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インタビュー

子宮体がんの治療ー黄体ホルモンが治療の鍵になる

子宮体がんの治療ー黄体ホルモンが治療の鍵になる
辻岡 寛 先生

飯塚病院 産婦人科 管理部長

辻岡 寛 先生

この記事の最終更新は2015年12月17日です。

子宮にできるがんには、子宮頸がん子宮体がんの二種類がありますが、それらの病態は全く異なっています。別名、子宮内膜がんと呼ばれる子宮体がんは、子宮の奥にできるがんで、女性ホルモンに影響を受けるといわれています。子宮体がんと女性ホルモンの関係について、飯塚病院産婦人科部長の辻岡寛先生にお話しをお伺いしました。

子宮体がんは、女性ホルモンの影響を受けるがんとして知られています。女性ホルモンがいちばんわかりやすい形で現れるのが月経で、はじまって排卵までの期間(およそ2週間)を卵胞期あるいは低温期といい、排卵した後に次の月経がくるまでの期間が黄体期あるいは高温期といいます。

エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれるものです。女性の体を妊娠しやすい状態にコントロールする役割があり、排卵前にピークを迎え、排卵後にいったん減少した後、再度分泌が増加します。

一方、プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、妊娠・出産の準備をするホルモンで、排卵後に分泌のピークを迎えます。妊娠しなかった場合には分泌が減少していき、子宮内膜が萎縮して、月経が起こります。

このように、月経がある女性では、エストロゲンとプロゲステロンが定期的な周期で規律をもって分泌されています。

 

ところが閉経などによって排卵をしなくなると、エストロゲン、エストロゲンと分泌が続きます。子宮内膜を萎縮させる役割のあるプロゲステロンが分泌されないので、子宮内膜が増殖されてがんが発生してくるということになるのです。 

このような経緯で卵巣機能が低下するため、50歳前後になると更年期障害が起こります。その更年期障害の治療としてホルモン補充療法をされる場合がありますが、この治療法に関しては勘違いされている方も少なくありません。

ホルモン補充療法は、エストロゲンの分泌が欠如して起こる更年期障害に対する治療として行われています。または、エストロゲンの分泌がなくなることによって起こる骨粗鬆症に対して行われます。理論上、エストロゲンを補充すればこれらの症状は改善されることになるのですが、プロゲステロンを補充しなければ子宮体がんが起こってきます。

そのため、更年期障害などでホルモン補充療法をする際には、エストロゲンと同時にプロゲステロンも補充しなければならないということです。

最近では、内科の先生方も更年期障害の治療でホルモン補充療法をされています。しかし、エストロゲンだけ投与していると、高齢の方などについては子宮体がんが起こりやすくなってきます。ただ、子宮筋腫などで子宮を全摘している方については、エストロゲンの補充だけで構いません。これらの点についてはまだ誤解も多いため、今後さらなる啓発が必要だと考えています。

先ほども少しお話ししましたが、30代や40代の若い年代でも子宮体がんを発症する方がおられます。40代での発生率は子宮体がん全体の約4%。30代でもごく稀にいらっしゃいます。

子宮体がんの治療-それぞれの適応と再発リスクについては子宮および卵巣・卵管の摘出と骨盤内のリンパ節郭清術となります。しかし、この年代の女性に関しては、これから妊娠・出産するという方も少なくありません。そのため、出産を希望される場合には子宮を温存する治療を行うことになります。

そこで行われているのが、黄体ホルモンの大量投与という治療法です。黄体ホルモンとはプロゲステロンのことで、子宮体がんを抑制するホルモンというお話しを先ほどしましたが、その黄体ホルモンを大量に投与して、とにかく子宮内膜を萎縮させるという治療法を施します。

ごく初期の子宮体がんが対象者となりますが、黄体ホルモン大量投与を行って、子宮体がんが消失したことを確認したあと、とにかく早く妊娠するようにお勧めしています。

ただ、このようなケースでは多くの場合、妊娠・出産のあと、経過をみていくと再発する方がどうしても出てきます。そのため、経過を診ていくなかで再発となった時点で、子宮を摘出するという経緯をとることが少なくありません。

2014年より初期の子宮体がんに対しては腹腔鏡での手術も保険適用の上でできるようになりました。現時点では行える施設は限られており決して多くはないのですが、飯塚病院ではこの手術方法にも取り組んでいます。

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