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インタビュー

瘢痕とは?ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法と手術費用について

瘢痕とは?ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法と手術費用について
小川 令 先生

日本医科大学 形成外科学教室 主任教授、日本医科大学大学院 医学研究科 形成再建再生医学分野 ...

小川 令 先生

ケロイド」「肥厚性瘢痕」とは皮膚にできた傷跡で、様々な要因で炎症が起こり続けることで、皮膚が盛り上がったり、炎症が広がってしまう病態です。これらはかゆみや痛みを伴うだけでなく、見た目にも大きな影響をもたらすことから、より早期に綺麗に治癒させることが望まれます。ケロイドや肥厚性瘢痕はどのような治療選択肢があるのでしょうか。また重症例にはどのような手術が行われるのでしょうか。記事1に引き続き、日本医科大学形成外科主任教授の小川令先生に解説いただきました。

ケロイド・肥厚性瘢痕の疾患解説や症状については記事1『ケロイド・肥厚性瘢痕を【画像】でみる 傷跡に起こり続ける皮膚の炎症とは?』をご覧ください

患者さんがケロイドを辛そうに隠す

炎症の強いケロイドと、やや弱い肥厚性瘢痕、どちらも基本的な治療方針は同様です。治療には塗り薬、張り薬、飲み薬、手術…などいくつかの方法があります。これらは「保存療法」「手術療法」の大きく二つに分けられます。

保存療法とは、外科的治療(手術)を行わない治療方法を指します。

  • 外用療法 ステロイド剤テープ、ステロイド剤軟膏、保湿剤
  • 局所注射療法 ステロイド剤注射
  • 内服療法 抗アレルギー剤(かゆみなどの抑制)
  • 圧迫療法 テープ固定やシリコーンシート
  • レーザー治療(血管の数を減らす)
  • 放射線療法 放射線の照射
  • メイクアップ治療(いつでも傷あとを隠せるという自信が持てる)
  • 心のカウンセリング(傷あとの裏にある心の問題を解決する)

当院では年間2,000人の新規のケロイド・肥厚性瘢痕患者さんを診察しますが、そのうち9割の方にはこの保存療法を行っています。保存療法の主体となるのはステロイド剤のテープや注射です。

手術療法は、主に保存治療では治癒が難しい症例や、手術を行ったほうが早く治癒できる症例に行われます。症状の強いケロイドの手術後には、手術後の傷からケロイドが再発しないよう、必ず放射線治療を行っていきます。

手術

ケロイド肥厚性瘢痕は「皮膚が引っ張られる方向に炎症が広がっていく」性質があります。そのため手術によって治療を行う際には、皮膚の張力(引っ張られる力)をどう解除させていくかを検討し、手術方法を考える必要があります。

当院では、患者さんの傷跡を見て、皮膚の引っ張られ方をシミュレーションし、手術前に確認しています。皮膚が引っ張られている部分は、張力が高くなっている部分として画像でも確認できます。このように皮膚が引っ張られている方向を認識し、その方向に力がかからないように皮膚を切開して縫合する方法を考えることができます。

シュミュレーションシステムで構築された皮膚構造

 

ケロイド・肥厚性瘢痕の手術方法には、大きく分けて2種類あります。

1.縫い縮める方法(縫縮)

一つ目は、盛り上がった部分を切除し、傷を縫い縮める方法です。

この際、皮膚の張力を解除する目的で「Z形成術」を行います。この方法は傷を直線に縫うのではなく、ジグザグした形に縫っていく方法です。この手法により、皮膚の張力を分散させることができます。

Z形成術を行った術後の症例写真

2.皮膚を移植する方法(植皮・皮弁)

病変の形や、大きさ、皮膚の張力の問題から、縫い縮めることが難しい症例では、他の部分から皮膚をもってきて移植する方法を選択します。

当院では「局所皮弁」という手技を採用しています。皮弁とは、血流のある皮膚のことです。移植後、血流をどの組織から受け取るかで、皮弁術の名称が異なります。「局所皮弁」とは血流源を周囲の皮膚や皮下組織からもらうものを指します。

