子宮体がんとは、子宮体部(胎児を育てる部分)に発生するがんです。その進行速度については正確に数字にすることはできないと考えられていますが、タイプによって進行する速度に違いがあるとされています。
そこで本記事では、タイプごとの進行速度、進行度合い(ステージ)ごとのがんの状態や治療法について詳しく解説します。
子宮体がんに限らず、全てのがんの正確な進行速度は分からないとされています。理由は、がん細胞の発生時期が正確に特定できないこと、がんの細胞の種類によって増殖の速度が異なることがあるためです。
ただし、子宮体がんではタイプによって進行速度に違いがあると考えられています。
子宮体がんを原因によってタイプ分けした際に、女性ホルモンのエストロゲンが関係しているものをI型と呼びます。I型の子宮体がんは、エストロゲンの刺激が長期間続くことが原因と考えられています。
子宮体がんの多くがI型ですが、この場合ではそれほど進行は速くありません。
一方、エストロゲンが関係しない子宮体がんをII型といい、この場合は進行が速いとされています。子宮体がんの10%程度がII型で、I型に比べて高齢者に多いといわれています。
子宮体がんに限らず、がんでは若い人のほうが進行が速いとイメージされることがあります。これは、若い人と高齢者ではがんの組織の種類が異なる傾向があり、若い人に発生するがんの進行速度が速いため、そのようなイメージにつながっていると考えられます。
しかし、年齢とがんの進行速度は、直接関係はないという意見もあるため、疑問や不安がある場合は医師に相談するとよいでしょう。
子宮体がんの進行は、まず子宮内部の表面から子宮の壁に入り込み、さらに子宮頸管(腟の奥)に広がり、子宮の壁を通って腹部、また卵管の中を通って卵巣などへ広がります。さらに血液やリンパ管を通って転移するというように進行していきます。このようにがんの浸潤の深さや広がりなどによって、子宮体がんの進行度は“ステージ”で表すことができます。
子宮体がんのステージは、手術進行期分類を用います。手術進行期分類とは手術で子宮や卵巣、リンパ節などを取り出して検査し、初めてステージが確定することをいいます。
そのため、まずは触診、内診、細胞診、組織診、画像検査などである程度ステージを推定して、大まかな治療方針を決めます。治療の基本は手術で子宮を摘出することが一般的です。
ステージI期では子宮体部のみにがんが存在します。また、進行度合いによって、がんの深さが子宮筋層(子宮の壁)1/2未満だとIA期、1/2以上だとIB期に分類されます。
手術が可能な場合は、子宮全摘出のほか卵巣・卵管切除などが行われます。手術ができない場合は、抗がん剤や放射線治療が行われます。
子宮頸部にがんが広がっているもののリンパ節やほかの臓器に広がっていない場合は、ステージⅡ期に分類されます。
治療法はI期と同じく手術ができない場合は抗がん剤や放射線治療を、できる場合は子宮全摘出や卵巣・卵管切除に加えて、周辺の組織やリンパ節を切除することもあります。
子宮外にもがんが広がっているとⅢ期となり、骨盤の下のほう(小骨盤腔)を超えない、または子宮と直結したリンパ節に転移している状態です。さらに、転移した場所によって細かい分類があります。
がんの状態や患者によって異なりますが、手術ができる場合は、Ⅱ期と同様の手術を行います。できない場合は、抗がん剤、放射線治療のほか、緩和ケアとなることもあります。
がんが骨盤を超えて別の場所に広がっている、腸の粘膜や膀胱に広がっている、遠くの臓器に転移しているといった状態がⅣ期です。さらに、膀胱・腸粘膜のどちらか、または両方に広がっているとⅣA期、遠くの臓器やリンパ節に転移しているとⅣB期に分類されます。
治療はⅢ期と同様で、がんの状態や患者によって適切な治療を選択します。
前述の通り、子宮体がんの進行速度を正確な数字で表すことは難しく、放置すれば進行し治療ができなくなることもあります。そのため、早期の発見・治療が重要となります。早期発見のためには検診を受けるとよいでしょう。検診は自治体によって、子宮体がんの検査(細胞診)を行っているところもあるので、必要に応じて各自治体に確認してみるとよいでしょう。また、子宮体がんは初期に性器からの出血が起こることがあるため、このような気になる症状が見られる場合は早めに検査を受けることを検討しましょう。検診や検査を受けたうえで、子宮体がんと診断された場合は、医師と相談して早期に治療をすることが大切です。
山形大学医学部附属病院 産科婦人科 教授
山形大学医学部附属病院 産科婦人科 教授
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医・指導医・理事・災害対策・復興委員会委員長・婦人科腫瘍委員会副委員長・用語集・用語解説集改訂委員会副委員長日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医・婦人科腫瘍指導医・常務理事・ガイドライン委員会委員長・査読委員日本産婦人科手術学会 理事婦人科悪性腫瘍研究機構 理事日本臨床細胞学会 細胞診専門医・評議員日本婦人科がん検診学会 評議員日本女性医学学会 女性ヘルスケア専門医・暫定指導医・代議員日本産科婦人科内視鏡学会 会員日本癌学会 会員日本癌治療学会 会員
現在、山形大学医学部産婦人科の教授を務め、子宮体がんなどの婦人科悪性腫瘍の手術や研究を行う。また、治療成績向上のため、子宮体がんをはじめ婦人科がんの各ガイドライン作成に携わっている。
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