婦人科腫瘍の中でもっとも多いのが子宮にできるがん。子宮頸がんと子宮体がんの二種類がありますが、同じ子宮にできるがんでもその病態は全く異なっています。やや高齢の女性に多くみられ、子宮体部と呼ばれる場所にできる子宮体がんは、さらに2種類のタイプに分けられます。どのような違いがあるのか、子宮体がんの特徴について飯塚病院産婦人科部長の辻岡寛先生にお話を伺いしました。
私が医者になった20数年ほど前には、子宮体がんと頸がんは、体がんが2割で頸がんが8割という比率でした。しかし、いまはその割合は1:1です。都市部ではおそらくもっと体がんの割合が増えているのではないでしょうか。子宮頸がんの数が減っているわけではないので、子宮体がんが非常に増加傾向にあるというわけです。
子宮体がんにかかりやすいリスクとしては、以下のようなものがあります。
子宮体がんは別名「子宮内膜がん」とも呼ばれ、女性ホルモンが関与して発症するがんであることが知られています。子宮内膜は、月経の周期によって剥がれ落ちるところであるため、子宮体がんは月経が毎月起こって内膜が剥がれている方には原則として起こらない病気です。内膜が剥がれにくくなる頃、つまり閉経を迎える前後くらいから患者数が増えてきます。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあります。どちらも卵巣から出るホルモンですが、月経があるときにはこのふたつのホルモンが絶妙なバランスで均衡を保っています。ところが、閉経近くになると卵巣の働きが衰え、排卵機能が低下してくるため、エストロゲンが優位になってきます。プロゲステロンには子宮体がんを抑制する効果があるので、そのプロゲステロンが分泌しなくなってくることで、子宮体がんの発生リスクが高まってくるというわけです。
なおごく稀に(全体の4%程度)ですが、排卵障害があり30代や40代という若い年代の女性で子宮体がんになる方もいます。
子宮体がんの種類は大きくⅠ型とⅡ型の2種類にわけられます。Ⅰ型は50~60歳くらいまでの方に多く、エストロゲンの影響を受けて起こるタイプのものです。比較的おとなしいがんで、予後(治療後の経過)も良好です。一方、Ⅱ型のタイプはⅠ型よりも少し高齢の70歳~80歳くらいの方に多く発症するもので、原因がまだはっきりとはわかっていません。悪性度が高く、予後もよくないタイプのがんです。
治療はⅠ型、Ⅱ型ともに手術を行います。手術では、子宮と卵巣・卵管および骨盤内のリンパ節を郭清(完全に取り除くこと)します。切除したそれらの組織について進行度を確認し、組織再発のリスクとして順に「低リスク」「中リスク」「髙リスク」の3段階に評価されます。
低リスクの場合には手術のみで追加治療は必要ありませんが、中リスク以上の場合には手術に加えて術後補助療法としての抗がん剤治療を行います。
飯塚病院 産婦人科 管理部長
飯塚病院 産婦人科 管理部長
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(産科婦人科領域)日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
飯塚病院産婦人科部長。ハイリスク妊娠などの周産期医療をはじめ、婦人科腫瘍では子宮頸がん・体がん・卵巣がんなど幅広い分野に精通し、内視鏡手術もこなすオールラウンダー。日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医および同学会指導医、日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医および同機構がん治療暫定教育医。
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