卵巣がんとは、子宮の両脇にある卵巣に悪性の腫瘍が発生する病気です。
卵巣がんはできる場所によって上皮性腫瘍、胚細胞性腫瘍、性索間質性腫瘍などに分類されます。卵巣の表面の細胞から発生する上皮性卵巣がんの患者数がもっとも多く、卵巣がんの約90%を占めます。
また、卵巣がんは進行度によってI~IV期までのステージ(病期)に分類され、ステージに応じて治療方針を決定します。
本記事では、卵巣がんのステージ別の分類や症状、基本的な治療方法についてお伝えします。
卵巣がんは、がんの大きさや広がりに応じてI~IV期のステージ(病期)に分類されます。
ステージI期は初期段階で、がんが卵巣にとどまっている状態です。
I期の段階では自覚症状がほとんどありません。I期は、さらにIA、IB、IC(1,2,3)に分類され、卵巣の片方だけにがんがとどまっている場合をIA、両方の卵巣にがんがとどまっている場合をIB、卵巣を覆う被膜が破れていたりお腹にたまった水(腹水)に悪性細胞(がん)がみられたりする場合をICといいます。
ステージII期は、卵巣だけでなく子宮など骨盤内の臓器にもがんが広がっている状態です。II期の段階でも多くのケースでは自覚症状がありません。II期もIIA、IIBに分類され、がんが子宮や卵管に広がっている場合をIIA、子宮や卵管以外の骨盤内の臓器に広がっている場合をIIBといいます。
ステージIII期は、がんが卵巣や骨盤内の臓器だけにとどまらず内臓を覆う腹膜に広がったり(腹膜播種)、腹膜の外側にある後腹膜のリンパ節に転移したりしている状態です。
III期あたりから自覚症状を感じるケースがあります。多少下腹部に違和感を抱く程度で強い症状を感じない人もいれば、骨盤の痛み、貧血、体重の増加や減少が生じる人もいます。
III期はIIIA1(i , ii)、IIIA2、IIIB、IIICと細かく分類され、後腹膜リンパ節への転移のみの場合をIIIA1、リンパ節への転移の有無にかかわらず骨盤の外に顕微鏡で確認できる小さな播種がある場合をIIIA2、リンパ節への転移の有無にかかわらず2cm以下の腹膜播種がある場合をIIIB、リンパ節への転移の有無にかかわらず2cmを超える腹膜播種がある場合をIIICといいます。
腹膜播種とは、腸の表面や内臓を覆う腹膜にがん細胞が広がることをいいます。腹膜播種の状態になると、お腹にがん細胞を含んだ水がたまり食欲の低下や息切れなどの症状がみられるほか、腸が癒着し、激しい腹痛などの症状が現れることがあります。
ステージIV期は遠隔転移が生じている状態です。
IV期の症状は個人差が大きく、がんが大きくなることによって膀胱が圧迫されて生じる頻尿や下腹部の圧迫感だけにとどまる人もいれば、がんがほかの臓器に転移したことによる症状がみられる人もいます。
IV期はIVA、IVBに分けられ、肺の外側にたまった水(胸水)に悪性細胞がみられる場合をIVA、ほかの臓器への転移がみられる場合をIVBといいます。
卵巣がんの治療は、どのステージの場合にも基本的には手術療法と抗がん薬などの化学療法を併せて行います。
卵巣は外から組織を採取することが難しく、卵巣がんの疑いがある場合は手術療法をして、手術の状況からがんの確定診断やステージなどの判断を行います。
手術でがんを可能な限り取り除いた後は、術後治療として抗がん薬による化学療法を行います。
がんが進行していて手術で取り除くことが難しいと判断された場合には、化学療法でがんを小さくしてから手術を行うこともあります。
卵巣がんの多くを占める上皮性卵巣がんは比較的抗がん薬の効きやすいがんといわれており、化学療法を行うことにより手術で取り切れなかったがんを消失させるほか、再発を予防する効果もあります。
卵巣がんはステージI期やII期の段階では多くの場合症状がないため早期発見が難しく、症状が出たころにはIII期やIV期まで進行している可能性があります。
そのため、下腹部の違和感やお腹の膨らみ、痛みなど、気になる症状がある場合はなるべく早めに婦人科の受診を検討しましょう。
普段から子宮頸がん検診を受けておくことは、症状がない早期の卵巣がんを見つけるきっかけとなることが少なくありません。市町村や会社などで定期的な検診をおすすめします。
また、生まれつきBRCA1/2と呼ばれる遺伝子に異常がある人の場合、乳がんや卵巣がんになりやすいことが分かっています。そのため、該当する人は定期的に検査を受けるなど、早期発見に努めることを心がけましょう。
塚﨑 雄大 先生の所属医療機関
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