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遺伝性乳がん・卵巣がんについて -【HBOC】その特徴と対応は?

遺伝性乳がん・卵巣がんについて -【HBOC】その特徴と対応は?
海瀨 博史 先生

東京医科大学 乳腺科学分野

海瀨 博史 先生

HBOCという言葉をご存知でしょうか。近年、アメリカの女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが健康である乳房を乳がん発症予防のために切除したことが話題となり、日本のメディアでも取り上げられましたので覚えている方もいらっしゃるかと思います。本記事では、今後知っておいて欲しい<HBOC>について、乳腺の病気に詳しい東京医科大学乳腺科学分野 海瀬博史先生にお話を伺いました。

※HBOC: Hereditary Breast and/or Ovarian Cancer Syndrome

HBOCとは、ヒトの遺伝子の一部に異常が有り乳がん卵巣がんを発症しやすい状況の事で「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」と呼ばれます。HBOCの患者さんは染色体の一部に異常をきたしていて「BRCA1」もしくは「BRCA2」という遺伝子の変異を受け継いでいることがわかっています。この遺伝子変異によって、乳がん・卵巣がんを発症しやすい状況になっていると考えられています。

国内では、特定非営利活動法人日本 HBOC コンソーシアム にてとても解りやすい冊子「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために(ver.3)」をホームページ上で公開しています。一番正しくかつわかりやすく伝えていると思いますので、HBOCを知りたい方は是非アクセスして情報を入手して下さい。

私の解説も大筋はこれに準じています。

国立がん研究センターの報告によると、2016年1年間の乳がん罹患者数は約9万人、11人に1人が乳がんになると推測されており、そのうちHBOCである患者さんは3-5%(2,700~4,500人)と報告されています。

また、卵巣がんは1年に約1万人が罹患しており、そのうちHBOCである患者さんは10%(1,000人)と報告されています。

HBOCの患者の割合

HBOCに関連した乳がんは一般的な乳がんと比べると、どこが違うのでしょうか。

下記にまとめてみました。

・若年で乳がんを発症する(通常罹患率の高いのは40歳から60歳代でそれより若くなる傾向にあります)

・トリプルネガティブ※1の乳がんを発症する率が高い

・片方の乳房に複数回乳がんを発症する

・両方の乳房にがんを発症する

・乳がんと卵巣がんの両方を発症する

・男性で乳がんを発症する

・家族のなかに乳がんや卵巣がんになった、ほかにはすい臓がんや前立腺がんの方がいる

※1トリプルネガティブ・・・エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、ハーツーの発現を持たないタイプ。

どちらかの親がHBOC関連の乳がんであった場合、お子さんへの遺伝を心配されると思います。頻度は、両親からそれぞれ二対の染色体の片方が子どもに引き継がれるので原因遺伝子変異(BRCA1 あるいは BRCA2変異)が遺伝する確率は二分の一です。

両親からHBOCの原因遺伝子(BRCA1 ・ BRCA2)を受け継いでいたとしても、すべての方が乳がん卵巣がんを発症するわけではありませんので、過剰に不安を持たないようにしてください。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の方の乳がん・卵巣がんの発症率

HBOC患者さんが、乳がんを発症する可能性は調査によって異なりますし、現時点では日本人に特化したデータの報告はありませんが、HBOCではない集団よりリスクは高くなります。

卵巣がん発症の可能性も乳がんと同じように考えています。

「HBOCであるから」といって乳がん発症後の治療法が大きく変わってくることはありません。

化学療法に関しては、薬剤選択の際、BRCA1の変異がある乳がんでは有効性を期待されるものが開発されてきています。

手術に関しては、アンジェリーナ・ジョリーが受けた乳がんになる前に乳房切除をする「予防的乳房切除」という方法があります。さらに、早期発見が困難な卵巣がんに対しても「予防的卵巣切除」が行われることが有ります。但し、がん発症前の予防切除については、対応可能な施設が限られています。医療者と十分な話し合いが必要です。

予防切除は必ず行うべきなのか? と心配になりますが、HBOCの方が必ず乳がん卵巣がんを発症するわけではありませんので、対応については十分な医療情報を知り、専門医と十分に話をすべきです。 乳がんは早期発見が可能なので、若い年齢(25歳くらい)から検診を受けはじめ、MRI検査・マンモグラフィを受けることが米国のガイドラインでは推奨されています。

海瀬先生

HBOCと診断されたら、どのように対処していくべきでしょうか。

現在、HBOCに対する対応法の指針とされているのは海外のがん診療ガイドラインです。

NCCN(世界の主要ながんセンターの同盟団体)が作成したこのガイドラインでは、HBOCと診断された後の検診・予防方法について、以下のことを推奨しています。

※National Comprehensive Cancer Network

18 歳から

乳房の自己検診を行いましょう

25 歳から

医療機関で半年~1 年に 1 回の頻度で視触診を受けましょう

25~29 歳

あるいは

家族が乳がんを発症した最も早い年齢から

1 年に 1 回の頻度で MRI 検査を行いましょう(MRI 検査ができなければマンモグラフィ検査)

30 歳~75 歳

1 年に 1 回の MRI 検査とマンモグラフィ検査を行いましょう

75 歳以上

主治医と相談し個別に対応していきましょう

乳がん治療後

残っている乳房組織に対して 1 年に 1 回のマンモグラフィと MRI 検査を継続しましょう

摘出手術をする場合

出産を終えて35~40 歳の間ぐらい

リスク低減手術(卵巣がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に左右両方の卵巣および卵管を切除する手術)が推奨されます

摘出手術をしない場合

30~35 歳から

または

家族で最初に卵巣がんと診断された人の発症年齢の 5~10 歳早くから

 

婦人科の医師に相談し、半年に 1 回の頻度で経腟超音波検査、腫瘍マーカー(血液検査)を考慮しましょう

※リスク低減手術によってのみ、卵巣がんによる死亡率を減らす効果はリスク低減手術に認められています。一方、経膣超音波検査や腫瘍マーカーの検査は、積極的に推奨されるほどの早期発見の精度は示されていません。

<乳房と前立腺の検診>

35 歳から

乳房の自己検診を行いましょう

また、医療機関で 1 年に 1 回の頻度で乳房の視触診を受けましょう

BRCA2遺伝子に変異を有する場合

 

40 歳から前立腺がんの検診を受けることが推奨されています

BRCA1遺伝子に変異を有する場合

40 歳から、前立腺がんの検診を受けることについて医療者と話し合いましょう

以上はかなり細かく記載されていますが、大事なことは専門医や専門カウンセラーと十分に相談しながら方針を決めていくことが重要です。

まずは、皆さんに正しい知識を知ってもらうことが第一で、そのために下記ホームページにアクセスして、

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために(ver.3)」を入手して下さい。現在日本で入手可能な最も優れた資料だと思います。<特定非営利活動法人日本 HBOC コンソーシアム 広報委員会 編集>

適切な情報を入手し、混乱しないためにも正しい情報を、しっかりと整理していくことが重要です。

 

【参考URL】

  1. 特定非営利活動法人日本 HBOC コンソーシアム 広報委員会 編集 「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために(ver.3)
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