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編集部記事

卵巣がんのステージ ~進行度別の症状や治療法~

卵巣がんのステージ ~進行度別の症状や治療法~
杉田 匡聡 先生

NTT東日本関東病院 産婦人科部長

杉田 匡聡 先生

目次
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卵巣がんとは、子宮の両脇にある卵巣に悪性の腫瘍が発生する病気です。

卵巣がんはできる場所によって上皮性腫瘍、胚細胞性腫瘍、性索間質性腫瘍などに分類され、卵巣の表面の細胞から発生する上皮性卵巣がんの患者数がもっとも多く、卵巣がんの約90%を占めます。

卵巣がんは進行度によってI~IV期までのステージ(病期)に分類され、ステージに応じて治療方針を決定します。自覚症状があまりないため早期発見が難しく、見つかったときにはIII期やIV期など進行がんに進展していることも珍しくありません。

本記事では、卵巣がんのステージ別の分類や症状、基本的な治療方法についてお伝えします。

卵巣がんは、がんの大きさや広がりに応じてI~IV期のステージ(病期)に分類されます。

以下では、それぞれのステージが示す状態や症状についてお伝えします。

ステージI期の卵巣がんは初期段階で、がんが卵巣だけにとどまっている状態を指します。I期の段階では症状がなく、自分で病気に気付く確率は低いです。

I期は、さらにIA、IB、IC(1,2,3)に分類され、卵巣の片方だけにがんがとどまっている場合をIA、両方の卵巣にがんがとどまっている場合をIB、卵巣腫瘍が破綻していたり、腹水に悪性細胞が認められたりした場合をICといいます。

ステージII期の卵巣がんは、卵巣だけでなく子宮など骨盤内の臓器にもがんが及んでいる状態です。II期に進行した段階でも無症状のケースが多いです。

II期もIIA、IIBに分けられ、がんが子宮や卵管に進展している場合をIIA、子宮や卵管以外の骨盤内の臓器に広がっている場合をIIBといいます。

ステージIII期の卵巣がんは、がんが卵巣や骨盤内の臓器だけにとどまらず腹膜(ふくまく)播種(はしゅ)が生じたり、後腹膜リンパ節への転移が生じたりしている状態です。

III期あたりから自覚症状を感じるケースがあります。多少下腹部に違和感を抱く程度で強い症状を感じない人もいれば、骨盤の痛み、貧血、体重の増加や減少が生じる人もいます。また、腹膜播種が生じるとお腹に水がたまり、腹部が膨らんでくることがあります。

III期はIIIA1(i , ii)、IIIA2、IIIB、IIICと細かく分類され、後腹膜リンパ節への転移のみの場合がIIIA1、リンパ節への転移の有無にかかわらず骨盤の外に顕微鏡で確認できる小さな播種がある場合がIIIA2、リンパ節への転移の有無にかかわらず2cm以下の腹膜播種があった場合がIIIB、リンパ節への転移の有無にかかわらず2cmを超える腹膜播種があった場合がIIICとされています。

腹膜播種とは?

腹膜播種とは、がん細胞が腸の表面や腹膜まで広がることをいいます。腹膜播種の状態になると、お腹にがん細胞を含んだ水がたまるために食欲がなくなるほか、息切れや腸の癒着のために激しい腹痛などの症状が現れることがあります。

ステージIV期の卵巣がんは遠隔転移が生じている状態を指します。

IV期の症状は個人差が大きく、がんが大きくなることによって膀胱が圧迫されて生じる頻尿や下腹部の圧迫感だけにとどまる人もいれば、がんがほかの臓器に転移することによって、ほかの臓器からの症状が現れる人もいます。

IV期はIVA、IVBに分けられ、胸水中に悪性細胞(がん)がある場合をIVA、ほかの臓器への転移などが認められた場合をIVBといいます。

卵巣がんの治療は、どのステージの場合にも基本的には手術療法と抗がん剤などの化学療法を併せて行います。

卵巣は外から組織を採取することが難しい臓器なので、卵巣がんの疑いがある場合まずは手術療法が行われ、手術の状況からがんの確定診断やステージなどの判断が行われます。手術ではがんを可能な限り取り除きますが、がんが進行しておりいきなり手術をしても取り除くことが困難と判断された場合には、抗がん剤による化学療法でがんを小さくしてから手術を行うこともあります。

手術療法によって可能な限りがんを取り除いた後は、術後治療として抗がん剤による化学療法を行います。上皮性卵巣がんは比較的抗がん剤の効きやすいがんといわれており、化学療法を行うことにより手術で取り切れなかったがんを消失させるほか、再発を予防する効果もあります。

卵巣がんはステージI期やII期の段階では無症状のため早期発見が難しく、症状が出たころにはIII期やIV期まで進行している可能性があります。そのため、下腹部の違和感やお腹の膨らみ、痛みなど、気になる症状がある場合はなるべく早めに婦人科の受診を検討しましょう。普段から子宮がん検診を受けておくことは、症状がない早期の卵巣がんを見つけるきっかけとなることが少なくありません。市町村の検診や会社の検診など、定期的な検診をおすすめします。

また、生まれつきBRCA1/2と呼ばれる遺伝子に異常がある人の場合、乳がんや卵巣がんにかかりやすいことが分かっています。そのため、該当する人は定期的に検査を受けるなど、早期発見に努めることを心がけましょう。

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