乳がんでMRIを用いるケースとして「広がり診断」のほかに「追加検査」と「治療効果の判定」があります。「追加検査」と「治療効果の判定」がどのような目的で行われ、どのようなメリットがあるのかについて、乳腺専門医である京都府立医科大学放射線診断治療学講座講師の後藤眞理子先生に解説をしていただきました。
乳腺診療では、マンモグラフィ、超音波検査を経て、確定診断のために細胞や組織を取る生検を行なって最終的に良悪性の鑑別を行なうというのが診断までの一般的な流れです。ただ、時にマンモグラフィと超音波検査で生検をするかどうか判断に迷う場合があります。この場合、針を刺す、という侵襲の高い検査に行く前に、MRIを「追加検査」として加えて、生検の適応を決める場合があります。MRI検査の結果、良性と判断できれば生検を行なうことなくそのまま経過観察を行って様子を見たり、悪性と疑われれば生検へと進むという流れになります。
乳房MRIは近年急速に撮影・診断方法の一般化が進んでおり、追加検査として行われる事例は増えているように思われます。
早期乳がんの場合、根治のための手術が第一の選択となります。しかし、手術を行うことが困難な局所進行乳がん(癌が皮膚や胸壁に及んでいるためそのままでは手術を行うことが難しい乳がん)の手術をできるようにしたり、しこりが大きいために乳房温存手術が困難な乳がんを、しこりを小さくして乳房を温存できるようにする目的で薬を使う「術前化学療法」を行うことが増えています。
これらの術前化学療法で治療の効果がどれだけあったかを判断するためにMRI検査が行なわれることがあります。従来は、マンモグラフィや超音波検査で治療効果を判定していましたが、より高い精度で判定するためにここでもMRI検査が使われるケースが増えているのです。術前化学療法の治療効果の判定においては、薬剤を使ったことでしこりがどれだけ縮小したかどうかを見るほか、残存しているしこりが広がっていないかどうかなどを見ます。薬剤の効果は画像上で多様な表れ方をするために、効果の判定はやはり多くの経験が必要となります。それでもマンモグラフィや超音波と比べると有用性が高いという報告が多く出されています。
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