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乳がん検診で病変が見つかりにくい「高濃度乳房」 高濃度乳房を調べる方法...
高濃度乳房とは脂肪よりも乳腺実質(乳管や小葉)の割合が多い乳房のことです。高濃度乳房は、病気や、乳がん発症の前段階を指すものではありません。しかし、脂肪性乳房と比べると乳がんの発症リスクがわずか...
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乳がん検診で病変が見つかりにくい「高濃度乳房」 高濃度乳房を調べる方法・検診や検査で気を付けるべきこととは?

公開日 2017 年 05 月 01 日 | 更新日 2018 年 09 月 21 日

乳がん検診で病変が見つかりにくい「高濃度乳房」 高濃度乳房を調べる方法・検診や検査で気を付けるべきこととは?
植松 孝悦 先生

静岡県立静岡がんセンター 生理検査科・乳腺画像診断科

植松 孝悦 先生

高濃度乳房とは脂肪よりも乳腺実質(乳管や小葉)の割合が多い乳房のことです。高濃度乳房は、病気や、乳がん発症の前段階を指すものではありません。しかし、脂肪性乳房と比べると乳がんの発症リスクがわずかに高いことや、マンモグラフィで病変が見つかりにくいという特徴があることから「自分が高濃度乳房なのか知りたい」「高濃度乳房である場合にはどうしたらいいのか」と不安に感じられる方もいらっしゃいます。

このような高濃度乳房に対する不安には、どのように向き合うべきなのでしょうか。記事1に引き続き、静岡県立静岡がんセンター 生理検査科・乳腺画像診断科の植松孝悦先生に解説いただきました。

高濃度乳房の概要については記事1『マンモグラフィで乳がんの判別が難しい高濃度乳房 その特徴や病気のリスクについて正しく理解する』をご覧ください。

検診で「高濃度乳房」はわかるのか?

検診結果

現時点の「対策型の検診」で、高濃度乳房であることの通知は必要ない

日本で行われている乳がん検診には、対策型(住民検診型)と、任意型(人間ドック型)の2つがあります。

 

対策型がん検診

(住民検診型)

任意型がん検診

(人間ドック型)

提供機関

行政

医療機関や検診機関

目的

国民全体の乳がん死亡率低下のため

個人の健康のためや会社の福利厚生など

検査内容

原則はマンモグラフィ

原則はマンモグラフィであるが、正しい理解が得られる説明のもとで個人の判断で超音波検査や乳房MRIも選択可能

費用

公的資金(税金)

全額自己負担(会社負担)

実施対象

国や行政が対象者を指定

(対象年齢:40歳以上)

(検診間隔:2年に1度)

任意であり定義なし

 

対策型検診は、国や行政が提供しているもので、国が定めた対象者が受診します。一方、任意型検診は、医療機関や検診機関がそれぞれに提供するもので、受診するかどうかは個人の価値観に左右され、個人の責任で利用します。

多くの方が公的資金(税金)を使用して受診をする対策型検診では、現時点では検診マンモグラフィで高濃度乳房であることが確認されていても、それを検査結果として、受診者すべての方に通知することは義務づけてありません。

なぜ高濃度乳房は通知されないのか?

検診

高濃度乳房に対して「死亡率減少」が科学的に証明された検診方法はない

検診でマンモグラフィを行い高濃度乳房がわかった場合、その後にどのような対応をとるのが適切かということについては、今も論議が続いています。現時点では高濃度乳房の受診者に対して死亡率減少を認める科学的根拠のある有効な検診方法はありません。そして高濃度乳房とわかって、マンモグラフィ以外の検査を受けたとしても、必ず病変が発見されるわけではありません。さらに他の検査を追加すると偽陽性などの検診の不利益が増加することがわかっています。以上のような理由で高濃度乳房の受診者に追加検査をすると不利益が利益を上回る可能性が高く不要な負担がかかってしまいます。

現在のところ、乳がんの死亡率を低下させる効果が証明されている検査方法はマンモグラフィのみです。そのため、検診で行ったマンモグラフィの結果、高濃度乳房であるということがわかっても、それを受診者全員へ通知し、他の検査を受けるよう指導することが必ずしも最善であるとはいえないのです。

高濃度乳房の通知は、不要な不安や混乱を招く危険がある

高濃度乳房に対しての理解は、まだ一般の方々に十分浸透しているとはいえません。そのため、受診者が高濃度乳房のことを十分理解できるよう説明を行い、通知後に適切な行動をとれるよう指導する体制整備が必要です。しかし、現状はそういった体制の整備が万全ではありません。このような状態のまま通知のみが行われてしまうと、通知を受けた方は不要な不安や精神的負担を被る可能性もあります。今後、受診者のニーズを踏まえたよりよい通知の方法について、日本乳癌検診学会 デンスブレスト対応ワーキンググループが中心となってその対応を検討していく予定です。

