概要
皮膚がんとは、皮膚に発生するがんの総称であり、基底細胞がん、有棘細胞がん、悪性黒色腫、乳房外パジェット病などさまざまなタイプのものがあります。
症状や進行の速さなどは発生したがんのタイプによって異なり、一般的に皮膚にまだらなしみのような色調が広がり、進行するにしたがってしこりを形成するようになります。基本的に進行は緩やかですが、悪性黒色腫は急激に進行して脳や肝臓などに転移を生じやすいのが特徴です。
また、原因もがんのタイプによってさまざまですが、多くは紫外線の刺激が関与しているとされるケースが多く、そのほかやけど、けが、遺伝などの関与も指摘されています。
いずれの皮膚がんも根本的な治療は手術ですが、抗がん剤などを用いた薬物療法や放射線治療が行われることもあり、早い段階で発見して治療を開始するほど治る見込みは高くなります。
原因
皮膚がんの原因は、がんのタイプによって異なります。また、明確な発症メカニズムは解明されていないのが現状です。
ですが、多くの皮膚がんは紫外線によるダメージが発症に関与しているとされるケースが多数あり、紫外線を浴びやすい顔や首などにできやすい傾向にあります。そのほか、やけどやけがなどによる皮膚のダメージ、ヒトパピローマウイルス感染、遺伝などが関与しているとの指摘もあり、悪性黒色腫などは黒人よりも白人のほうが発症率が高いといった人種差があると考えられるものもあります。
症状
皮膚がんの多くは、表皮を構成する4つの層のうち、もっとも深層にある基底層やその上層にある有棘層の細胞から発生すると考えられています。
がんのタイプにもよりますが、多くは黒~褐色のまだらなしみのような病変が現れます。そして進行するにしたがって病変が広がり、表面が凹凸状に盛り上がってしこりを形成するようになります。そのため、早期段階では“ほくろ”と見なされるケースも少なくありません。
また、しみやしこりのような病変は通常、痛みやかゆみなどの症状を伴いませんが、進行すると病変部の表面の組織が脆くなり、衣類の摩擦など些細な刺激で出血し、痛みを引き起こすことがあります。また、病変部分は皮膚のバリア機能が低下しているため細菌感染を起こしやすく、膿が生じるなどで悪臭を放つようになることもあります。
一方で、基底細胞がんや有棘細胞がんなど多くの皮膚がんは緩やかに進行するため、早い段階で治療をすれば治る見込みは高いとされています。しかし、皮膚がんの中でも悪性黒色腫は、周辺のリンパ節や脳・肝臓など離れた部位の臓器に転移を起こしやすいことも知られており、発症すると助かる見込みの低いがんの1つとされています。
検査・診断
症状などから皮膚がんが疑われるときは次のような検査が行われます。
ダーモスコピー検査
特殊な拡大鏡である“ダーモスコピー”を用いて病変部の色調などを観察する検査です。非常に簡便で痛みもなく検査をすることができるため、初診時などに行われる検査となっています。
病理検査
皮膚がんの確定診断を下すために必要な検査です。病変部の組織の一部を採取し、顕微鏡で観察してがん細胞の有無を調べます。どのようなタイプの皮膚がんか鑑別することもできるため、治療方針を決めるうえでも役立つ検査です。
画像検査
悪性黒色腫をはじめ、進行した皮膚がんはリンパ節やほかの臓器に転移を起こすことがあるため、CTやMRIなどの画像検査で全身の状態を調べることがあります。
また、がんの広がりや深さを調べるため、病変部に対して超音波検査を行うこともあります。
治療
皮膚がんの根本的な治療は、病変部とその周囲の組織を手術で切除することです。また、再発を防ぐために手術後には放射線治療や抗がん剤などを用いた薬物療法が行われることも少なくありません。
そのほか、日光角化症などのがん細胞が表皮内にとどまっている一部の場合では液体窒素で凍らせてがん細胞を壊死させる“凍結療法”や、レーザーを照射してがんを縮小させる“光線力学的療法”が行われるケースもあります。
一方、悪性黒色腫などで転移が生じているようなケースでは放射線治療や薬物療法などそれぞれの状態に合わせた治療が行われます。
予防
皮膚がんにはさまざまなタイプがあり、原因は多岐にわたります。しかし、いずれのタイプの皮膚がんも紫外線による長期的なダメージが発症に大きく関わることが指摘されています。
そのため、皮膚がんを予防するには日焼け止めや帽子・ラッシュガードなどの衣類を用いた紫外線対策をすることが大切であると考えられています。また、日差しの強い日は長時間の外出を避けるようにしましょう。
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