ひこうせいはんこん

肥厚性瘢痕

皮膚

目次

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概要

肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)とは、皮膚の傷が治る過程で障害を受けた場合に生じる傷跡のひとつです。経過と共に傷跡の見た目は変化し、赤く盛り上がった状態から、赤みが消失して平坦化するものまでさまざまです。肥厚性瘢痕が顔面や関節などに形成されると、見た目の変化や傷に伴うひきつれなどから美容面への影響や機能障害を生じることもあります。

肥厚性瘢痕では、注意深く皮膚症状の変化を観察することが重要です。可能な限り皮膚病変を消退させるために局所の安静を保つことが重要であり、経過に応じて保存療法(ステロイドやレーザーによる治療、メイクアップなど)や手術療法が検討されます。

なお似たような皮膚病変を呈するものとしてケロイドがありますが、両者は異なるものと考えられています。

原因

皮膚に傷が生じてから治癒するまでの過程を「創傷治癒」と呼びます。皮膚に傷ができると、時間経過と共に強度に傷がくっつくようになります。初期の段階ではくっつきが弱いため、少し力を加えるだけで傷は離れてしまいます。しかし、1週間ほど経過すると傷のくっつきが強くなるため、ある程度の衝撃にも耐えることができるようになります。このように強度を得る過程において傷口では炎症反応が生じており、一時的に皮膚の色調が赤くなります。しかし、通常は徐々に赤みが引き、一過性の色素沈着を経て最終的には周囲の皮膚から目立たない傷となります。

しかし、こうした正常な治癒過程を取らず、傷口の赤みが強く残存して盛り上がることがあり、肥厚性瘢痕と呼ばれます。肥厚性瘢痕では、皮膚の表面(表皮)だけでなく、その下の真皮まで炎症が起きています。

肥厚性瘢痕は正常な創傷治癒が阻害される状況で発症します。怪我が生じた後に細菌感染を合併することで生じることもありますし、やけどや怪我で皮膚の奥深くまで傷が入った状態でも生じえます。同じ意味では帝王切開等の手術痕でも肥厚性瘢痕は生じます。また、ニキビ、ピアスなどをきっかとして肥厚性瘢痕が誘発されることもあります。

症状

肥厚性瘢痕で生じる皮膚病変は時間経過と共に変化します。傷が生じて初期の段階では、傷口は赤く徐々に周囲の皮膚から盛り上がってきます。盛り上がりや炎症反応を反映して、痛みや皮膚がひきつれた感じ、かゆみを自覚することもあります。

色は徐々に赤みが薄くなり、盛り上がりの程度もおさまってきます。最終的にどの程度まで赤みが薄くなるか、盛り上がりが目立たなくなるかは、傷の程度や個人により差があります。

肥厚性瘢痕では生じた部位によっては、機能障害や美容的な問題を来すことがあります。関節に生じた場合には、肥厚性瘢痕によるひきつれが抵抗となり、スムーズな関節運動が障害されます。美容的な問題により心理的なストレスを抱えることもあります。

検査・診断

肥厚性瘢痕は基本的には見た目の状況から診断をすることになります。同じように皮膚症状を呈する疾患としてケロイドがありますが、治療経過を予測するためにも両者を区別することは有用です。しかし、組織学的には判断がつきにくく、ケロイド体質があるかどうか、皮膚病変が周囲へ広がっているのかどうか、等を参考にします。

治療

肥厚性瘢痕の治療方針として、保存療法と手術療法の2つに大きく分類することができます。

保存療法

保存療法とは、外科的治療(手術)を行わない治療方法であり、主に以下のようなものがあります。

  • 外用療法:ステロイド剤テープ、ステロイド剤軟膏、保湿剤
  • 局所注射療法:ステロイド剤注射
  • 内服療法:抗アレルギー剤(かゆみなどの抑制)
  • 圧迫療法:テープ固定やシリコーンシート
  • レーザー治療(血管の数を減らす)
  • 放射線療法:放射線の照射
  • メイクアップ治療(いつでも傷あとを隠せるという自信が持てる)
  • 心のカウンセリング(傷あとによる心の問題を解決する)

これらは多くの患者さんで行われており、肥厚性瘢痕の治療における根幹的な方針ともいえます。

手術療法

肥厚性瘢痕では、皮膚症状の広がりや目立ち具合などを総合的に判断し、手術の必要性を判断します。肥厚性瘢痕は傷口が引っ張られることを原因として生じるため、これをいかに軽減するかという点に主眼を置き、手術が行われることになります。実際の手術に際しては、ひっぱりのかかる方向を事前にシュミレーションすることで方針を決定します。

肥厚性瘢痕で取られることのある手術方法としては、大きく二つあります。一つ目は盛り上がった部分を切除し傷を縫い縮める方法で、もうひとつは植皮術です。術後再発防止のため、放射線療法が加えられます。

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