「行政の体制づくり」なしに高濃度乳房の通知はできない

高濃度乳房の通知をするためには、様々な体制づくりが必要です。

たとえば受診者が理解しやすいように、どのような言葉(受診者に理解しやすい言葉など)、どのような形(パンフレットでの説明など)で伝えるか、質問があった場合、誰がどのように対応するかということを検討する必要があります。また、このような作業を市区町村、検診実施機関などがそれぞれの立場で役割分担し、受診者が過度の不安に陥らないような体制の整備が必要になります。

まだこのような体制整備は不十分と考えられるため、現時点で、受診者すべての方へ高濃度乳房であるかどうか、一律に通知することは、時期尚早であると判断できます。こうしたことから、単に乳房の構成を伝えるのではなく、受診者が十分理解できその後適切な行動をとれるような説明・指導する体制整備が求められています。今後、高濃度乳房を正しく理解するための方策などを、国および関係各団体は協力して検討して行く予定です。

高濃度乳房であるかを知るためには

受診者には「高濃度乳房」を知る権利がある

受診者の乳房の構成(高濃度乳房であるかどうか)は、受診者の個人情報です。そのため検診で高濃度乳房とわかった場合、受診者はそれを知る権利があります。

しかし対策型検診は、公共政策として税金を使用し、不公平がないように平等に行われるものです。そのため、高濃度乳房であるかどうかが通知されるときには、対策型検診の受診者に対して一斉に行われるべきでしょう。しかし体制が整っていない現状では、そのような一律の通知は難しいといえます。今後、受診者から正しい理解が得られるような説明・指導とそのための体制整備にむけて国および関係各団体は協力して行く予定です。

現時点で高濃度乳房の通知を受けたい場合、任意型検診の場合は、その検査結果説明を受けるときに直接担当医師に質問するというのは、一つの方法といえるかもしれません。

任意型検診を受ける場合には、マンモグラフィ以外の検査(超音波検査や乳房MRIなど)を正しい理解が得られる説明のもと個人の判断で追加受診することも可能です。そうした追加検査を行うことは、病変を発見できる可能性が高まることがメリットですが、検査を受けるぶん不利益(偽陽性、過剰診断など)の負担が増えたり、それらの検査を追加しても乳がんを発見できないケースもあるというデメリットもあります。そういった追加検査の利益・不利益を理解した上で受診するようにしましょう。

高濃度乳房を検診以外で気付くには

マンモグラフィ検査以外で高濃度乳房に気付くことは難しい

高濃度乳房では、脂肪組織が少なく乳腺実質が多いため、乳房全体が硬いという特徴があります。しかし乳房の硬さを他人と比べるような機会はあまりなく、ご自身の乳房が硬いかどうかを客観的に判断することは困難です。現状では、高濃度乳房であるかどうかを、マンモグラフィ検査を受ける方法以外で確認することは難しいといえるでしょう。

高濃度乳房ではどのような対応が望まれる?(超音波検査[エコー]による追加検査・検診頻度など)

植松孝悦先生

マンモグラフィに「超音波検査」を追加する乳がん検診のメリット

近年のJ-STARTという研究では、40歳代の方にマンモグラフィと超音波検査の両方を行う検診で、早期乳がんの発見率が約 1.5 倍になるという結果が報告されています。40歳代の方は高濃度乳房の割合が高いので、高濃度乳房の方に超音波検査を追加したほうが、乳がんの発見率が高いということがわかります。

しかし今のところ、乳房超音波検査を追加することによる死亡率減少効果までは確認されていません。さらにJ-STARTの結果から超音波検査を追加すると偽陽性も増加して受診者の不利益が増すことも明らかになっています。そのため、対策型乳がん検診に超音波検査を追加で行うことの意義については、さらなる研究・検討が求められています。現時点では高濃度乳房の方に超音波検査を追加する乳がん検診の利益が、検査の不利益を上回るというエビデンスはなく、現時点で安易に高濃度乳房の方にマンモグラフィに超音波検査を追加することを推奨できません。

※J−START…Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trialの略称で、2015年に発表された、乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験のこと。

「超音波検査」を受診する場合にはそのデメリットも理解することが重要

2つの検査方法のメリットとデメリットを下記の表にまとめています。

 

メリット

デメリット

マンモグラフィ

▼乳癌死減少効果が証明されている

(世界的にも乳がん検診の基本の検査として認められている)

▼特に石灰化病変による乳癌の検出力は非常に高い

▼精度管理基準も明確

▼X線を使用するので被曝がある

(適正な撮影が行われている場合は被曝による不利益は問題とならない)

▼検査時に乳房を圧迫するため痛みを伴うことがある

▼高濃度乳房では腫瘤に対する検出力が低い

超音波検査

▼検査に伴う痛みがない

▼検査施行による被曝はない

▼侵襲性が少なく、繰り返し検査を行うことが可能

▼見つかった病変は超音波検査ガイド下生検で比較的容易に組織を採取することが可能

 

