
卵巣がんとは卵巣にできるがんで、自覚症状が少ないのが特徴です。そのため、気付いたときには進行がんとなっているケースが多く、ほかのがんと比較しても死亡率が高いとされています。卵巣は妊娠に不可欠な卵子をつくる臓器であるため、卵巣がんを発症すると妊娠できないと思われることもあるかもしれません。しかし、卵巣がんになっても場合によっては妊娠できる可能性があります。本記事では卵巣がんが妊娠に与える影響とともに、妊孕性(妊娠するための力)を温存した卵巣がんの治療法を解説します。
卵巣がんが妊娠に及ぼす影響は、卵巣がん自体が及ぼす影響と卵巣がんの治療が及ぼす影響の2つに分けられます。ここではそれぞれについて解説します。
卵巣がんは自覚症状が少ないことが特徴であり、生理も通常どおり来る場合が多いです。そのため、卵巣がんそのものが妊娠に与える影響は少ないとされています。がんが進行するとホルモン過剰症状や腹部膨満(おなかが張っている感じ)、頻尿などの症状が見られることがありますが、妊娠には影響しないことが多いといわれています。
卵巣腫瘍には良性と悪性(がん)がありますが、どちらの場合も基本的に手術での治療が第一選択となります。良性の場合は腫瘍のみ、または腫瘍のある側の付属器(卵巣・卵管)を切除し、悪性の場合は両側付属器・子宮・大網を切除します。ただし、卵巣腫瘍が良性なのか悪性なのかは、術中または術後に卵巣腫瘍の組織を検査してみないと確定することができません。卵巣を両側切除する場合には妊娠・出産はできなくなり、妊孕性は失われてしまいます。
卵巣がんの治療では基本的に両側付属器・子宮・大網を切除するため、妊孕性は失われてしまいますが、将来子どもを産むことを強く希望する(挙児希望がある)場合、妊孕性温存治療を選択できる場合があります。
卵巣がんにおいて妊孕性温存が可能かどうかの条件には、(1)病理組織学的条件と(2)臨床的条件があります。
妊孕性温存が可能となる病理組織学的条件として、まずがんの種類が漿液性がん・粘液性がん・類内膜がんのどれかである必要があります。また、腫瘍が片方の卵巣にのみあり、腹水(おなかにたまった水)や腹腔にがん細胞が存在しないこと、すなわち進行期が IA期であることも条件となります。
上記の病理組織学的条件だけではなく、臨床的条件も重要となります。大きく分けて3つあり、(1)本人が妊娠への強い希望を持ち、妊娠可能な年齢であること、(2)本人と家族が卵巣がんや妊孕性温存治療、再発の可能性について十分に理解していること、(3)治療後の長期にわたる厳重な経過観察に同意していることなどが挙げられます。
特に、術後の病理組織学的診断の結果によっては妊孕性温存が不可となり、再手術により妊孕性を失う可能性もあることも知っておく必要があります。
妊孕性温存手術の具体的な術式はケース・バイ・ケースですが、妊孕性温存を重要視する場合は患側付属器(卵巣・卵管)および大網を切除するのが基本的な術式となります。
卵巣がんの基本的な治療法は、両側付属器摘出術、子宮全摘出術および大網切除術となるため、治療後は妊孕性が失われてしまいますが、妊娠・出産の強い希望があり、かつ病理組織学的条件を満たせば妊孕性温存手術を行うことができます。しかしながら、妊孕性温存手術を行う場合は、がんの再発リスクが高まる可能性があるため注意が必要です。妊孕性温存を希望する場合は、医師や家族としっかりと相談し、リスクを踏まえてよく検討しましょう。
国際医療福祉大学病院 院長/ 産婦人科部長、国際医療福祉大学 教授
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