概要
子宮肉腫は子宮にできる悪性腫瘍の1つで、主に子宮体部(子宮の奥のほうで、胎児の宿る部分)から発生します。
“がん”は皮膚や胃、腸の粘膜、子宮内膜など組織の表面を覆う上皮細胞を由来とする“がん”と、筋肉・線維・骨・脂肪・血管・神経などの非上皮細胞に由来する“肉腫”に分類されます。子宮肉腫は子宮体部の筋肉や内膜下の組織から主に発生します。子宮体部悪性腫瘍の8%を占め、発症数は年間約800人とまれな腫瘍です。
子宮肉腫は、発生する組織によって次の2つに大別されます。以前、子宮がん肉腫は子宮肉腫に分類されていましたが、2020年版のWHO分類によると、子宮がん肉腫は子宮体がんとして取り扱われるようになりました。
子宮平滑筋肉腫
子宮の壁の筋肉組織から発生し、子宮肉腫の約70%を占めます。50〜55歳の女性に多くみられます。
低異型度子宮内膜間質肉腫
子宮内膜の下の間質細胞から発生し、子宮肉腫の25%を占めます。閉経前にみられることが多く、子宮肉腫のなかでは比較的予後(経過)が良好な子宮内膜間質肉腫です。
原因
2021年現在、子宮肉腫が起こる原因は判明していません。肉腫が発生する危険性を増大させる(リスク)因子としては、骨盤に対する放射線療法の治療歴や乳がんに対するタモキシフェンによる治療などが知られています。
症状
子宮肉腫の初期は症状がほとんどありません。
進行した場合に現れる可能性のある症状としては、不正出血(閉経後や月経周期と無関係な性器出血)や下腹部の違和感・膨満感があります。特に子宮肉腫は短期間に大きくなることがあるため、下腹部のしこりが急速に大きくなる場合には注意が必要です。
また、増大した腫瘍が炎症を起こしたり、周囲の臓器を圧迫したりすることで下腹痛や頻尿などの症状を生じる場合もあります。
検査・診断
子宮肉腫の診断は難しいことも多く、下記の内診、病理検査、画像検査、血液検査などを組み合わせて総合的に評価を行います。
内診
内診により腟や肛門から子宮の形や大きさ、子宮周囲の臓器との関係などを調べます。子宮が大きい、通常とは異なる形をしているなどといった異常がみられる場合には、画像検査や病理検査(細胞診、組織診)、血液検査に進みます。
病理検査(細胞診、組織診)
細胞診は専用のブラシやチューブのような器具を腟から入れて子宮の入り口や奥にある細胞を採取し顕微鏡で調べます。また組織診は、子宮内の組織の一部を器具でひっかいて採取した組織を顕微鏡で調べます。
画像検査
子宮肉腫は術前診断が難しく、画像検査は重要な手がかりになります。超音波検査やMRI、CT検査などを行い、子宮肉腫の大きさや場所、内部の性状を確認します。
血液検査
子宮肉腫では血液中のLDHという成分が上昇する場合があり、腫瘍マーカー(血液中などに現れる、そのがんに特徴的な物質)として有用なことがあります。LDHの増加は腫瘍の壊死を反映した結果ですが、子宮肉腫以外の病気が原因でLDHが上昇することもあるため注意が必要です。
治療
子宮肉腫の治療は、病期や子宮肉腫の組織の種類などにより選択肢は異なりますが、手術や薬物治療を行います。
また、再発または転移した場合、可能であれば手術で悪性腫瘍を摘出します。手術が不可能な場合は、患者さんの病状に合わせて化学療法や放射線療法を行います。
手術療法
可能である場合は、病変の手術療法による完全切除、あるいは最大限の腫瘍の減量術が推奨されています。子宮を全て取り除く子宮全摘術と左右両方の卵巣や卵管を取り除く両側付属器摘出術を行うのが一般的です。低異型度子宮内膜間質肉腫では両側卵巣摘出が必要です。骨盤内と大動脈に沿ったリンパ節も同時に取り除くリンパ節郭清が行われる場合は少ないです。
化学療法(抗がん剤)
腫瘍の残存がない完全手術後は、再発や転移を防ぐ化学療法の効果は示されていません。唯一効果が示されているのは、低異型度子宮内膜間質肉腫に対する両側卵巣摘出です。再発や残存病巣には化学療法が行われることがあります。子宮肉腫組織の種類により化学療法の種類が異なり、投与方法や副作用、入院の必要性についてもさまざまです。個別の状況に応じて担当医とよく相談し治療方法を検討することが必要です。
放射線療法
子宮平滑筋肉腫や子宮内膜間質肉腫に対する効果があるかは、現時点(2021年)では示されていません。また、切除不能の症例で出血が止まらない場合には放射線治療が行われます。
ホルモン療法
低異型度の子宮内膜間質肉腫においては術後再発や進行例においてもホルモン治療が有効な場合があり、選択されることがあります。
医師の方へ
子宮肉腫の詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。
「子宮肉腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします
関連の医療相談が10件あります
子宮筋腫による子宮全摘について
臀部から腿にかけて数か月痛み、整形外科を受診したところ椎間板ヘルニアと診断され、その原因がMRIを撮ったことでとても大きい子宮筋腫が原因ではないかと診断されました。 婦人科で受診したところ、子宮筋腫が多発し大きい為、子宮全摘が最善と診断を受けました。 筋腫の種類としては、筋層内・漿膜下・粘膜下全てに複数存在します。現在、セカンドオピニオンを受けるべく準備しておりますが、 実費となる為、少し躊躇しております。子宮筋腫が多発している場合、子宮全摘は一般的なのでしょうか。
ca19-9検査で高い数値が出た
子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫で定期的に病院へ通っていますが、先日血液検査をして、CA19-9が115となり、次回CTをとることになりました。 閉経もしているのを確認しています。 CA19-9の数値は上がったり下がったりですが、100を超えたのは初めてで、CT検査をすすめられました。 ガンではないのかと心配です。
左臀筋内脂肪腫における普段の生活、手術、入院期間等について。
骨盤内がんドックをうけたところ、癌の結果は問題なかったのですが、左臀筋内脂肪腫疑いと結果が出ました。「左腸骨の外側、臀筋内に脂肪と等信号の腫瘤あり。脂肪腫と思われます。サイズは大きいが脂肪以外の軟部組織など脂肪肉腫を積極的に疑う所見は指摘できず。」画像を見るとかなり大きいようで、半年前くらいから時々ある下腹部、子宮周辺の痛みの原因はこれだとわかり早く手術をしたいと思っていますが、なかなか病院の予約が取れず、まして緊急性もないようでこのご時世では手術するのも先になりそうです。サイズは10cm以上はありそうな感じです。①一般的に手術、入院期間、等はどのくらいか例などありますでしょうか。②また普通に生活で破れたり問題はないのでしょうか。③体力維持、ダイエット目的でストレッチ、筋トレ水泳等を行っていますが問題はありますでしょうか。
生理が早くきた
いつもは30-40日程度の生理周期ですが、前回から2週間で生理?がきました(→現在)。 なお、前回の生理時はいつもと様子が違い(血の色がいつもより黒?っぽい、量が少ない・多い)、今回も前回同様に様子が違います。 生活習慣の乱れや過度なストレスはなく、腹痛もひどくはありません。 症状からweb検索すると、子宮筋腫の疑い?もあるのかと思い、婦人科を受診した方がよいのかご相談です。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。