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インタビュー

脂肪注入による乳房再建

脂肪注入による乳房再建
佐武 利彦 先生

公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科 部長 准教授

佐武 利彦 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科部長の佐武利彦准教授は「穿通枝皮弁(せんつうしひべん)」による乳房再建術において、日本でトップクラスの技術と実績を持つパイオニアです。佐武先生が現在もっとも注目している遊離脂肪移植による乳房再建の最新事情について伺いました。

1980年代に米国で脂肪注入による豊胸術が流行しましたが、当時の技術は未成熟なものであったため、脂肪壊死などが頻繁に起こっていました。このため、米国形成外科学会では「脂肪注入による豊胸術を行うべきでない」という立場をとり、1987年~2005年までは乳房への脂肪注入は事実上封印されていました。

しかし2009年以降、コールマンテクニックという、より洗練された脂肪注入技術での実績が評価され、2012年には米国形成外科学会・米国美容外科学会が脂肪注入を「慎重に施行してもよい」との見解を公式に表明しました。

現在の脂肪注入は、従来の脂肪注入から進歩した安全性が高いものです。太ももの内側などから脂肪組織を吸引し、遠心分離で不純物を取り除いてから乳房に注入します。注入に際しては脂肪細胞のひとつひとつが毛細血管から血流を得られるよう、細心の注意を払って行います。そしてこの再建術がより現実的なものとなった要因として、2つのイノベーション―革新的な技術の導入がありました。

本来、豊胸を目的とする美容器具を体外式エキスパンダー(体外式乳房拡張装置)として手術の前後に4週間ずつ装着します。これを行うことで、脂肪を注入するスペースを作り、血行をよくすることで注入した脂肪細胞の定着率を高めることができます。

2019年2月現在では、手動式ポンプ、チューブ、カップからなる体外式エキスパンダーを使用しています。従来のものよりも安価であるうえに、皮膚トラブルが少なく、陰圧による組織拡張効果も認められています。

従来の脂肪吸引・脂肪注入では、吸引した脂肪組織をそのまま注入していたため、さまざまな問題を引き起こしていました。現在行われている脂肪注入では、吸引した脂肪組織から血液や余分な脂など不純物を取り除き、脂肪細胞のみを抽出しています。

この脂肪細胞の中でも、「脂肪幹細胞」と呼ばれる前駆細胞が重要な役割を果たします。幹細胞は脂肪に変化したり、血管の生成を促したりする性質を持っています。

抽出した脂肪組織から幹細胞を抽出濃縮、培養してから移植することにより、スリムな体型の患者さんで自家組織を少ししか取れない場合でも、将来的に再建に十分な量を確保することができる可能性があります。

メリット

  • 手術の傷がごく小さな針穴だけで済む、低浸襲な手術
  • 手術が2~3時間程度で済み、日帰りも可能
  • 温かく、柔らかな乳房の再建ができる
  • 希望に合わせて脂肪のドナー部を選ぶことができる
  • 乳がん切除手術後の痛みや炎症を軽減することができる
  • 放射線治療によって損なわれる、皮膚から汗や皮脂を出す腺の機能を改善する

デメリット

  • 保険適用ではないので、費用は自費負担となる
  • 治療回数が複数回(2~3回以上)に及ぶことが多い
  • 体外式エキスパンダーの装着による皮膚のかぶれや生活上の制限がある

現在は保険適用ではないため費用は自費負担となります。当院で行う場合の費用は、片側か両側か、また手術時間や入院期間によって大きく異なりますが、約50〜100万円です(2019年6月時点)。

今後長期的なデータを蓄積して安全性を検証し、将来的には保険適用になることを目標としています。

また、体外式エキスパンダーは日本人の肌には負担が大きくなっており、(1)使用法の工夫 (2)製品の改良 などが望まれます。

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  • 公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科 部長 准教授

    佐武 利彦 先生

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