しきゅうないまくぞうしょくしょう

子宮内膜増殖症

最終更新日:
2024年12月16日
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2024/12/16
更新しました
2017/04/25
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概要

子宮内膜増殖症とは、子宮の内側を覆う子宮内膜が異常に厚くなる病気です。

女性ホルモンであるエストロゲンの過剰なはたらきにより、子宮内膜が過度に厚くなることが主な原因です。発症すると、不正出血(不正性器出血)や過多月経月経不順生理痛などの症状が現れます。

「子宮内膜増殖症」という言葉は、子宮内膜が異常に増殖する状態を指す総称として使われますが、医学的には、細胞に異型がないものを「子宮内膜増殖症」、異型がみられるものを「子宮内膜異型増殖症」と区別します。異型とは、顕微鏡で細胞を観察した際に確認される、通常とは異なる形状を指します。異型がみられる細胞は、がん化する可能性があるとされます。

また、異型のない子宮内膜増殖症も、細胞に異型が生じて子宮内膜異型増殖症に進行する場合があります。子宮内膜異型増殖症は進行すると子宮体がん*のリスクが高まるため、特に注意が必要です。子宮内膜増殖症は、子宮体がんが好発する50~60代よりも若い40代の女性に多くみられるのが特徴です。

治療としては、異型のない子宮内膜増殖症に対しては経過観察を行い、症状がある場合は黄体ホルモン療法を実施します。異型がみられる子宮内膜異型増殖症に対しては、手術による外科的治療や黄体ホルモン療法が行われます。

PIXTA

図 子宮の構造
イラスト:PIXTA

*子宮体がん:子宮体部に発生するがんのこと。主に子宮内膜からがんが発生するため子宮内膜がんとも呼ばれる。

種類

子宮内膜増殖症は、子宮内膜の細胞異型の有無によって分類されます。

 異型のない子宮内膜増殖症

異型のない子宮内膜増殖症は、正常な子宮内膜の細胞が増殖するものの、異型細胞の増殖を伴わない状態を指します。ここでは明確な区別のため、異型のない子宮内膜増殖症と表記します。この状態は自然に子宮内膜が縮小する(自然退縮)ことが多く、子宮体がんへの進行リスクは低いとされていますが、約1%が子宮体がんへ進展する可能性があるとされています。

 子宮内膜異型増殖症

子宮内膜異型増殖症とは、増殖した子宮内膜に異型を伴う状態を指します。この状態は子宮体がんになる手前の状態(前がん状態)と考えられており、子宮体がんに進行するリスクが高いとされています。報告によると、子宮内膜異型増殖症の約30%が子宮体がんへ進行するとされています。

原因

子宮内膜増殖症の主な原因は、エストロゲンが過剰にはたらくことです。

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つのホルモンが存在します。エストロゲンは子宮内膜を増殖させる作用があり、プロゲステロンは子宮内膜の増殖を抑制する作用があります。通常、この2つのホルモンのバランスが適切に保たれることで、子宮内膜の厚さが調整されています。

子宮内膜の機能

子宮内膜は子宮の内側を覆う組織で、妊娠や月経において重要な役割を果たしています。月経周期において、子宮内膜は増殖と剥離(はくり)を繰り返します。月経が終わった後、エストロゲンのはたらきにより子宮内膜は徐々に厚くなっていきます。これは受精卵の着床*に適した環境を整えるためです。その後、排卵が起こるとプロゲステロンが分泌され、このホルモンが子宮内膜の増殖を抑えて厚さを一定に保ちます。

妊娠が成立しない場合、エストロゲンとプロゲステロンの分泌は減少します。その結果、厚くなった子宮内膜は剥がれ落ちて体外に排出され、これが月経として現れます。

*着床:受精卵が子宮内膜にくっつき、内膜の内部にもぐり込む過程を指す。妊娠の成立に必要な過程の1つ。

エストロゲン過剰の原因

プロゲステロンは排卵によって分泌されるホルモンです。卵巣機能の低下などからホルモンバランスが崩れると、プロゲステロンの分泌が減少し、相対的にエストロゲンが過剰な状態となります。この状態が続くと、子宮内膜が異常に増殖することがあります。

また、月経不順の方、肥満の方、閉経後にエストロゲン単独でホルモン補充療法を受けている方は、エストロゲンが過剰になりやすく、発症リスクが高くなります。なお、まれにホルモンバランスの異常によらない子宮内膜増殖症も存在します。

症状

子宮内膜増殖症の主な症状は不正出血や過多月経です。不正出血とは月経期間以外に出血がみられる状態を指します。一方、過多月経とは通常以上の月経出血が長く続く状態のことです。

これらの出血が続くと貧血を引き起こすことがあり、その結果として体のだるさや疲れやすさ、動悸といった症状が現れることがあります。また、月経周期が不規則になる月経不順や、生理痛が強くなるといった症状を伴うこともあります。また、若年者での発症は不妊症の原因となることも報告されています。

検査・診断

子宮内膜増殖症の診断には、主に経腟超音波検査と子宮内膜細胞診が用いられます。これらの検査により、子宮内膜の状態を評価します。

経腟超音波検査

経腟超音波検査では、膣内に細い棒状の器具を挿入し、子宮内膜の厚さや性状を観察します。通常よりも子宮内膜が厚くなっている場合は子宮内膜増殖症を疑います。

子宮内膜細胞診・病理組織検査

子宮内膜の細胞や組織を採取し、顕微鏡で詳細に調べる検査です。細胞診では、細い器具を子宮腔内に挿入して細胞を採取します。異型のある細胞がみられ、より詳細な評価が必要な場合は、病理組織検査を行います。この検査では、スプーン状の器具を挿入して子宮内膜をすくい取ることで、より多くの組織を採取します。これらの検査により、異型細胞の有無や子宮体がんの可能性を評価します。

治療

子宮内膜増殖症の治療は、細胞異型の有無と患者の状況に応じて選択されます。

子宮内膜増殖症

異型のない子宮内膜増殖症は、多くの場合自然に改善するため、経過観察が主な対応となります。

黄体ホルモン療法

症状が持続する場合、黄体ホルモン薬のメドロキシプロゲステロン(MPA)を投与します。これにより、エストロゲンの作用を抑え、不正出血や過多月経を改善します。

子宮内膜異型増殖症

異型を伴う場合は、子宮体がんへの進展リスクが高いため、より積極的な治療が必要です。

外科的治療

標準的な治療は、手術によって子宮を切除する子宮全摘出術です。閉経後や妊娠希望のない患者に適用されます。卵巣や卵管の摘出も同時に行われることがあります。

妊孕性温存治療

若年で妊娠を希望する患者には、妊孕性(にんようせい)(妊娠能力)を温存する治療が検討されます。主に黄体ホルモン療法が用いられますが、再発リスクがあるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。

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