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にゅうがん

乳がん

最終更新日
2023年12月27日
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2023/12/27
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概要

乳がんとは乳房に発生する悪性の腫瘍(しゅよう)です。乳房は女性で発達している器官であり、豊富な脂肪組織の中に乳汁分泌を担う乳腺が含まれています。この乳腺は、乳汁を作る機能を持つ小葉、乳汁の通り道で小葉と乳頭をつないでいる乳管で構成されています。

乳房の構造(提供:PIXTA)

乳がんの9割近くを占めているのが乳管から発生する乳管がんです。小葉から発生する乳がんは小葉がんと呼ばれています。このほかにも粘液がん、管状がん、腺様嚢胞がんといった特殊な型の乳がんもありますが、あまり多くはありません。また、非常にまれですが乳腺が発達していない男性でも乳がんを発症することもあります。

乳がんは30歳代から増加し始め、40歳代後半から50歳代前半の女性に起きやすいのが特徴です。50歳代後半以降では徐々に減少する傾向があります。早期の段階では乳房内にしこりが生じるのみで自覚症状もあまりありません。進行した段階で初めて自覚症状が現れることもあり、発見が遅れるケースも少なくありません。がんが進行するとしこりが大きくなって皮膚に潰瘍(かいよう)を形成したり、血性の乳汁分泌や(わき)の下のリンパ節への転移などがみられたりするようになります。乳がんのしこりは固く可動性が少ないことが特徴で、初期には痛みは伴いません。

乳がんはほかのがんと比較して、薬物療法や放射線療法の治療効果が高いがんです。そのため、早期に発見されて適切な治療が行われれば良好な経過が期待できます。症状がない場合でも、40〜50歳代の女性は乳がん検診を定期的に受けることが重要です。

原因

乳がんの発症に関しては解明されていない部分もありますが、現時点では以下の因子との関連が考えられています。

エストロゲン

乳がんのがん細胞の増殖にはエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが関与していることが知られています。

女性の体に起こる月経、妊娠、出産にはエストロゲンとプロゲステロンの2つの女性ホルモンが大きく関わっています。月経が終わってから排卵まではエストロゲンの分泌が多く、排卵後から月経開始まではプロゲステロンの分泌が多くなるため、月経周期では一時的にエストロゲンだけが高い期間が生じています。一方で、妊娠・出産の間はエストロゲンとプロゲステロンの両方の分泌が高くなることが特徴です。そのため、生涯に経験する月経回数が多い(初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が高い)人では妊娠・出産を経験している人よりも相対的に過剰のエストロゲンに曝露される期間が長くなるために乳がんを発症するリスクが高くなると考えられています。

生活習慣

乳がんの発症リスクを高める生活習慣として、過度の飲酒、喫煙、閉経後の肥満、運動不足などが挙げられます。また、食生活の欧米化に伴い、脂質の多い食べ物を取りすぎることも乳がんの発症リスクを高めると考えられています。

遺伝子変異

乳がんは現在分かっているこれらの要因とは関係なく、遺伝するタイプのものもあります(遺伝性乳がん)。全ての乳がんの5~10%は何らかの遺伝が関わっているとされているため、同じ家系内に複数の乳がんを発症した人がいるケースでは注意が必要です。遺伝性乳がんの約半数は“BRCA1”“BRCA2”という遺伝子に変異を持つ遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)といわれています。HBOCでは若くして乳がんを発症する、乳がんと卵巣がんの両方を発症しやすいことが特徴です。

BRCA1あるいはBRCA2遺伝子に変異がある人は、乳がんや卵巣がん以外のがんも発症しやすい傾向にあることが分かっています。ただし、特定の遺伝子に異常があったとしても、全ての人が乳がんを発症するわけではありません。また、遺伝子変異がなければ乳がんを発症しないというわけでもありません。乳がんの発症に関しては全てが解明されているわけではないため、遺伝子異常の解釈については慎重になる必要があります。

症状

乳がんの症状には乳房のしこり、乳房の皮膚の変化、リンパの腫れなどがあります。以下では、それぞれの症状についてお伝えします。

乳房のしこり

気が付きやすい症状の1つに乳房のしこりがあります。しこりの表面はでこぼこしていて動きにくいものが多く、強く押してもあまり痛みは感じません。ただし、乳房にしこりができる病気は乳がん以外にも多数あるため、慎重な検査が必要です。