この手術は広範囲に症状が現れている場合に行われることが多く、広い範囲に火傷を負った後などの患者さんに適応されることがあります。

 

病変が小さい範囲であれば、局所麻酔で済みますので、日帰り手術が可能です。手術後2~3日間は通院いただき、放射線治療を行います。その後、抜糸をして完了です。

病変が広範囲の場合には、全身麻酔を行います。そのため前日からの入院が必要です。手術後は局所麻酔の場合と同様に、翌日から放射線治療をし、抜糸して完了です。

治療後、基本的には傷跡を引っ張られないように注意することが重要です。必要に応じてテープなどで固定することがあります。

手術療法のメリットは、大きな病変を治療することができることと、比較的短期間で治療を完結できる点だと思います。保存療法は炎症を抑えられるまで、テープや注射などを使って治療を行い続けるため、比較的長い通院時間が必要になります。

一方、手術療法のデメリットには「放射線治療が必要になる」点が挙げられます。放射線を当てることによって少なからず皮膚がん発生のリスクが上がりますので、この点はデメリットとなるかもしれません。そのため、私たちは放射線量を最小限にとどめつつ、効果を最大に得られるための治療手法を研究してきました。理論上、がんの発症がゼロとは言えませんが、患者さんの負担をより軽減した治療になるよう取り組んでいます。

ケロイド肥厚性瘢痕の保存的療法の大部分と手術療法は、健康保険の適用が可能であり、さらに高額療養費制度の適用もあります。手術費は、治療の内容によるので一概には言えませんが、患者さんの負担は少ないといえるでしょう。

 

 

再発を気にする患者さん

 

ケロイド肥厚性瘢痕の患者さんが最も気にする点は「再発のリスク」です。ケロイドや肥厚性瘢痕は、手術をした後に再発するケースもみられます。そのため「治療しても再発してしまうだろう」と考える患者さんや医療従事者もいます。

しかし、症状を見極め、適切な治療方法・手術手技を選択することができればケロイド・肥厚性瘢痕は必ず治癒できます。再発は、炎症をしっかり抑えきれていない場合、また皮膚の張力をうまく解除していない場合などが原因になります。炎症が強くおこり、再発しやすい全身状態であることもあります。特に女性の場合、妊娠でケロイドは悪化しますし、また日々運動している人は、皮膚に張力がかかりますから、たとえ手術してもこれらの生活習慣を改善しなければ治りません。これらのことを考慮し、それぞれの傷跡に適している治療を行うことがとても大切です。

手術後、患者さん自身が再発を防ぐためにできることは2つあります。一つは炎症がおさまるよう放射線治療をしっかり行うこと、もう一つは手術後の傷跡をなるべく動かさず、引っ張らないように固定することです。手術後はこれらのことに気を付けることが大切です。

手術だけで治療できる、炎症の弱い症状(いわゆる肥厚性瘢痕)は形成外科のみで治療を終えることができますが、一般的にケロイドの治療は、放射線科を有している大病院で行われることが多いです。

ケロイド・肥厚性瘢痕の治療は形成外科や皮膚科で行われますが、受診する際にはケロイド・肥厚性瘢痕の治療を専門に行う医療機関を選択することがよいでしょう。一部では「これ以上治療はできない」「ここではケロイドや肥厚性瘢痕を診療していない」と回答されてしまうこともあります。ケロイドはそのまま放置してしまうと、さらに悪化してしまうケースもありますので、適切な医療機関を受診し、早期に治療方針を組み立てることが望まれます。

医師と相談する患者

手術療法を選択するかどうかは、症状と患者さんの希望で決めていきます。例えば毎日傷跡周辺を動かさなくてはいけない職業(大工やスポーツインストラクターなど)は、手術後、放射線治療を行っていても再発する可能性が高まります。そのような方には、保存治療を提案することがあります。

症状の重症度やライフスタイルなども考慮しながら、専門の医師と最適の治療方法を決定していきましょう。

 

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