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子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)の概要——種類や原因、症状について

子宮がん(子宮体がん、子宮頸がん)の概要——種類や原因、症状について
坂本 育子 先生

地方独立行政法人山梨県立病院機構 山梨県立中央病院 婦人科 部長/ゲノム検査科 部長

坂本 育子 先生

目次
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子宮がんは女性に特有のがんで、がんができる部位によって子宮体がん子宮頸がんの2つに分類されます。特に子宮頸がんにおいては20~30歳代の若い女性に増加している傾向にあり、発症のピークは40歳代ともいわれています。また、早期発見ができれば比較的生存率は高いがんであるといえます。今回は、子宮がんの種類や症状、原因について、山梨県立中央病院婦人科部長の坂本(さかもと) 育子(いくこ)先生にお話を伺いました。

子宮とは筋肉でできた女性特有の臓器で、妊娠時に胎児を育てる器官です。上部の子宮体部と、下部の子宮頸部(けいぶ)に分けられ、がんができる部位によって子宮体がん子宮頸がんと区別されます。

子宮の図
素材提供:Pixta

子宮体部は袋状になっており、卵管がその左右につながっています。子宮体がんはそのほとんどが子宮体部の内側にある粘膜の子宮内膜から発生するため、子宮内膜がんともいわれます。子宮の筋肉層からできる腫瘍(しゅよう)は、良性のものを子宮筋腫、悪性のものを子宮肉腫といいますが、これらは子宮体がんとは異なる病気で、その発生頻度は子宮体がんよりも低いです。日本では年間およそ1万6千人が子宮体がんという診断を受けており、発症は40歳代で増加し始め、50~60歳代がもっとも多いとされています。

一方、子宮頸がんは子宮の入り口である子宮頸部から発生するがんで、子宮がんのうち約7割を占めています。発生する位置が子宮の入り口付近であることが多いため、婦人科の診察で発見されやすい傾向にあります。また、子宮頸がんの特徴として挙げられるのは、あるとき突然正常な組織からがんが発生するわけではなく、がんになる前段階を経るという点です。20歳代後半から増加し始め、発症のピークは40歳代といわれています。多くのがんが50歳代頃から増加し始めることを考えると、子宮体がん、子宮頸がんともに比較的若年の方にも発生しやすいがんだといえます。

子宮体がんの発症原因は大きく分けて、エストロゲンといわれる女性ホルモンが関係している場合と、そうではない場合があります。

エストロゲンは子宮内膜の発育を促すはたらきを持つため、長期間にわたってエストロゲンの刺激が続くことで、子宮内膜増殖症という段階を経て子宮体がんが発生することがあります。エストロゲンが関係するといわれる原因として挙げられるのは、出産経験がないこと、月経不順閉経が遅いこと、肥満のほか、更年期障害の治療などで行われるエストロゲンのみによるホルモン療法などです。一方、エストロゲンの刺激とは無関係の原因として高血圧糖尿病が挙げられるほか、遺伝が関係するものとして、血縁者に大腸がん乳がんを発症した方がいる場合や、遺伝性腫瘍のリンチ症候群の方がいる場合などが挙げられます。また、子宮の病気のひとつである子宮内膜増殖症のうち、増殖した細胞が正常ではない子宮内膜異型増殖症を発症した患者さんは、子宮体がんが発生する可能性が高い(もしくはすでにがんが発生している)ということが判明しています。

子宮頸がんを発症するほとんどの原因が、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染です。ヒトパピローマウイルスは性交渉により感染するもので、性交経験のある女性の5~8割は感染しているといわれるように、決して珍しいものではありません。ヒトパピローマウイルスに感染してもほとんどの場合、免疫によってウイルスが排除されます。ところが、1割程度の方はウイルスが排除されずに長期間感染した状態となります。このなかでもさらに自然治癒しない一部の方が、子宮頸がんや、その前段階(前がん病変)である子宮頸部異形成という状態になります。ヒトパピローマウイルスに感染してから子宮頸がんとなるまでには数年~10数年の期間を要すると考えられています。

特に子宮頸がんの発症リスクを高める要因としては、最初の性交渉を低年齢で行うこと、複数のパートナーとの性交渉、喫煙、免疫不全状態などが挙げられます。先進国においては、検診の効果もあり子宮頸がんの発生率は減少傾向にあります。その一方で、日本では最初の性交渉の低年齢化が進んでいることから、以前は40~50歳代だった発症のピークが30歳代後半~40歳代へと変化しています。

子宮体がんの自覚症状として、およそ9割もの方に現れるのが不正出血です。出血の程度によっては、おりものに血が混じる(褐色になる)程度の場合もあります。月経ではない時期や閉経後に出血が見られた場合には、医療機関(婦人科)の受診を検討しましょう。

そのほか、排尿時や性交時の痛み、排尿のしづらさ、下腹部の痛みといった症状が現れることがあり、進行すると、お腹の張りが生じる場合もあります。

子宮頸がんの前段階である子宮頸部異形成の状態では、自覚症状が出ることはありません。また、子宮頸がんへと進行した際も、早期段階ではほとんど自覚症状がないといわれています。しかし、子宮頸がんが進行すると、異常なおりもの(のようなもしくは濃い茶色、粘性が強い、水っぽいなど)の増加、月経時期以外や性交時の出血、下腹部や腰の痛みなどが現れることがあります。子宮頸がんにおいても、気になる症状がある場合には、早急に婦人科を受診することを検討してください。

子宮体がん子宮頸がんのいずれも、早期発見ができれば比較的予後は良好ながんであるといえます。検診も比較的負担が少ない方法で行えるため、ぜひ定期的な検診によって早期発見につなげていただきたいです。

次ページでは、子宮がんのステージごとの生存率や早期発見のために重要なことなどについてお伝えします。

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