乳房の皮膚の変化

乳がんが進行すると、乳房を形作る周辺組織へも病変が広がるため、乳房の見た目に変化が生じます。主な変化には乳首の陥没、皮膚のただれ、エクボのようなくぼみなどがあります。また、乳頭から血が混ざった分泌液が出ることもあります。

乳がんの中でも、しこりなどの症状がなく、皮膚に発赤・痛みが生じる乳がんは“炎症性乳がん”と呼ばれます。

リンパの腫れ

乳がんが乳房の近くにあるリンパ節に転移した場合、腋の下にリンパが腫れたことによるしこりが生じることがあります。また、リンパ節の転移によってリンパの流れが悪くなると、腕のむくみやしびれが生じることもあります。

検査・診断

乳房にしこりができる乳がん以外の病気と区別するために、問診や視診・触診、各種画像検査などが行われます。

マンモグラフィ

マンモグラフィは乳房のX線写真のことをいい、手で触っただけでは診断できない小さなしこりや、しこりになる前の石灰化した微細な乳がんを発見することができる画像検査です。乳がん検診でも中心的な役割を果たしている検査です。

しかし、若い人では高濃度乳房(乳房に対する乳腺の濃度が高い状態)が多く、マンモグラフィ検査の有効性が低いとされているため、若い方のマンモグラフィ検査はあまりすすめられていません。そのため若い人では超音波検査が主に行われます。一方、40歳以上の女性に対しては乳がん検診によるマンモグラフィ検査が推奨されています。

超音波検査(エコー検査)

乳房に超音波を当てることにより乳がんの有無を調べる検査です。しこりの大きさや周囲のリンパ節への転移の有無を確認することもできます。

確定診断のための検査(細胞診・組織診)

上記の検査で乳がんの可能性が強く疑われた場合、細胞診・組織診を行って診断を確定します。

細胞診・組織診とは、病変部位から採取した細胞・組織を詳しく調べることをいい、この検査を行うことによって治療選択にも役立ちます。

CT・MRI検査

乳がんと診断され治療方法を検討するときには、X線を用いたCTや磁気を用いたMRIなどの画像検査が行われます。これらの検査では乳房内のがんの広がりをみることができます。

治療

乳がんの治療は病変の広がりや病変組織の細胞の特徴などをもとに、手術治療・放射線治療・薬物療法を組み合わせて行います。以下では、それぞれの治療方法についてお伝えします。

手術治療

手術治療とは乳房の一部、あるいは全てを切除する治療です。乳がんの転移の有無を確認するために、がん細胞が最初に転移するリンパ節の一部を採取するセンチネルリンパ節生検という検査を行います。この検査でがんの転移を認める場合には必要に応じてリンパ節の切除が行われますが、転移が認められなかった場合はリンパ節の切除を行わなくてもよいようになりました。

がんが大きかったり、複数個のしこりがあったりするような場合には、乳房全体を切除することが必要です。その場合、手術を行った後にお腹や背中から採取した脂肪組織やシリコンインプラントなどを用いて、乳房を新たに造る手術(乳房再建手術)が行われます。

近年ではBRCA1・BRCA2遺伝子に異変が認められ、乳がんや卵巣がんを発症している方に対して予防的対側乳房切除術や予防的卵管卵巣摘出術が保険適用になりました。現段階では乳がんや卵巣がんを発症している人にのみ、保険診療の中でまだがんが進行していない側の乳房や卵管・卵巣を予防的に切除・摘出することが可能です。

放射線治療

放射線治療とは、放射線を当てることによってがんを小さくしたり、痛みを和らげたりする治療です。初期〜中期の乳がんでは手術後に行われるほか、手術を行わない中期〜後期のがんでも行われることがあります。また、転移したがんの治療にも用いられます。

薬物療法

乳がんの薬物治療には、ホルモン(内分泌)療法、化学療法(抗がん剤)、分子標的治療などさまざまな治療方法があり、がんの性質や進行度、年齢や本人の希望を考慮して治療法が決められます。

初期〜中期の乳がんでは手術後に行われるほか、中期の乳がんでは必要に応じて手術前にがんを小さくする目的などで行われることがあります。また、手術を行わない中期〜後期のがんや転移したがんの治療にも用いられます。

分子標的薬をはじめとする治療薬の種類が増加し、乳がんの治療の選択肢は広がってきました。今後もさらなる治療の進歩が期待されています。

予防

乳がんの予防には発症リスクとなる飲酒・喫煙などの生活習慣を控え、適度な運動を行って肥満を避けることが肝要です。また、初期の乳がんは無症状の場合もあるため、定期的に乳がん検診を受けがんの早期発見に努めることが大切です。

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