現在、日本人女性がかかるがんの第一位は乳がんです。早期発見、治療を促すため各市町村では対策型の乳がん検診が行われています。対策型検診ではまずマンモグラフィ検査が行われ、要精査となった場合は、医療機関の受診が指導されます。医療機関では超音波検査、必要であれば生検が行われ、診断が確定します。日本における乳がん検診の流れについて、乳腺専門医である京都府立医科大学放射線診断治療学講座講師の後藤眞理子先生に説明をしていただきました。
乳房には「脂肪」と「乳腺組織」があります。乳がんはこのうち乳腺組織から発生するがんです。乳がんの発生は細胞の遺伝子異常と大きくかかかわりがあり、また発生・進展ともに女性ホルモンに依存するタイプがあることが知られています。
乳腺組織は腺葉という単位からできています。腺葉は分泌物を産生する部分である小葉と、分泌物を運ぶ乳管で構成されています。乳がんの多くは乳管から発生し、乳管がんと呼ばれます。乳管がんよりは少ないですが、小葉から発生する乳がんもあり、小葉がんと呼ばれます。
日本では1年間に8万人以上(※)が乳がんを発症し、約1万3千人が死亡しています。乳がんを早期に発見するために、日本では1987年度から老人健康法に基づいて自治体や職場で問診および視触診による乳がん検診(対策型検診)が始まりました。2004年度からは健康増進法に基づいて40歳以上の女性に対し、視触診およびマンモグラフィ(乳房X線撮影検査)併用によるがん検診を2年に1回実施することが推奨されています。
はさんで圧迫するのは乳腺組織の重なりを少なくし、病変をはっきりと映し出すためです。マンモグラフィ検査は腫瘤(しこり)だけでなく、石灰化のある小さな乳がんの発見にも適しています。マンモグラフィではしこりは白い影として映し出されます。また白い点々として映し出される石灰化は、早期乳がん(非浸潤癌)によく見られます。
マンモグラフィでは乳腺組織が白く、脂肪が黒く写ります。乳房は年齢とともに乳腺組織が少なくなり脂肪に置き換わっていきます。閉経前の女性では乳腺組織の割合が多いため、画像全体が白っぽくなり内部の様子とらえづらく、乳がんの発見が難しくなることが知られています。そこで検診マンモグラフィでは閉経前の40歳代では2方向、閉経後の人が多い50歳以上は1方向のみの撮影が基本となります。
多くの乳がんは乳腺組織より黒く映し出され、乳腺組織の重なりが問題にならないため、乳腺病変の描出にすぐれています。このため、マンモグラフィ検診で見つかった病変の追加の検査としても用いられます。ただし、乳がんだけでなく良性の病変も拾い上げるため、その区別に注意を要します。
細胞診は細い針で病変から細胞を採取して、顕微鏡で見てがん細胞であるかどうかを判断する方法です。細胞診よりも太い針を使ってより多くの検体を採取する針生検、マンモトーム生検という方法は組織診と呼ばれ、より確実な診断を得ることができます。また組織診では、乳がんであった場合、ホルモン受容体の状態など治療方針の決定に必要な情報を得ることができます。
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