医師に相談するようにしてください。そのうえで、がん予防を意識した生活習慣の見直しや定期検診に行くことを心がけるとよいでしょう。
国際医療福祉大学医学部 教授
国際医療福祉大学医学部 教授
日本産科婦人科学会 代議員・指導医・産婦人科専門医日本婦人科腫瘍学会 理事・指導医・婦人科腫瘍専門医日本臨床細胞学会 理事・教育研修指導医・細胞診専門医日本癌治療学会 G-CSF適正資料ガイドライン改訂ワーキンググループ委員・臨床試験登録医日本組織細胞化学会 評議員日本婦人科がん検診学会 理事日本先端治療薬研究会 会員日本外科系連合学会 評議員日本専門医機構 産婦人科専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本産科婦人科内視鏡学会 腹腔鏡技術認定医婦人科悪性腫瘍研究機構 子宮体がん委員会 委員・GCIG委員会 委員Sentinel Node Navigation Surgery 研究会 世話人日本臨床分子形態学会 理事日本遺伝性腫瘍学会 評議員
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