婦人科がん領域の分子標的薬は、乳がんや消化器がん等に比べてまだ普及していません。分子標的薬について国際医療福祉大学病院産婦人科の大和田倫孝先生にお話をうかがいます。
がん治療は、本来がんの組織全体を直接ピンポイントで破壊することがもっとも望ましいゴールです。しかし、がん細胞を直接狙い撃ちして破壊することは簡単なことではありません。そのため、現在最も多く用いられている分子標的薬は、がん病巣に送られる栄養路(血管新生)を絶とうとするものです
抗がん剤はがん細胞も正常細胞も攻撃してしまうため、たとえば正常細胞の中で増殖が盛んな髪の毛や消化器の細胞なども影響を受けてしまいます。それがよく抗がん剤治療で挙げられる脱毛や吐き気など副作用の原因です。分子標的治療は、がん細胞、がん病巣だけをねらい撃ちしてがんの発育を抑える方法です。
分子標的薬は、理論上は副作用の少ない薬剤ですが、現実には抗がん剤と同様に重篤な合併症の発生も報告されていますので、使用に当たっては十分な注意が必要です。現時点ではまだ完全に安全性が確保された治療薬とはいえません。
現在、婦人科がん領域で保険適用になっている分子標的薬は、卵巣がんにおけるベバシズマブのみです。このベバシズマブにTC療法など通常の抗がん剤を組み合わせる方法で治療が行われていますが、無病生存期間(がんが治って再発するまでの期間)は延びているものの、全生存期間(亡くなるまでの生涯の期間)は変わらないという研究結果も出ています。今後は全生存期間の延長を目指したさらなる研究が急がれます。
現在、卵巣がんに限らずがんの治療にはかなりの医療費がかかります。参考までに卵巣がんの治療費を項目別にみると、手術料が約60万円(麻酔料を除く)、TC 療法1回分が約10万円、ベバシズマブ1回分が約40万円で、分子標的薬がかなり高額です。日本の現状では医療費の抑制が重要な課題であり、どのような治療を行うべきかを倫理面のみではなく医療経済面からも厳しく評価され、近い将来、確実に有効性が見出せない治療は制限される時代が来るかもしれません。
国際医療福祉大学病院 産婦人科部長、国際医療福祉大学 教授
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