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遊離脂肪移植による乳房再建
横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科部長の佐武利彦准教授は「穿通枝皮弁(せんつうしひべん)」による乳房再建術において、日本でトップクラスの技術と実績を持つパイオニアです。佐武先生が現在も...
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遊離脂肪移植による乳房再建

公開日 2015 年 10 月 10 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

遊離脂肪移植による乳房再建
佐武 利彦 先生

公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科 部長 准教授

佐武 利彦 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科部長の佐武利彦准教授は「穿通枝皮弁(せんつうしひべん)」による乳房再建術において、日本でトップクラスの技術と実績を持つパイオニアです。佐武先生が現在もっとも注目している遊離脂肪移植による乳房再建の最新事情についてうかがいました。

脂肪注入による豊胸術の歴史

1980年代に米国で脂肪注入による豊胸術が流行しましたが、当時の未成熟な技術のもとで脂肪壊死などがひんぱんに起こっていました。このため、米国形成外科学会では「脂肪注入による豊胸術を行うべきでない」という立場をとり、1987年~2005年までは乳房への脂肪注入は事実上封印されていました。

しかしその後2009年以降、コールマンテクニックという、より洗練された脂肪注入技術での実績が評価され、2012年には米国形成外科学会・米国美容外科学会が脂肪注入を「慎重に施行してもよい」との見解を公式に表明しました。

遊離脂肪移植における2つの技術革新

現在の遊離脂肪移植は、従来の脂肪注入から進歩した安全なものです。太ももの内側などから脂肪組織を吸引し、遠心分離で不純物を取り除いてから乳房に注入します。注入に際しては脂肪細胞のひとつひとつが毛細血管から血流を得られるよう、細心の注意を払って行います。そしてこの再建術がより現実的なものとなった要因として、2つのイノベーション―革新的な技術の導入がありました。

体外式エキスパンダー BRAVA®

BRAVA®は本来、豊胸を目的とする美容器具ですが、これを体外式エキスパンダーとして手術の前後に4週間ずつ装着します。脂肪を注入するスペースをつくり、血行をよくすることで注入した脂肪細胞の定着率を高めることができます。

脂肪幹細胞の抽出・培養

従来の脂肪吸引・脂肪注入では、吸引した脂肪組織をそのまま注入していたため、さまざまな問題を引き起こしていました。現在行われている遊離脂肪移植では、吸引した脂肪組織から血液や余分な脂など不純物を取り除き、脂肪細胞のみを抽出しています。

この脂肪細胞の中でも、脂肪幹細胞と呼ばれる前駆細胞が重要な役割を果たします。幹細胞は脂肪に変化することができる性質を持っていたり、血管の生成を促したりします。

抽出した脂肪組織から幹細胞を抽出濃縮、培養してから移植することにより、スリムな体型の患者さんから自家組織を少ししか取れない場合でも、将来的に再建に十分な量を確保することができるかもしれません。

(Cytori社 Celution®800Systemとカネカ閉鎖型自動細胞培養装置P4CS)

遊離脂肪移植による乳房再建のメリット・デメリット

メリット
• 手術の傷がごく小さな針穴だけで済む、低浸襲な手術
• 手術が3時間程度で済み、日帰りも可能
• あたたかく、やわらかな乳房の再建ができる
• 希望に合わせて脂肪のドナー部を選ぶことができる
乳がん切除手術後の痛みや炎症を軽減することができる
• 放射線治療によって損なわれる、皮膚から汗や皮脂を出す腺の機能を改善する

デメリット
• 保険適応ではないので、費用は自費負担となる
• BRAVA®の装着による皮膚のかぶれや生活上の制限がある

費用と今後の課題

現在は保険適応ではないため費用は自費負担となりますが、先進医療保険制度により、患者さんの費用負担の軽減を目指しています。今後長期的なデータを蓄積して安全性を検証し、将来的には保険適応になることを目標としています。

また、体外式エキスパンダーは日本人の肌には負担が大きくなっており、①使用法の工夫 ②製品の改良 などが望まれます。

横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科 准教授。「穿通枝皮弁」による乳房再建では国内でも数多くの手術症例数を有し、高い成功率を誇っている。「あたたかく、やわらかく、美しい」乳房再建をめざしており、多くの患者さんに信頼されている。近年では遊離脂肪移植による乳房再建の手術手技、術前後ケア法の確立に尽力している。

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