▼客観性に乏しく検査者の技量にその結果が依存する

(精度管理をすることが非常に難しい)

▼超音波検査による要精査が多く偽陽性も多い

(乳がん検診の不利益が増加する)

先ほどお話したように、マンモグラフィに超音波検査を追加して受診する場合はそれぞれの検査方法のメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。

超音波検査で正しい結果を得るためには、熟練した検査技術が求められることもあり、検査者の技量に結果が依存します。そうしたことからも超音波検査では要精査・偽陽性が多く、乳がん検診の不利益が増加する可能性も考えられます。しかし超音波検査にはマンモグラフィにはないメリットが存在しますので、それぞれの検査の利益・不利益を踏まえたうえで、追加検査を検討することが望ましいでしょう。

高濃度乳房であるからといって、頻回に検査を受ける必要はない

高濃度乳房は病気でありませんし、高濃度乳房は珍しい所見でもありませんので、基本的には乳がん発症のリスク要因(例えば乳がんの家族歴)がなければ大きな問題はなく、頻回に検査を受ける必要もありません。ただし、高濃度乳房は腫瘤に対するマンモグラフィの検出力を低下させますので、マンモグラフィで異常なしの判定でも“しこり”などの自覚症状があれば放置せずに必ず早急に病院を受診してください。

世界では高濃度乳房にどう対応しているか

高濃度乳房通知を施行しているアメリカの27州でも、その追加検査として超音波検査の使用を保険で賄うように州法で規定している州はまだ5つ(18.5%: 5/27州)しかありません。 高濃度乳房の有無をマンモグラフィ検診受診者に通知義務化(法律化)している米国ミシガン州では、告知をされた方の家族歴、乳がん遺伝子検査結果、 生涯リスク評価などに応じてリスク別に対応を選別しています。つまり、高濃度乳房通知を施行しているアメリカにおいても追加検査は高濃度乳房の方全員に勧めるわけではなく、それぞれの方の乳がんリスクに応じて対応しています。こうしたアメリカの実情も参考にしつつ、日本における高濃度乳房への対応体制が整えられていくことが望まれます。

新しい検査機器で高濃度乳房の「乳がん発見率」は向上する?

近年では、乳がんをさらに精密に検査できる医療機器が登場しています。

高濃度乳房の「乳がん発見率」を向上させる検査としては、超音波検査と乳房トモシンセシスと乳房MRIが現実的で有力な候補です。これらのいずれの検査も高濃度乳房に追加すると乳がんの発見率は 向上すると考えられています。しかし、同時に偽陽性や過剰診断といった不利益も増加します。 さらにこれらの検査を追加しても必ずマンモグラフィで発見できなかった乳がんが見つかる保証はありません。そして、これらの検査を追加することにより、乳がん検診の利益である乳がんの死亡率を低下させる効果は証明されていません。よって、科学的に有効性が確立した乳がん検診として超音波検査、乳房トモシンセシス、乳房MRIを使用することはできません。したがって、対策型乳がん検診として超音波検査、乳房トモシンセシス、乳房MRIを使用することは現時点では不適切です。しかし、個人の自己責任のもとで受診する任意型乳がん検診では適切な説明を受け、個人の価値観に基づいて利益と不利益のバランスを判断することにより、超音波検査、乳房トモシンセシス、乳房MRIを追加検査として受けることは可能です。

こうした医療機器の研究によって、さらに正確な乳がん検診と乳がん診断が実現することが期待されています。

 

治療ガイドラインは日本乳癌学会HPで

乳癌学会

 

乳がん検査(植松 孝悦先生)の連載記事

1992年、新潟大学医学部卒業。2001年まで同大附属病院、新潟県立がんセンター新潟病院などで勤務する。2002年から静岡がんセンターに勤務し、現在は生理検査科・乳腺画像診断科の部長を務める。乳腺画像診断科では、当院乳腺外来の1つを担当して乳房画像診断および乳房のインターベンション(画像誘導下針生検など)を施行するとともに乳腺外来の新患も担当している。早期かつ正確に乳がんの診断し、速やかな乳がんの治療に導くことが科の基本方針である。当科では年間600件数超の乳房針生検、吸引式乳房組織生検などの乳房画像誘導下生検は乳房画像診断を専門とする日本放射線学会放射線診断専門医および日本乳癌学会専門医の資格を有する乳房放射線診断医が責任をもって全て担当して施行している。このような乳腺診療方式は乳がん診療の最先端であるアメリカと同様であり、わが国では当院だけの取り組みである。このように画像専門の放射線診断専門医師が乳房のインターベンションを施行するで迅速かつ正確な診断を患者さんに提供することが可能となることからこうした取り組みを行い、よりよい診療体制づくりに努めている。

「乳がん」についての相談が12件あります

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