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インタビュー

卵巣がんの特徴

卵巣がんの特徴
大和田 倫孝 先生

国際医療福祉大学病院 産婦人科部長、国際医療福祉大学 教授

大和田 倫孝 先生

この記事の最終更新は2016年05月24日です。

卵巣がんは痛みがほとんどなく進行が比較的早いため、早期発見が難しいサイレントキラーと呼ばれる病気です。卵巣がんの特徴について国際医療福祉大学病院副院長、産婦人科部長の大和田倫孝先生にお話をうかがいます。

70%以上が I期、Ⅱ期症例である子宮頸がん子宮体がんに比べて、卵巣がんはI期、Ⅱ期の症例が約50%です。つまり Ⅲ期、Ⅳ期の進行がんが約半数を占めます。

子宮がん、とくに子宮頸がんは検診を定期的に受けることにより前がん状態や早期がんで発見されることが多いのに対して、卵巣がんでは前がん状態や前兆に乏しく、また進行が早いがんが多いため、一般には進行がんで発見されることが多いのが特徴です。例えていえば、子宮頸がんは台風のように予め今後の見通しが可能であるのに対して、卵巣がんは発症する可能性があっても地震のように予測することができず、いきなり発症した感じがします。

また、卵巣の解剖学的特性も、がんの早期発見を難しくしています。通常、胃や子宮などは筋肉という厚い壁に覆われていますが、卵巣にはそのような壁がありません。表層上皮という薄い組織で覆われているだけで、それがお腹の中に浮いたように存在しています。ですから、がんが表層上皮にできた場合、腹膜播種(種を撒いたようにがんが腹膜に広がってしてしまうこと)やほかの臓器への進展が起こりやすいのです。

卵巣は大きさが約3cm×4cm大で、すぐ外側が腹腔内でバリヤーがないため、がんが卵巣を超えて進展しやすい

卵巣がんの特徴として腹水が溜まりお腹が大きく膨らんでくる方がほとんどです。しかし、痛みがほとんどないため「太った」と勘違いしてダイエットをしたりする方もいらっしゃいます。それでもお腹の膨らみだけが解消されず、「おかしい」と感じてそこで初めて受診をして、卵巣がんが見つかる方も少なくありません。

現在、腫瘍マーカーと超音波検査を使って卵巣がんの検診をしようと試みられていますが、有効性が見出せないのが実情です。また、症例によっては半年でⅢ期~Ⅳ期まで進行することもある卵巣がんを発見するために、1ヶ月ごとに検診をすればよいかといえば、それも現実的ではありません。さらに、遺伝子検査も課題が残るところです。卵巣がん発症に関連する遺伝子異常はいくつか見つかっていますが、遺伝子異常には、生まれながらにしてある遺伝子異常と、がんになる時に突然変異で起こる遺伝子異常があります。多くの場合、がんになる時だけ遺伝子異常が起こるため、何もない時に遺伝子検査をしても何か異常が出る可能性はほとんどありません。

最近、将来的な卵巣がん予防のために、卵巣と卵管を摘出して話題になったアメリカの女優さんがおられますが、その方は特殊なケースです。卵巣がんの多くが、がんになる時だけ突然変異的に起きる遺伝子異常が原因と述べましたが、彼女の場合、生まれながらにBRCAという遺伝子に異常があります。そのような方たちは、生涯でかなり高頻度の確率でがんが発生することが分かっています。そのため、卵巣がんが発症する前に卵巣を取り除いてしまうという決断をされましたが、これはあくまで予防的措置であり、早期発見とは意味合いが異なります。

では、将来的にがんを予防するためにこのような特殊な遺伝子異常を見つける方ことが有効か、といえばそれも難しいところです。なぜなら、日本にはこのような遺伝子異常を持つ方は少ないからです。卵巣がんの家族歴がある女性は卵巣がんの発症リスクが2~3倍高くなるといわれていますが、日本においてこのような家族歴のある女性を対象に遺伝子検査をしても、BRCAの遺伝子異常が見つかる方はほとんどいないと考えられます。つまり、現在の日本においては、遺伝子検査も卵巣がんの予防という意味ではあまり意味をなさないといえるでしょう。

通常、身体にできるがん細胞は、免疫細胞という見張り役によって異常に増えないように攻撃されています。しかし、年齢を重ねるとその見張り役の働きがおろそかになってしまいます。がん細胞は確実に増えているのに、それを見過ごしてしまうのです。これが高齢者にがんが多い理由の1つと考えられます。

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