子宮体がんとは子宮体部(妊娠時に胎児を育てる部分)にできるがんのことです。子宮体がんの予後(今後の病状についての医学的な見通し)はほかのがんに比べて比較的よいといわれています。また、不正性器出血など初期症状があることも多く比較的早期発見しやすいがんとされています。
本記事では、子宮体がんの予後や手術後の治療、再発、転移などについて解説します。
子宮体がんの診断から5年後の生存率は約81%です(2009~2011年)。全てのがんをまとめて算出した5年生存率が約64%であることから、子宮体がんは比較的予後が良好ながんといえます。
その理由として子宮体がんは初期の段階で不正性器出血が見られるため、早期に受診して子宮体がんの検査を受ける人が多いことが挙げられます。その結果、早い段階での治療が可能となり良好な予後につながるとされています。
子宮体がんは手術をしてがん細胞を切除しないと進行の度合い(ステージ)を確定することができません。そのため、手術前の検査では細胞診・組織診でがんの診断を行い、CTやMRIなどの画像診断である程度のステージの推定が行われた後、これらの結果をもとに手術でどこまでを摘出するかという手術術式を決定します。
手術後に、摘出した臓器を顕微鏡を用いてさまざまな方法で検査をする病理検査を行い、最終的なステージを確定する手術進行期分類を行います。
なお、病理検査の結果が出るまでにはおよそ数週間かかるといわれています。この結果が出てステージが確定した後に治療方針などを検討します。
CTやMRIなどの画像診断によってある程度ステージを把握した段階で、手術が可能か不可能か判断します。進行期分類でその後の治療方針を決めるため手術を行うことのできない状態でなければ基本的には手術が行われます。
手術は通常、子宮全摘出と付属器(卵巣と卵管)の切除を行います。また、術前の画像診断により必要があれば骨盤(子宮周囲)リンパ節の摘出、場合によっては傍大動脈リンパ節の摘出も行われます。
画像診断の結果から手術不可能と判断された場合は、抗がん薬、ホルモン療法、放射線治療のほか、緩和ケアも選択肢になることがあります。
手術でがんを取り除くと同時にがんの広がりなどを診断してステージを確定し、再発リスクを判定して治療を追加するかを判断します。
再発リスクごとの追加治療の選択肢は以下のとおりです。
抗がん薬は、再発のリスクが高い・合併症があり安全に手術ができない・再発した場合に使用します。また、ホルモン療法はホルモンが関係しているがんに用いられ、主に再発するリスクが高い・抗がん薬が効かない場合に使われることがあります。
一方、放射線治療は放射線を照射してがん細胞を小さくする治療法です。体の外から照射する方法と腟内から子宮の中に照射する方法があります。この治療では痛みを伴わず髪の毛が抜けることもありません。再発した場合でもがんの範囲が限定されている場合にはとても有効な手段となります。
子宮体がんは転移したり治療完了後に再発したりすることがあります。
子宮体がんでは卵巣、卵管のほか、リンパ節、腟、腹膜、肺などに転移することがあります。
転移とはがん細胞が血液やリンパ液などに流されてほかの臓器などに移動し、成長することをいいます。子宮の壁の外側には血管がたくさんあるため、がん細胞がそこまで広がると転移する可能性があるとされています。転移した場合は薬物療法(抗がん薬など)、放射線治療のほか、がんの状態、症状によって治療の方法を検討します。
治療でがんがなくなった後に再びがんが現れることを再発といいます。
子宮や腟のほか、肺や肝臓といった子宮から遠い場所でも再発が見つかることがあります。子宮体がんが再発した場合は、薬物療法や放射線治療を行うことがあります。
また、再発を早期に発見するため治療が終わった後も定期的な経過観察が重要です。手術を行った場合は目安として手術後3年目までは1~4か月ごと、5年目までは半年ごと、それ以降は1年ごとに通院して経過観察を行います。しかし、進行期や組織型によって異なるので主治医とよく相談しましょう。
なお、経過観察では問診を行うほか、必要な場合は内診や細胞診、画像診断を行うこともあります。
子宮体がんは早期発見・治療によって良好な予後につながります。しかし、子宮体がん検診として推奨されている検査はありません。したがって、気になる症状があればまずは近くの産婦人科を受診しましょう。
塚﨑 雄大 先生の所属医療機関
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