概要
平滑筋肉腫とは悪性の軟部腫瘍の1つで、平滑筋*と呼ばれる特殊な筋肉の細胞と似た性質を持つ細胞からなる腫瘍です。軟部腫瘍とは筋肉や脂肪、神経などの“軟部組織”から発生する腫瘍のことをいい、良性と悪性があります。平滑筋肉腫を含む悪性の軟部腫瘍のことを“軟部肉腫”と呼び、発症頻度が低いことから“希少がん”の1つとして知られています。
平滑筋肉腫は子どもから大人までみられる病気ですが、特に中高年に多いことが特徴です。また好発部位として、後腹膜腔(骨盤の内側)や大きな血管の周辺、手足、胃、子宮などが挙げられます。発生部位に応じて症状や治療方法が異なる場合があります。
悪性の病気のため転移をきたすこともあり、転移しやすい箇所としては肺や肝臓などが挙げられます。
*平滑筋:内臓や血管の壁にあり、そのはたらきを維持している筋肉。自分の意志で動かせないことが特徴。
原因
平滑筋肉腫に限らず、ほとんどの悪性軟部腫瘍は発生原因が明らかになっていません。発生には複雑な遺伝子の異常が関与していると考えられており、現在も研究が進められています。
症状
平滑筋肉腫の症状は、発生部位によっても異なります。好発部位である骨盤の内側(後腹膜腔)に発生した場合、かなり大きくなるまで自覚症状が生じないことが一般的です。
大きな血管の周辺に発生した場合には、血管がふさがったり狭くなったりしてしまうことがあり、それに応じて腎不全や下半身のむくみなどがみられることがあります。また、肝臓に転移すると皮膚や白目が黄色くなる“黄疸”や、お腹が膨らんでくる“腹水”の貯留をみることがあります。
手足に生じた場合は、痛みのないしこりが急激に大きくなることで気付く傾向にあります。いずれの場合も、神経やその周辺に発生すると、しびれや麻痺をきたすことがあります。
検査・診断
平滑筋肉腫をはじめとする軟部肉腫の診断には、画像検査と病理組織検査が行われることが一般的です。
画像検査
画像検査としては、主にMRI検査が行われます。MRI検査では発生した箇所についてより詳しい情報が得られるほか、腫瘍の大きさなど治療方針を決めるうえで必要な情報を得られる可能性が高いとされます。
発生部位が血管の場合は、血管内に造影剤を注入してX線撮影をする血管造影検査を行うことがあります。なお、肺への遠隔転移を引き起こしている可能性もあるため、進行度合いを確認する目的で胸部CT検査も行うことが一般的です。
そのほかに検討される検査方法としては、X線検査、CT検査、良性・悪性の区別などに役立つPET-CT検査、骨への転移を評価する骨シンチグラフィー検査などが挙げられます。
病理組織検査
病理組織検査とは腫瘍細胞の性質を顕微鏡で観察する検査のことをいい、診断のために腫瘍の一部を採取することがあります。肉腫をはじめとする悪性の腫瘍では、確定診断の際によく行われる検査方法です。
ただし、まれな病気であることも影響し、検査をしても具体的な診断が確定できないケースも少なくありません。
また軟部肉腫には多数の種類があり、中には特定の遺伝子異常が明らかになっているものもあるため、必要に応じて採取した腫瘍組織を用いた遺伝子検査を併せて行うことがあります。
治療
平滑筋肉腫の主な治療方法は手術治療です。
放置していると腫瘍が大きくなったり、ほかの臓器へ転移したりすることもあるため、できるだけ早い段階で腫瘍をまるごと取り除いて転移や再発を防ぎます。併せて放射線治療や化学療法を検討することもあるほか、手術により欠損が生じた部分を補う“再建術”が検討されることもあります。
手術治療・放射線治療・薬物療法
手術の際は、腫瘍を確実に取り除くために周辺の正常な組織(皮膚や筋肉など)で包むようにして、広範囲に切除する必要があります。たとえば、腫瘍が重要な血管や神経に近く十分な切除範囲を確保できない場合には、手術前に放射線治療や化学療法を検討し、腫瘍を小さくしようと試みることもあります。
また、手術後に再発の危険性が高いと判断された場合にも放射線治療が検討されることがあるほか、遠隔転移を生じた場合などに抗がん薬や分子標的薬などによる薬物療法が検討されることもあります。
再建術
平滑筋肉腫をはじめとする軟部肉腫の手術治療では、いずれの場合も治療による切除範囲が広くなる傾向にあります。そのため手術による皮膚や筋肉、血管の欠損が大きい場合などには、筋肉や皮膚の移植のほか、血管の再建手術などを検討することがあります。
なお、腫瘍と骨や関節が近い場合には、骨や関節を併せて切除し、人工関節などを取り入れる場合もあります。
予後
平滑筋肉腫はまれな病気であり、治療成績に関する具体的なデータは十分とはいえません。ただし、発生する部位に応じて治療の難易度が異なり、手足に発生した場合がもっとも治癒しやすく、血管、骨盤の内側の順に治療が困難になっていくと考えられています。
治療後も再発や転移が生じる可能性があるため、定期的な経過観察を受けることが大切です。
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