インタビュー

自家組織による乳房再建

自家組織による乳房再建
佐武 利彦 先生

公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科 部長 准教授

佐武 利彦 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター形成外科部長の佐武利彦准教授は「穿通枝皮弁(せんつうしひべん)」による乳房再建術において、日本でトップクラスの技術と実績を持つパイオニアです。今回は人工物(インプラント)ではなく、患者さん自身の組織を使った自家組織による乳房再建についてお話を伺いました。

自家組織による乳房再建の特徴

主に筋皮弁法、穿通枝皮弁法、脂肪注入法がある

患者さん自身の体の組織(自家組織)の一部を使って行う乳房再建には、いくつかの種類があります。主な方法は次の3つです。

「筋皮弁」法

背中やお腹から組織を移植します。皮膚・脂肪組織・筋肉の一部を使います。

「穿通枝皮弁」法

筋肉を使わず、お腹やお尻、太ももなどから皮膚と脂肪組織を移植します。(関連記事「穿通枝皮弁による乳房再建の特徴」参照)

「脂肪注入」法

お腹や太ももから脂肪を吸引して、そこから不純物を除去して濃縮した脂肪を注入します。(関連記事「脂肪注入による乳房再建」参照)

脂肪幹細胞を付加して移植することもあります。

自家組織による乳房再建のメリット・デメリット

メリット

人工物(インプラント)ではなく、患者さん自身の組織の一部を使いますので、血が通った自然な感触で、温かい乳房を再建することができます。これは最大のメリットであると考えます。

デメリット

しかし、従来から主流であった筋皮弁法は、移植した組織を生きたまま定着させるために筋肉の一部をとってしまうことが問題を引き起こします。たとえば、お腹の筋肉をとった場合では、背筋と腹筋のバランスが悪くなって腰痛を起こしたり、内臓が収まっている腹腔内の圧力に耐え切れず、お腹が膨らんでしまったりすることがあります。

有茎腹直筋皮弁による乳房再建後の腹壁瘢痕ヘルニア

一方、穿通枝皮弁法では筋肉をとることはないですし、ドナー部位もある程度患者さんの希望に合わせてとることができます。しかしそれでも、組織をとるために患者さんに新たな傷を作ってしまうというデメリットはあります。

穿通枝皮弁と筋皮弁について

穿通枝皮弁

穿通枝は筋肉の中、あるいはその下を通る太い血管から枝分かれして、脂肪層や皮膚に向かって走っている細い血管です。この穿通枝と、穿通枝の血液の流れの先にある脂肪層と皮膚が移植されます。筋肉はとらず、筋肉の中を通っている穿通枝だけを取り出します。

穿通枝皮弁

筋皮弁

お腹の筋肉を使う場合を「腹直筋皮弁」といい、背中の筋肉を使う場合を「広背筋皮弁」といいます。「有茎腹直筋皮弁」では、一般に腹筋と呼ばれる腹直筋の左右どちらかを使い、腹直筋を体につなげたまま胸まで持っていき、脂肪や皮膚も一緒に移植します。腹直筋の中や裏側の大小の血管もそのままにして、皮膚の下をくぐらせるようにして移植するため血流も保たれます。

「遊離腹直筋皮弁」は改良型で、血管をいったん切り離してつなぎ合わせます。

筋皮弁

退院後のケア

再建乳房の皮膚は6か月ごろまで感覚がない

皮弁によって再建された乳房の皮膚は、最初のうちはまったく感覚がありません。通常は術後6か月を過ぎた頃から、徐々に回復します。感覚が回復するまでは、やけどや切り傷に注意してください。

再建した側の腕は、術後10日目くらいからゆっくりと動かす

再建した側の腕は、手術直後には動かしにくいことがあります。術後10日目ぐらいからゆっくりと肩関節を動かすようにしましょう。寝るときの姿勢は仰向けにし、横向きやうつぶせ寝は避けます。しかしこれもおよそ1週間を過ぎれば気にしなくて構いません。

再建乳房に起こる皮膚トラブル

抜糸後の傷あとは通常、細くて目立たないものですが、体質など場合によっては赤く盛り上がってくることがあります。これを肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)といいます。

肥厚性瘢痕を予防するために、術後約3か月間は低刺激性のテープを貼ることをおすすめしています。

再建した部分の皮膚は汗や皮脂を出す機能も十分ではありませんので、皮膚が乾燥している場合には保湿を十分に行ってください。