子宮にできるがんには、子宮頸がんと子宮体がんの二種類がありますが、それらの病態は全く異なっています。別名、子宮内膜がんと呼ばれる子宮体がんは、子宮の奥にできるがんで、女性ホルモンに影響を受けるといわれています。子宮体がんと女性ホルモンの関係について、飯塚病院産婦人科部長の辻岡寛先生にお話しをお伺いしました。
子宮体がんは、女性ホルモンの影響を受けるがんとして知られています。女性ホルモンがいちばんわかりやすい形で現れるのが月経で、はじまって排卵までの期間(およそ2週間)を卵胞期あるいは低温期といい、排卵した後に次の月経がくるまでの期間が黄体期あるいは高温期といいます。
エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれるものです。女性の体を妊娠しやすい状態にコントロールする役割があり、排卵前にピークを迎え、排卵後にいったん減少した後、再度分泌が増加します。
一方、プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、妊娠・出産の準備をするホルモンで、排卵後に分泌のピークを迎えます。妊娠しなかった場合には分泌が減少していき、子宮内膜が萎縮して、月経が起こります。
このように、月経がある女性では、エストロゲンとプロゲステロンが定期的な周期で規律をもって分泌されています。
ところが閉経などによって排卵をしなくなると、エストロゲン、エストロゲンと分泌が続きます。子宮内膜を萎縮させる役割のあるプロゲステロンが分泌されないので、子宮内膜が増殖されてがんが発生してくるということになるのです。
このような経緯で卵巣機能が低下するため、50歳前後になると更年期障害が起こります。その更年期障害の治療としてホルモン補充療法をされる場合がありますが、この治療法に関しては勘違いされている方も少なくありません。
ホルモン補充療法は、エストロゲンの分泌が欠如して起こる更年期障害に対する治療として行われています。または、エストロゲンの分泌がなくなることによって起こる骨粗鬆症に対して行われます。理論上、エストロゲンを補充すればこれらの症状は改善されることになるのですが、プロゲステロンを補充しなければ子宮体がんが起こってきます。
そのため、更年期障害などでホルモン補充療法をする際には、エストロゲンと同時にプロゲステロンも補充しなければならないということです。
最近では、内科の先生方も更年期障害の治療でホルモン補充療法をされています。しかし、エストロゲンだけ投与していると、高齢の方などについては子宮体がんが起こりやすくなってきます。ただ、子宮筋腫などで子宮を全摘している方については、エストロゲンの補充だけで構いません。これらの点についてはまだ誤解も多いため、今後さらなる啓発が必要だと考えています。
先ほども少しお話ししましたが、30代や40代の若い年代でも子宮体がんを発症する方がおられます。40代での発生率は子宮体がん全体の約4%。30代でもごく稀にいらっしゃいます。
子宮体がんの治療-それぞれの適応と再発リスクについては子宮および卵巣・卵管の摘出と骨盤内のリンパ節郭清術となります。しかし、この年代の女性に関しては、これから妊娠・出産するという方も少なくありません。そのため、出産を希望される場合には子宮を温存する治療を行うことになります。
そこで行われているのが、黄体ホルモンの大量投与という治療法です。黄体ホルモンとはプロゲステロンのことで、子宮体がんを抑制するホルモンというお話しを先ほどしましたが、その黄体ホルモンを大量に投与して、とにかく子宮内膜を萎縮させるという治療法を施します。
ごく初期の子宮体がんが対象者となりますが、黄体ホルモン大量投与を行って、子宮体がんが消失したことを確認したあと、とにかく早く妊娠するようにお勧めしています。
ただ、このようなケースでは多くの場合、妊娠・出産のあと、経過をみていくと再発する方がどうしても出てきます。そのため、経過を診ていくなかで再発となった時点で、子宮を摘出するという経緯をとることが少なくありません。
2014年より初期の子宮体がんに対しては腹腔鏡での手術も保険適用の上でできるようになりました。現時点では行える施設は限られており決して多くはないのですが、飯塚病院ではこの手術方法にも取り組んでいます。
飯塚病院 産婦人科 管理部長
飯塚病院 産婦人科 管理部長
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医日本婦人科腫瘍学会 婦人科腫瘍専門医日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(産科婦人科領域)日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
飯塚病院産婦人科部長。ハイリスク妊娠などの周産期医療をはじめ、婦人科腫瘍では子宮頸がん・体がん・卵巣がんなど幅広い分野に精通し、内視鏡手術もこなすオールラウンダー。日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医および同学会指導医、日本婦人科腫瘍学会認定 婦人科腫瘍専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医および同機構がん治療暫定教育医。
辻岡 寛 先生の所属医療機関
関連の医療相談が23件あります
体がん手術後の後遺症
お世話になります。 先月31日に開腹手術で子宮、卵巣、リンパ摘出の手術をしました。 結果はG2ステージ1bでした。 18日から抗がん剤治療が始まります。 先生にお聞きしたい事は2点あります。 1点目、術後2.3日してから右足前面に痺れがあり、側面が麻痺しており感覚が全くありません。歩行には支障はありませんが歩く度にジンジン響きます。退院前に先生に相談したところ、治りますよ。と言われました。 しかし2週間近く経っても何も変わりません。日にち薬で時間がかかるのでしょうか? 2点目、18日から抗がん剤治療始まりますが、治療中痺れが出ると聞きました。 今の痺れが酷くなるとゆう事はないですか? 歩けなくなるのではと不安です。 ご回答宜しくお願いします。
ペット集積あり、細胞診疑陽性
こんにちは、54歳女性です。12月6日、たまたまペットCTの検診を受けたところ子宮に集積あり、検査後の医師面談で子宮体がん濃厚と言われました。 婦人科で細胞診を行いましたら疑陽性、hyporplasia が考えられるとのコメントでした 子宮内膜増殖症と言われました。子宮内膜増殖症でもペット集積はするのでしょうか? 総合病院に紹介していただき12月20日受診予定です。全く症状がなかったのに昨夜微量の出血ありました。不安でたまりません。これまで全く症状が無くて今年の2月にも子宮体ガン検診を受け、陰性だったのに思いもよらない出来事に受診までの毎日が心配です。
黄体ホルモンとめまい
更年期障害と診断されホルモン療法を始めて2年が経ちました。子宮体がんの検査が思わしくなく、ホルモン剤を服用し始めて三日後に出血しました。5日程で出血はとまりましたが、その間ずっとめまいと嘔吐が続き苦しかったです。今から7年前には突発性難聴にかかり耳の閉塞感もあります。因みに、降圧剤と不整脈もあり薬も飲んでいます。黄体ホルモン剤とめまいと耳の閉塞感は何か関係あるのでしょうか?何科を受診したら良いのでしょうか?
子宮頸がんの遺伝について
子宮頸がんや子宮体がんは家族の遺伝とか関係ありますか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「子宮体がん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。