ふせいせいきしゅっけつ

不正性器出血

監修:

概要

不正性器出血とは、月経期間や出産時の出血、出産後の悪露(おろ)以外で、性器から出血が生じる状態です。不正出血ともいい、婦人科の診療で多くみられる症状です。

不正性器出血の原因には、大きく分けて以下の4種類があります。

  • 器質性出血……外陰部、腟、子宮、卵巣などの病気が原因で出血する
  • 機能性出血……内服薬の影響も含め、ホルモンバランスの乱れが原因で出血する
  • 排卵期出血(中間出血)……排卵の際にホルモンバランスが一時的に乱れて出血する
  • その他の原因による出血……性行為による外傷、着床出血、妊娠中の異常などで出血する

不正性器出血の発症部位や原因は多岐に渡り、排卵期出血のように治療の必要がない“生理的出血”の場合もありますが、重大な病気が隠れている可能性もあります。

ホルモン検査や細胞診、超音波検査などを行って原因を特定し、薬物療法や外科処置・手術などの治療を行います。

原因

不正性器出血の原因には、生殖器の病気やホルモンバランスの乱れなど主に4種類が挙げられます。

器質性出血

外陰部、腟、子宮、卵巣などの生殖器における病気が原因となり生じる不正性器出血です。

不正性器出血が生じる主な病気は以下のとおりです。

・炎症性疾患……細菌性腟炎萎縮性腟炎などの腟炎、子宮内膜炎など

良性腫瘍(りょうせいしゅよう)……子宮頸部(しきゅうけいぶ)や子宮内膜のポリープ、子宮筋腫など

・悪性腫瘍……子宮頸がん子宮体がん卵巣がん子宮肉腫腟がん外陰がんなど

機能性出血

子宮内膜を厚くするエストロゲンと、子宮内膜を維持するプロゲステロンというホルモンの分泌バランスが乱れることによって子宮内膜が不規則にはがれることによって、不正性器出血が生じることがあります。

排卵期出血(中間出血)

排卵期は、ホルモンバランスが大きく変わるため、不正性器出血が起こることがあります。

出血量は少なく、おりものに混じる程度で、出血期間も短期間に留まる傾向にあります。

そのほかの原因による出血

上記以外の原因としては、主に以下が挙げられます。

流産異所性妊娠胎盤早期剥離(たいばんそうきはくり)など妊娠中の異常による出血

・血液の凝固異常など全身性疾患による出血

・受精卵が着床することで生じる出血(着床出血)

・性行為による腟壁の擦過(さっか)、裂傷

症状

不正性器出血の症状は、月経期間や出産時の出血、出産後の悪露以外で、性器から生じる出血が特徴です。原因は多岐に渡るため、原因や患者さんの状態によって現れる症状の程度も異なります。

出血量や色は、おりものに少量の血が混ざっている程度のケースもあれば、茶色の血液がみられるケース、赤い鮮血が大量にみられるケースなども存在します。

なお、病気による不正性器出血の場合は、出血のほかにもさまざまな症状が現れます。たとえば細菌性腟炎の場合は、出血のほかにおりものが水っぽくなったり匂いが変化したり、外陰部のかゆみや痛みなどがみられることもあります。子宮筋腫では、大きさや部位により症状も異なりますが、腹部にしこりが触れるほか、筋腫が大きくなると周辺の臓器を圧迫するため、頻尿や排尿困難、便秘などがみられる場合があります。また、筋腫分娩のように、子宮口から筋腫が出て膣内にある場合、月経血が大量で、止まらないこともあります。

検査・診断

まずは問診を行い、出血が始まった時期や出血量、痛みなどのほか、現在服用している薬やかかっている病気、月経状況などについて確認します。加えて、尿検査を行って妊娠の有無も確認します。

妊娠の可能性がないと判断された場合は、疑われる病気に応じてさまざまな検査が行われます。

子宮頸がんなどが疑われる場合は、細胞診といって、子宮頸部や子宮体部の内側を専用のブラシなどで軽く擦って採取した細胞を顕微鏡で確認します。

炎症性疾患の疑いが強い場合は、細菌培養検査や抗原検査などを、子宮筋腫(のうよう)などが疑われる場合には、超音波検査などの画像検査が実施されます。超音波検査は妊娠中の出血においても有用で、子宮や卵巣の状況以外にも胎嚢(たいのう)、胎盤、胎児の状態を確認できます。

機能性出血の場合は、基礎体温を把握するほか、血液検査でホルモン値を測定することがあります。

治療

検査を踏まえて何らかの病気が見つかった場合は、病気に応じた治療を行います。

たとえば、がんが見つかった場合は手術や放射線療法、抗がん薬による薬物療法などが検討されます。

ポリープが見つかり、小さく、個数も少ない場合は日帰り手術が選択されますが、大きく、径が太い場合には入院手術で摘出します。

機能性出血のように病気が原因ではないケースでは、出血量が少量であれば特段治療は行わずに経過観察となります。出血が長期間続く場合や大量の出血がある場合は、プロゲスチン製剤や中用量ピルなどによる止血が行われます。その後繰り返す機能性の出血の場合、妊娠を希望する患者さんには排卵誘発薬を使用することもありますし、妊娠を希望しない患者さんには低用量ピルなどを用いてホルモンバランスや月経周期を整えることもあります。

また、妊娠初期の出血では胎嚢が確認できる場合、排卵からの週数も考慮して一般的に経過観察が行われます。まれに子宮外妊娠などの要因で出血している可能性があるため、妊娠している場合は速やかに医師の診察を受けましょう。

最終更新日:
2025年10月15日
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2025/10/15
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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